the note of satanismに関する覚書


love solfege’


夏コミのピアノ楽曲集を除けば1年ぶりとなってしまった「love solfege'」のC77の新譜、「the note of satanism」。直訳すれば「悪魔信仰の覚書」である。「マリアスノニウムの謝肉祭」「9つの緋色」「アクルグ解析による自由への教唆」がストーリー性を持ち合わせていたのに対し、「the note of satanism」は「La Fatalite」と同様にひとつの主題に対する楽曲集となっている。
「the note of satan」ではなく「the note of satanism」となっていることから伺える通り、悪魔に対する「信仰」が主題となっている。ラブジュの魅力というのはクラシックだけに留まらないのであるが、今回は宗教的な意味合いを全面に押し出して全曲クラシック・テイストの楽曲によって構成されている。曲調も一様に暗めで、モノトーンのブックレットと相まって「悪魔」のイメージを醸成している。また、それらの画一性に反し、歌詞で使用されている言語は伊語、ギリシャ語、露語、仏語などなどと多様で、こちらは「悪魔」という存在の普遍性が反映されている、と言っていいだろう。
「信仰」は2つの要素で形成される。ひとつは己にとっての悪魔とは何か(definizione di diavolo)という問いかけと、もうひとつは自己の悪魔との関わり合い方の模索である。各楽曲で表現されているのは各々の「悪魔信仰」の在り方であろう。しかしその信仰が欺瞞に満ちていることは、すでにブックレットの表紙、犬が人間の靴を使って足跡をつけているイラストの時点で暴かれているのである。しかし、最終曲である第8曲「Le dernier」(英訳するとThe last)では、もともと「枯れ木」(世界樹がモチーフであると思われる)しかないのだから、あなた方は信仰に頼るしかないのだ、と語りかけてくる。
非常に悪魔的な語りかけによってこのアルバムは閉じられる。しかし、Webサイトの紹介文を見るに、どうやら我々には、悪魔に勝利することが求められているらしい。もしかしてなにかまだ仕掛けがあるのか。歌詞カードを眺めて、曲を聞きながらゆっくりと探っていくことにする。




以上、「the note of satanism」についての簡単な感想でした。今回はピアノ加えてバイオリンが主軸になっているよう。特に第3曲のインスト曲は言葉を持たぬがゆえに全体的に暗めの曲調から唯一離反している曲のように感じられます。そして、新メンバーの綾野えいりさんの巻き舌が素晴らしい。
次回作も期待しています。