バスカッシュ! 第1話 「アイ・アム・レジェンド」


マクロスF河森正治さんの最新作…として注目されていましたが、さすがとしか言いようがない圧巻のクオリティでした。


どこかの宇宙の、どこかの銀河、もっとどこかの惑星…アースダッシュ釘宮理恵さんのナレーションで舞台の世界観が説明され、ダン・ミユキ・セラ・アイスマン、と主要なキャラクターが映されます。シリーズ構成の佐藤竜雄さんによれば、ダンたちの住むアースダッシュが「田舎」で、月面都市ムーニーズが「都会」(ニュータイプ3月号)。月が夢と希望の象徴だとか、月に暮らすことを夢見てとか言っていますけど、人々のその気持ちは「田舎」から「都会」への憧れなのですね。


ローリングタウンの街の人々が各所に設置されたモニターの前に集まってきて、これから始まる「BFB(ビッグ・フット・バスケットボール)」の試合の中継を観戦しようとしています。その中でダンは悪友のガンツ・ベルと打ち合わせて、試合開始を待ってスケートボードに乗り街じゅうのモニターをバスケットボールで破壊して回ります。警察に通報が行きビッグフットが出動してきますが、ダンは華麗にドリブルをしながらビッグフットを避けて破壊活動を続けます。ガンツはダンが破壊したモニターから金になりそうなパーツを拾う役、ガンツはダンに遠くから指示を飛ばし誘導する役です。最後にダンは、花の水やりをしている男性をジャンプ台にして飛びあがり、巨大スクリーンに向けてバスケットボールを投げつけ、粉々に破壊します。仕事を終えたダン・ガンツ・ベルが一堂に集まり、ガンツは回収したパーツを金に換えて分配します。ダンたちが街じゅうのテレビを破壊して回ったのは金もうけよりはBFBの試合を妨害するのが目的で、今度はローリングタウンで行われるBFBの公式戦を直接妨害しようとたくらんでいます。
モブキャラが丁寧に描きこまれていて、街並みや建物などが非常によく描けています。背景美術を担当したロマン・トマさんを監督がニュータイプ4月号で褒めてましたが、その時のコメント通り背景美術がとにかく美しい。ダンのスピード感のある動きも非常に良かったです。
ダンは妹のココにプレゼントを買って帰ります。ココはビッグフットの事故で足の自由を奪われており、ココの座っている椅子もよく見ると車いすのような形をしています。ココはダンの買って帰ったペットを「いらない」と拒否し、ダンの頭についている「ペットアクセ」のスパンキーがそれを食べてしまいます。ココはダンが街頭テレビを破壊して回っていることをよく思っていないんでしょうね。「いい加減頭悪いことやめないと捕まるよ」とココはダンに説教をして、ダンは怒って飛び出していきます。
ダンはその怒りをバスケットボールにぶつけて、街の広場のような場所にあるバスケットゴールに向かってシュートを繰り返します。それをフェンス越しに見守っているのがミユキ。ダンのシュートは五回目でリングに当たり、ココがビッグフットの事故に会った時の映像がフラッシュバックしてきて、ボールがリングから弾かれます。すると今度は傍で工事をしているビッグフットに向かって罵詈雑言を吐き、八つ当たりをします。そこに「ネジ外すくらいじゃ壊れないよ、ビッグフットは」と言いながらミユキが近づいてきて、ダンに牛乳を渡してダンの愚痴を聞きます。ダンは妹の足を奪ったビッグフットを恨み、またそれ以上にバスケットボールを「つまらなく」したBFBを嫌悪している、と言っています。バスケがつまらないなんて理由でテレビを壊して回るという行動は非常に「子供的」ですが、妹のココへの怒りがいつのまにかBFBへの怒りにすり替わっていることでも「子供的」な性質が出ていますね。しかしやはり彼の根底にあるのは妹の足を奪われた怒りで、BFBも嫌悪するのも、本来ならビッグフットよりも妹のココの方が上手なプレイヤーだったはずだからです。ダンは怒りのあまり牛乳パックに力を入れ過ぎて牛乳を浴びてしまい、ミユキに家に連れられていきます。


