ヨスガノソラ 第5話 「ヤミアキラカニ」


4話で見せた、ゾッとするような瑛の「能面」、その内側に迫っていく回だったと言える。瑛の「笑顔の仮面」が崩れる箇所が大きく4つあって、教室で「昔のことを思い出した」と告げた悠に対して頬を染める表情、二人でペンダントを探しに行った先で「だいすき」という言葉とともに涙、一葉の母親を前にした時の脅え、そして神楽を舞う最中に見せる涙、の4つ。他にも、瑛が一人の時にみせる淋しげな表情というのがしばしば挿入される。


「分岐」方式という構成を採るからには、当然のことながら、瑛のエピソードは一葉編との対比で以て語られることになる。とりわけ、悠の立ち位置が大きく異なっているのが面白い。一葉編では「手を引いていってくれる人」だった悠は、瑛編では瑛のためにとやることなすことが空回りする。瑛と遊んだ森も土砂崩れで地形が変わってペンダントの探しようもないし、「母親を探そうよ」と言い出しても、瑛が既に自分の出生記録を隠し持っていることを悠は知らない。そもそも、Aパート、二人で下校するシーケンスの「天女目はいいよなぁ、自由で」という言葉も、瑛のことを何も知らないからこそ言えるセリフ。瑛は悠にわざわざ言われなくても、ある程度自分から行動を起こしている。悠が瑛の手を引いていこうとしても、瑛は既にその先にいる。

「ぼくは天女目を、ずっと笑顔でいさせてあげたいんだ。だから、諦めないよ」

このセリフの時の悠の表情が、「キメ顔のつもりだけど微妙にキマっていない」感じで、非常に印象的。
一葉編に比べると、まだまだ悠と瑛の距離は果てしなく遠い、という感じで、瑛の淋しげな表情がどのように決着するのかが楽しみなところ。


3話との対比で言うと面白かったのが「切り返し」の使われ方。一葉編だとあの海辺のシーケンスに見られるように、二人の雰囲気を強調する目的でのイマジナリーライン越えだったが、教室のシーケンス、いい感じに盛り上がっていた二人は、カメラが反対側に行った後、一気に冷めてしまう。冒頭の音楽室のシーケンスもそんな感じで、アップで繋いでいたところから、ミディアムロングに切り替わり、

瑛「でも…」
悠「トイレ?」
瑛「違うよ!」

といきなりムードが壊れる(ここちょっと面白かった)。一葉編が情熱的だったのに比べると、瑛と悠を「いい雰囲気にし過ぎない」というディレクションで、5話は構成されているように思える。
そんな訳でなかなかいい雰囲気にならないのでお風呂のシーンはかなり面食らったけど、瑛は悠の先を行っているから、瑛が強引に出るシーンが欲しかったのか。しかし穹に嘘をついてデートに行った挙句瑛の押しに流されてヤッてしまう悠って…って思ってしまう。あの視線とため息を見ちゃうとね。


あと、Aパート最初の方の、一葉が一人で帰っている画というのはかなり強烈。ラストで瑛の机の上にぬいぐるみが置いてあると、ああ誕生会はやったんだな、って分かったり。十字架は悠が穹にプレゼントしたものだとして、じゃああのオルゴールって一体…とか、色々と見どころはありました。


第5話も非常に面白い。とはいえ、瑛と一葉の関係、というか瑛は一葉のこともしかして好きなんじゃねぇの?というのもまた第4話のひとつの側面だったはずですが、5話では一葉が全然出てこなくて二人の関係を匂わせもしなかったのがちょっと辛いところ。瑛が一葉を好きでなかったとしても、一葉編で描かれたのはあくまで一葉の視点からの「姉妹」なので、瑛が一葉をどう思っているか、というのが少しは描かれないと、二人の関係はあくまで相補的であってほしいという私の願望が壊れる。4話の「能面」も一葉に向けてのものだった訳だし。その辺りも含めて次週に期待ですね。