宇宙をかける少女 第23話 「秘剣、輝く」


今回は7話、12話に匹敵する出来だったと思います。やっぱりそらかけの脚本は樋口先生が一番いい。


つつじさんの持ち帰ったプロキシマの冠が、レオパルドの頭部に接続され、つつじさんが風音さんから成功報酬を受け取り、「レオパルドとの因縁はこれで終わりにしなさい、ベンケイ」と振り向いた後に、ベンケイを遠目に見るレオパルドの視点に変わって、レオパルドの高笑いへと流れるように画面がつながっていきます。レオパルドは今回いつになく柔らかいな。いつもは高笑いする時も口(?)を上下にパタパタと動かすだけだったのに、今回は顔を丸めていますね。ベンケイはまたどこかへとジャンプアウトしていき、直後に風音さんの「とりあえず今は離れていてちょうだい」というセリフが入ります。直前につつじさんと通信をしていたことを考えれば、これはつつじさんとの会話の続きで、時系列を前後させて前のカットの説明を直後のカットで行う、という手法が採られていますね。この「事後説明」の手法は今まではほとんど使われていなかったものですが、今回の挿話では幾度か使われて独特のテンポを生んでいます。次のカットでは、再会を喜んでいるエルさん・フリオさん・ネネコさんたちのところに、風音さんは車から降りて現れ、レオパルド役場から砂漠へと車で向かったんだな、と分かりますね。ここもまあ、画面のつながりを説明するという意味でなら、広い意味で「事後説明」と言えなくもない。これくらいなら今まででも使われていたかもしれません。風音さんは早速時雨さんたちにカークウッドにまだ残っている生徒を助け出したいと言われますが、ベンケイのハイパージャンプのせいでレオパルドのいる座標が割れてしまったから無理だと告げます。レオパルドがハイパージャンプを使わずにステルスで重行したのも、ネルヴァルに行動を感知されないためでした。風音さんはネルヴァルへの迎撃態勢についてエミリオさんに指示を出した後、剣をどうするかという議題になり、すかさず元老院の3人が「あれを探すは我らが役目」と口をはさんで、「フォンが隠した剣は封摩にしか見つけられない」と補足をします。エミリオさんが「それにしても良くご無事で」と無事を喜ぶ言葉を口にすると、「わしらが戻ってこれたのはそこの若者たちと、(顔を伏せて)イモ子のおかげじゃ」と、イモちゃんを追悼する空気へと変わります。最後に貨物船から、秋葉さんといつきさん、そして高嶺さんが下りてきて、風音さんは妹の無事を喜ぶ笑顔に変わります。アバンの後半は風音さんを中心としたセリフのつながりでテンポを形成していました。アバンだけでこんなに書いたのは久しぶりです。それだけ内容の濃いアバンだった。


Aパートはネルヴァルのいる首相官邸から始まります。クサンティッペがベンケイの寝返りを指摘して、ネルヴァルもベンケイを問いただす必要がありそうだと応え、「だが、今の問題はレオパルドだ」と、プロキシマの冠を回収し50年前の力を取り戻しつつあるレオパルドの危険性を指摘します。続いてアレイダが部屋に入ってきて、ナミさんの容体について、意識は戻らないものの命に別状はないと報告し、「エニグマで『あの子』の隣に寝かせています」と言います。「あの子」というのは今回の挿話を最後まで見れば、イモちゃんのことだと分かりますね。アレイダはボロボロになったナミさんのプリマ・ヴェーラをネルヴァルに見せ、ネルヴァルはそれで高嶺さんが自分たちのもとに戻ってこない理由を悟ります。それはつまり、ナミさんにアンチQTの能力が発現したということ。ネルヴァルの口から直接それは告げられずに、場面の変わった直後の高嶺さんの「アンチQT!?」というセリフが代わって説明をしています。これはまあ広く一般に使われている手法ですね。アンチQTは、QTを反転させる力、と説明になっているのかいないのか微妙なセリフを風音さんが続けます。「でも、これではっきりしたわ。私たちが神楽様から受け継いだものが」と言って、自分を指して「すべてを見通す目…」とかから続けてるけど、これはさすがにおかしなセリフですよね(笑)。続くセリフもあんまり中身のあることを言っていないので、削っても良い場所だったんではないかと思います。風音さんはニーナのほうを向いて喋っていて、それをニーナの背中越しに捉えたカットから繋がるので、続くネルヴァルのカットはニーナがネルヴァルに置き換わったかのような印象を持たせる。