日が暮れて月に電気がともり、月面いっぱいにムーニーズのアイドルグループ「エクリップス」のプロモーション・ヴィデオが映されて音楽が流れて来ます。この曲はなんかとても聴き覚えがあるんですけど、飛蘭の「AROUSING SOUL」にそっくりだからかなあ。月は皆の憧れる「都会」ですけど、ダンはそれ以上の執着を見せていて、月に行けばうまい食い物もいい女も望みのままといった、いかにも田舎から見るステレオティピカルな都会の理想像のようなものを月に見ています。ダンはそれ以上に、月に行けば妹のココの足も治るに違いないと信じていて、ダンは煙突に上り、そこからさらに飛びあがって月に向かって手を伸ばしますが、届くはずもなくダンの視界はブラックアウトして川に落ちます。
川に落ちたダンはミユキの家に連れられてきます。ミユキの家は移動可能なキャンプカーのようになっているんでしょうかね。ミユキとダンが家の中に入ってもカメラは切り替わらず、「さっさと脱いじゃいなよ」から始まるミユキのセリフがとっても卑猥に聞こえます(笑)。手前で寝ていた爺さんもその卑猥な会話を聞きつけて目を覚まします。この爺さんはミユキの祖父のソーイチ。この先はミユキとダンが映されているのでそこまで卑猥ではないけども、セリフだけ取り出すとやっぱりヤっているとしか思えない。「一緒にイクよ〜」というミユキにダンは「イクってなんだよ」と的確に突っ込んでいます。しかし祖父のソーイチは孫が変な男を連れ込んだにもかかわらずいたって冷静で、「もう少し静かにヤれんのか」とぼやいています。ともあれ、ダンは服を洗濯している間、ミユキに無理やりビッグフットに乗せられて操縦の手ほどきを受けることになったのです。
ミユキがダンに操作を教える様子も、ビッグフットの外側からの位置ではやっぱり卑猥な会話にしか聞こえない。ダンがペダルを踏むとビッグフットは動き出して、ミユキは「選択が終わるまでデートしてくるね」と外に居たソーイチに呼びかけます。「順番がめちゃくちゃだ」とぼやいたソーイチは、果たしてビッグフットの操縦に突っ込んだのか、ダンとミユキの営みに突っ込んだのか、どっちですか(笑)。
ダンはミユキと一緒にビッグフットを操縦して、初めて操縦するビッグフットに戸惑いながらも感動を覚えていますね。ダンは水を得た魚のように突然自在に操縦をはじめて、ビッグフットを高くジャンプさせて喜んでいます。ダンはまたビッグフットで月に手をとどかせようとジャンプし、当然失敗してビッグフットを壊してしまい、ミユキに怒られます。「しらねーよ、ビッグバスト!」とミユキを罵ったダンですけど、あんまり日本的なギャグではないので、こういうところにも日仏合作の匂いを感じますね。ソーイチは酒に映った月面を見て「傲慢な奴らめ、酒がまずくなる」と呟いています。「都会」に憧れる人々の中で、ソーイチは発展した月を嫌っているみたいですね。


ダンはぶっつぶしに行く予定だったBFB公式戦のチケットをミユキに貰い、ガンツ・ベルと3人で観戦に行くことになります。バスケットボールが跳ね返る感じでカットが変わっていってますけど、そのたびに背景にある競技場の工事が着々と進んでいますね。競技場は非常に賑わい、場外まで人があふれかえっています。客席でドリンクを売っている女の子がセラですね。セラはこのときすれ違ったダンたち3人を「しけた男」と評しています。しかし、今までテレビで見ていた内容よりもしょぼい試合内容は、もともとBFBの嫌いなダンにはさらに嫌気が増すだけの内容で、鈍重なビッグフットの動きにダンは怒りを爆発させて、「これがバスケットボールなら、ココはなんだったんだ!」と叫びだし、前の客席の人に当たり散らします。それをガンツ・ベルとスパンキーにたしなめられてダンは気を失います。
ダンは気を失っている間、小さいころの夢をみます。幼馴染だったミユキとダンが、別れ際に指切りを交わすシーン。ミユキとダンは「相思相愛」だという昔のセリフとともに思い出して、ダンは目が覚めた時に頭上に居たミユキを、幼馴染だったミユキだと認識します。そして今、ダンとミユキの愛機は相思相愛、ダンの「恋人」に乗って本物のバスケットボールを見せてみろ、とダンはけしかけられます。
観客が退屈な試合内容に飽きてきた頃、ダンは「ダンクマスク」の姿で「恋人」を連れて場内に現れます。ミユキがジャックしたマイクを握って名乗りをあげ、「恋人」に乗ってバスケの試合に乱入します。今までの試合のビッグフットの鈍重な動きと違って、ダンの動きはキレがあって、上手く描き分けられていますね。特に挿入歌が流れ始めたあたりからすごく良かった。観客もダンが乱入して面白くなった試合に熱狂しています。ダンは警察のビッグフットが入ってきてもものともせずに走り、ダンクシュートを決める直前で、高く跳躍してきたアイスマンにブロックされ、ダンはゴールに派手に衝突します。鈍い動きをしていた選手たちの中でただ一人、アイスマンだけはキレのある動きができたんですね。
ダンは警察に取り押さえられ、懲役一年の実刑判決を受けます。懲役を食らったとはいえ、大嫌いなビッグフットバスケをぶっつぶして満足のダンでしたが、懲役を終えて出所してみると、そこではビッグフットが盛んにストリートバスケをする世界に変わっていました。「おかえり、伝説」とガンツに声をかけられ、自分がしでかしたことのせいでビッグフットバスケは別の方向に発展していったことを知ります。


全体的に下野紘さんが好演でした。ダンの子供っぽさとか、ダンの怒りとか、テンションの高さとかがよく伝わって来ました。まだ導入部分なので何とも言えませんけど、とにかくクオリティは非常に高かったので、2話以降も楽しみに待つことにします。次回も面白かったら感想を書きます。


・「ハヤテのごとく!!」も昨日見ました。作画はそんなに違和感なかったけど、あんまりおもしろくなかった。「ハルヒ」の再放送も見てます。


追記(4/4 15:04)
アースダッシュというのは「地球’」ということですね。