シャングリ・ラ 第11話  「胡蝶夢幻」


今週は香凛を主役にした番外編みたいなものでしたけど、ディグマ・ゼロなんてものが出てくるとは思いもしなかった。こうなるとやはり、香凛も3人の「クニ」たちと同様にアトラスの後継者争いへと関わっていくことになるのでしょうかね。


今回は出渕裕さんが脚本でもりたけしさんがコンテという回でしたけど、ちょっと微妙だった。カナリアの「(香凛に向かって、鳥かごの中から)出ておいでよ」という言葉から、美邦の「(屋敷から)出たいのじゃ」というセリフにつなげたり、「鳥は自由でいいのお」という美邦の言葉から「自由になりなよ」というカナリアのセリフが出たり、草薙が「(クニで待っている「いい人は」いないんですかと訊かれて)、俺にはそんな相手…」ときて國子の「え、あたし?」につながったり、國子の「どうやって(アトラスを攻略しようか)、か」のあとに香凛がカナリアに「どうやって入ってきたの?」と言うところとか、クロスカッティングをやる際に無理やりセリフをつないでいるような感じが、露骨過ぎて好きじゃない。あと、アバンから香凛やカナリアが何度か歌っている童謡はちょっとしつこい。
とはいえ、香凛が「バードケージ」(香凛の住んでいるマンションの名前です。Newtype7月号に書いてありました。この名前がつけられている理由もその外観ゆえ、と今回分かりましたね)から出て、カナリアとの約束通り公園に言った後のシーンはなかなか興味深かったです。香凛は最初丸い形をした遊具の中に入っていて、これがまるで「鳥かご(=Bird Cage)」に見えるんですよね。香凛は葉っぱを見つめながら童謡を歌い、立ち上がって遊具を登り、遊具の上に腰かけてさっきまで自分がいた「バードケージ」を見つめます。このシーンは、まず一つは公園の遊具が「バードケージ」のメタファーになっていて、香凛が遊具から出るまでのシーンは、香凛がカナリアと触れ合って「バードケージ」の外に出た今までのプロセスを圧縮して繰り返している、と見ることができて、もう一つは直後に「やっと出られたね」とカナリアのセリフが示す通り、この遊具から出た時が香凛が本当に「鳥かご」から出た瞬間であると見ることができます。
あと、美邦と香凛の二重性も重要か。さっきも触れたとおり露骨なカットバックが何点かありましたが、結局、鳥かごから出なくていいと言っていた香凛が鳥かごから出れて、鳥かごから「出たいのじゃ」と言っていた美邦は出れない。カナリアが「鳥かごの中の鳥」のことで、月宮殿で鳴いているカナリアが、そのまま美邦のメタファーになっていますね。ほかにも幼少の草薙とカナリアのカットなども触れなければならないかもしれませんが、まあとにかく今回は技巧的な回でした。


midoriさんによるコーラスが途中で入りましたが、これはすごく良かった。原作には香凛は(途中で逃げて行ってしまいますが)インコを飼っていたんですけど、アニメではそれが(抽象的な存在ですけど)カナリアに置き換えられましたね。最初にも書いたけど、この「カナリア」というのは今回だけで終わりのキャラじゃなくて、今後鍵を握る存在になりそう。
あと、國子や美邦と同様に「言霊之剣」を持つ草薙もアトラスの声を聞いたわけですが、「大地よ、昼と夜を従え、世界を…」。原作読んだときにちょっと思ったんですけど、この言葉だけ聞くと、これで草薙がアトラスの後継者になれないのはおかしい気がしてくるんですよね。原作ではこの言葉にあまりに何も無かったので、アニメでは+αを期待したいところではあります。


あと、さっきもちらっと書きましたが、今月のNewtypeシャングリ・ラの設定が詳しく書かれていました。アトラスの全景みたいなのが取り上げられていて、とりあえず本で読んだアトラスとは全然違いますね。アニメ版の設定だと第13層まですでに出来上がっていて、第1〜3層の住宅地化を残すのみ。だから涼子は「今後10年でアトラスを完成させます」って言えるのか。




今週は週末の記事すら休んでしまって申し訳ありません。いくつか書きたいことがあるのでここで書きます。
・もう随所で話題になっていますが、バスカッシュの監督・板垣伸がクビになり、新監督に佐藤英一が起用されたと、ついさっき知りました。11話を確認したらOPに二人の名前がクレジットされていました。全体的にスタッフの再編成を行うらしく、たとえば平田雄三さんが17話Aパートを最後に現場を去るとか。驚きすぎてぐうの音も出ませんが、まあここは前向きに、板垣監督ありきだったバスカッシュを佐藤監督がどう作り変えていくのか、楽しみに見ていくことにします。継続して参加されるスタッフのみなさんも、新規に参加するスタッフのみなさんも、大変な現場だとは思いますが頑張ってください。とりあえず第11話は良かったです。


・だいぶ前のことですが、十日売りアニメ誌が出て、そらかけのWebページも更新されましたね。おそらく、最終回放送前では最後の更新になるか。それを見て、前回の23話にちょっと補足。
ほのかさんの「QTローズの有効圏内は、たぶん…」っていうセリフは、ほのかさんはアルヴァクルを通じてほかのイグジステンズから思考干渉を受けてしまうので、QTローズの有効圏内なら干渉を受けないだろうという意味ですね。
そらかけも残り3回です。脚本は野村・樋口・樋口でコンテは京極・須永・小原。京極尚彦須永司とそらかけでは定番の2人に続いて、最終回はやはり小原監督が。監督がコンテを切るのは第1話以来です。

すごくどうでもいいことかもしれないけど、剣・冠・華の華を花と書かないのは、どうにも花という字は花田十輝を連想するからに思えてならない。「QTローズ」のことを指すだけならむしろ「花」のほうが適当のはず。…まあ、それは考えすぎなんでしょうが。