ネルヴァルは秋葉さんの確保と、レオパルドの破壊のためにクサンティッペと、アレイダとイグジステンズを差し向けます。そして風音さんの顔のアップにカメラが移って、「ネルヴァルは必ず秋葉を狙ってくる」と予言します。もちろんこの予言は的中していて、さっきの「すべてを見通す目」っていうナルシーなセリフを裏付けるとともに、そのセリフを受けて風音さんの目をアップで映しているということですね。高嶺さんは一時的にネルヴァルに加担していたことに責任を感じていますが、「悪いことばかりじゃないわ。おかげで敵の内情も詳しく分かった。後悔はその剣で払拭しなさい」と激励します。秋葉さんの護衛は高嶺さんに任され、これで秋葉さんが窮地に陥った時に高嶺さんがかっこよく登場してくれるであろうと期待を持てますね。「レオパルドの改修が終わったら攻勢に出る。ナミを奪還するためにもね」というセリフを受けて、ブーミンと元老院の3人などが担当している「剣の回収」へと場面が変わります。
ボアシップに載っている元老院3人と桜さんは、後の説明にあるとおり、封摩のダウジングで剣の在り処を探していたわけですね。桜さんはクロオビに指示して、封摩のペンダントが指し示す方角にボアシップを向けさせ、剣が眠っていると思しき小惑星を見つけ、剣を起動します。表面を爆発させたり、ブースターに点火したりしたのはブーミンがやったんでしょうかね。3つの「剣」と5つの光(ブーミン・エリカ・リリー・ボアシップ)を横から映すカットから、再び風音さんたちの会議に画面が戻ります。ダウジングでしか見つけられないという「剣」にニーナが呆れ、機械であるネルヴァルに見つけられない巧妙な隠し方にエミリオさんが感心します。ネルヴァルの襲来を間近に控え、「剣」は付け焼刃でレオパルドに実装されます。敵が来るまでに実装が終わるか心配が残るものの、それより心配なのは…という風音さんの憂鬱な表情から、秋葉さんへと場面が変わります。画面としては繋がっているものの、全体としてみるとここで大きな切れ目がありますね。アバンからここまでを通して、ずっと風音さんを中心に画面がつながっていましたが、ここから主役が秋葉さんへと切り替わります。


秋葉さんはイモちゃんが遠くに飛んでいく夢を見て、夢の中のイモちゃんに向けて伸ばした手をいつきさんに握られます。上から秋葉さんを覗き込むいつきさんと、汗をびっしょりかいている秋葉さん。その夢を夢だと思いこもうとする秋葉さんに対し、いつきさんは厳しく「夢ではありません」と諭します。しかし秋葉さんは未だイモちゃんの死が受け入れられず、「やっぱり信じられないよ、そんなこと!」と叫んで部屋を飛び出していきます。走っている秋葉さんの手の振り方が可愛いな。これは第10話でハコちゃんを探して学園中を走り回った時と同じ走り方だけど、コンテの須永さんの仕事なんでしょうか。秋葉さんはずっと下を向いて走っていましたが、横にレオパルド列車が停まって、秋葉さんはそれに乗ります。秋葉さんを追って走ってきたいつきさんは、秋葉さんが電車に乗ったのを見てどうしようもなくなってしまった。電車に乗った秋葉さんが思い出すのは、いつの日にか嬉しそうに車掌ごっこをしていたイモちゃん。秋葉さんはイモちゃんのまねをしてマイクを握ってみるけれど、イモちゃんへの思いがあふれてきて何もしゃべることができません。そんな状態の秋葉さんを電車は「レオパルド前」へと淡々と運んでゆきます。
秋葉さんはうつむきながらレオパルドの玉座に入っていきます。レオパルドは秋葉さんが入ってくるとそわそわしだして、本を逆さまに抱えてわざとらしく独り言を言います。「相変わらずバカなことやってるのね」と秋葉さんが反応してくれると、レオパルドはたった今気づいたかのように「お、おお、帰ってきたのか」と秋葉さんに言います。秋葉さんはレオパルドのわざとらしい態度に気付いて、「路面電車、あんたの仕業でしょ」とレオパルドにいいますが、レオパルドはしらを切り続けて、秋葉さんもやる気がなくなってしまい大きくため息をつきます。レオパルドはイモちゃんがいないことに気づいて、「煮っ転がしはどうした?」と聞き、死んだと聞かされて大きく驚きます。しかしレオパルドは続けて、イモちゃんがいなくなって清々した、と高笑いをするので、秋葉さんは号泣し、本気で怒ってレオパルドをポカポカと殴りつけます。レオパルドは「死んだ奴を死んだといって何が悪い!」とまったく気遣いのない言葉を秋葉さんにぶつけます。まあここから二人の仲が険悪になって…っていう方向に進むのがおよそ推察される展開なのかもしれませんが、今回はここでクサンティッペを登場させて、秋葉さんの怒りの矛先をクサンティッペへと向ける訳ですね。しかし今回のクサンティッペの噛ませ犬っぷりはひどい(笑)。


クサンティッペが攻めてきて、大量のドローンを射出し、それに対抗してレオパルドからもQTアームズが出撃してきて応戦します。「剣」の回収を行っていた桜さんたちは、ブーミンの護衛の下で回収作業を続行。秋葉さんはすべての元凶のクサンティッペを見ると顔を怒りに歪ませて、レオパルドの玉座から飛び出していきます。クサンティッペは自慢の尻尾をレオパルドコロニーに突き刺し、そこからまたドローンをコロニー内部に侵入させます。アレイダが屋根の上から秋葉さんに襲い掛かってくると、フラグを立てていた甲斐があって、高嶺さんが飛び出してきてアレイダと空中で剣を交えます。高嶺さんとアレイダが戦うシーンは、今回の挿話全体で見たら細部かもしれないけど、華のあるシーンなのでもうちょっと作画を頑張ってほしかったなあ。なんというか、高嶺さんの髪が適当に描かれている気がする。BDで修正してくれるならいいんですがあんまり期待できそうにないですね。高嶺さんがアレイダをひきつけている間に、秋葉さんは走って逃げていきます。エミリオさんが秋葉さんの姿を発見して、いつきさんに秋葉さんの保護を任せます。いつきさんたちがQTアームズが置かれている場所まで車で乗り付けると、赤っぽい装飾がされてデザインの変わったQTアームズが置かれていました。
ここで一つ画面の連鎖が切れて、再び高嶺さんとアレイダにカメラが戻ります。このシーンの高嶺さんは良く描かれている。上空に8体のアルヴァクルが現れて、赤い光を発し、カークウッド住民に思考干渉を仕掛けます。「レオパルドにお住まいのみなさ〜ん。獅子堂秋葉ちゃんを捕まえてくれた人には、本物の箱をプレゼントしちゃうわよ〜」とクサンティッペがアナウンスをして、赤い箱(=仮の箱)を被った住民たちが秋葉さんの捕獲へと駆り立てられます。秋葉さんは箱人間たちから必死で逃げますが、赤い箱を被ったフリオさんとネネコさんの声を聞き、戦慄します。秋葉さんは逃げ出そうにも、路地で両側から箱人間の集団に囲まれてしまいます。追い詰められた秋葉さんは病んだ眼をになって、「そうか、そうすればいいんだ…」と呟きます。いつきさんが脇道の路地から出てきて、秋葉さんをつかんで走り出すと、秋葉さんは「あたし箱に入る!」と言って抵抗します。秋葉さんは箱に入って嫌なことを全部忘れたい、と言い、あとはひたすらいつきさんにやつあたりをして、いつきさんに頬をたたかれます。いつきさんが秋葉さんを叩くのに合わせて、上空で派手に火花が散りますね。上空で光っているのは。クサンティッペのドローンと評議会側のQTアームズが交戦している様子でしょうか。秋葉さんを叩いた直後、いつきさんは一瞬気弱な表情で己の手を見つめ、そしてすぐに気を取り直して拳を握り締め、セリフを続けます。「私は、あなたのことが好きなんです。しっかりしてください。秋葉さんとイモ子さんは本当に、本当に優しくし合っていたじゃないですか。そんなあなたが、イモ子さんを忘れてしまったら、そんなひどいことするなんて、私が好きになった秋葉さんじゃありません!」。ジンとくるセリフですね。いつきさんは秋葉さんが無気力状態になってから、ずっと秋葉さんを支え続けていて、どんなにひどいことを言われてもなお秋葉さんを見捨てないいつきさんの気持ちが詰まったセリフです。秋葉さんはその言葉で我に返って、力を失って地面に座り込み、いつきさんに手を貸してもらって立ち上がります。余韻に浸る間もなく、上空にアルヴァクルが飛んできて、秋葉さんたちの位置を知らせるかのようにグルグルと回り、箱人間たちも襲来してきます。
ここでまた一つ大きく画面が変わって、ブーミンとドローンが交戦している様子が映されます。ブーミンは珍しく活躍していて、ドローンが派手に爆発するカットとかはさすが良く描けていますね。ブーミンたちはレオパルドに向かって飛んでいく民間機を発見しあわてて飛んでいきますが、中に乗っていたのはほのかさんとフォンで、「急いでいる。レオパルドまで送って」と要求され、ブーミンの反応は「誰!?」と。ブーミンはほのかさんのことを知らなかったのか。役場にいた風音さんたちは机とかをドアの前に固めてバリケードを作っていましたが、箱人間たちはドアをぶち破って侵入してきます。エルさんはそれを見て「く、苦情が!!」とおののいています。よっぽど苦情に頭を痛めていたんですね(笑)。秋葉さんといつきさんも箱人間たちに追い詰められ、レオパルドもイグジステンズに追い詰められていましたが、フォンが到着したことでQTローズを使うことができ、イグジステンズたちは消え去って箱人間たちも我に返ります。フォンはプロキシマの冠にQTローズを植え付けて、レオパルド全体に効果が及ぶようにしていました。あのわっかはあんな使い方もあるのか。フォンが通信の中で得意そうに笑い、レオパルドに到着したほのかさんも秋葉さんたちに連絡を入れます。「お礼くらいいいなよ!」って声が唐突に入って、これはなんなのか、誰の声なのかと首をかしげたけど、ブーゲンビリアの声ですね。ほのかさんもブーゲンのことなんかガン無視してしまうので、このセリフは削ったほうがよかったと思います。続いて、桜さんたちが持ってきた「剣」がレオパルドへと接続されます。この剣はレオパルドの3枚のミラーに取り付けるもので、賀統たちが指示を出してミラーの上に剣を持ってこさせ、接続の作業を始めています。ほのかさんはレオパルド砂漠の前にある「神楽の墓」の扉をあけると、ほのかさん用のアルヴァクルにも見える機体が砂の中から登場してきます。これはもともと神楽のものだったのか、ほのかさんのものだったのか。「QTローズの有効圏内は、たぶん…」といっていたけど、やはりほのかさんもQTローズの影響を受けるんですね。クサンティッペは再びイグジステンズを秋葉さんに差し向けてきて、先程の機体に乗ったほのかさんがイグジステンズたちを食い止めます。弓のようなものを引いて攻撃するのはウィガールと一緒なんですね。ほかのイグジステンズが追撃してくると、今度はブーミンが空中から突撃して一騎ずつイグジステンズを落とします。そうしている間にレオパルドの「剣」の接続は完了し、風音さんは戦闘部隊などを撤収させて剣による攻撃の準備をします。しかしそれだけでは剣は使えず、秋葉さんが黄金銃を引くことで封印を解く必要がある、とほのかさんが言います。「イモの話は聞いた。私が秋葉を運命に巻き込まなければ、イモは死ななかったかもしれない。私もイモが好きだった。ネルヴァルを倒さない限り、また大切な人が傷ついて死ぬ。ネルヴァルを止めて、秋葉!」と、秋葉さんはほのかさんにも励まされます。「それまで私が秋葉を守る。イモの分まで」と言ってほのかさんはアルヴァクルへと戻っていきます。ここもジンとくるシーンだ。いつきさんとほのかさんの二人から励まされて、初めて秋葉さんは立ち直れるんですね。「イモちゃん、あたし頑張ってみる。みんなと一緒に」と呟いた秋葉さんはレオパルドに向かって引き金を引き、それに応じて剣の封印が外れます。レオパルドは襲い掛かるクサンティッペの尻尾を根元から剣で一刀両断し、続けて剣を振り回してクサンティッペコロニーも破壊します。レオパルドが剣を振り回すところは、さすがに気合の入った画を見せてくれました。一瞬レオパルドの目が青く光ったけど、次回予告にもそんなシーンがあったしこれは何か重要な意味がありそう。クサンティッペのドローンもコントロールを失って次々と墜落して行きます。高嶺さんと戦っていたアレイダも、クサンティッペの敗戦を悟り撤退していきます。
クサンティッペは秋葉さんたちに中に乗りこまれて、「弁護士を呼んで!黙秘権を使うから」とか言っています。いつきさんはイモちゃんの仇とばかりにクサンティッペに銃を突きつけ、ニーナにたしなめられます。秋葉さんは「もういいの。こんなことしても、イモちゃんは戻ってこないもん。イモちゃんは喜ばないもん。だって、イモちゃんは、もう死んじゃったんだもん…」と泣き崩れ、イモちゃんの名前を大声で叫びます。すると、宇宙のどこかでイモちゃんがくしゃみをして飛び起きて、そしてクサンティッペは、イモちゃんが実は生きていて、ネルヴァルのもとにいると、伝えるのでした。


イモちゃんは復活早いなあ(笑)。あんな死に方ではあまりに酷いとは思ったけど、今度はウーレとかが何の意味もないファクターになってしまうような…。イモちゃんを一時的に退場させるだけなら、ネルヴァルに捕まった、とかでもいいわけですし。まあとにかく、今週は特に良かったです。次週も期待。