ましろ色シンフォニー 第1話「ましろ色の出会い」


これは凄い。音楽の付け方は『ささめきこと』のように嵌っているし、ガラっと印象を変えるBパートも『ささめきこと』のギャグパートのような心持ちで見られる。
菅沼監督は「ましろ色」というモチーフを、ともすると真逆の印象を与えかねない「入り組んだ薄暗い路地」に仮託した。限られた光源、限られた人通り。その中で、自分の前を素通りする者と、立ち止まる者。人と人との”交差”に自然と目が行くなかで、新吾と愛理の最初の”交差”が芽生える。

「二人とも、まだ迷ったままなんですから」

愛理の台詞。「迷ったまま」というのが”まっさらな”状態だとすると、人と人との”交差”・”出会い”が最初の足跡になると、そういう形で「ましろ色」というテーマが伺えるような第1話だった。


Aパートは旧市街地の絶妙な暗さが良い。新吾と桜乃の住む地区よりも一回り暗い旧市街地。その中で、街灯と数件の家から漏れる光、連なる光源が、アバンラストにある雪原に残された足跡のようだった。Bパートの昼間との対比を狙った暗さ。他のヒロインの髪の色などの印象がこの暗さで抑えられているなか、愛理の纏う赤色(スカートや傘やリボン)が相対的に際立つ。新吾と愛理の”出会い”の必然を感じさせる、赤色の印象。この赤色の使い方は『ささめきこと』のOPに似ている。


Bパートで街の印象が変わる。明るさ暗さや色の印象、というだけでなく、目の前を通りすぎて行く女生徒の大群のように、彼らを取り巻く”大きな流れ”のようなものが見えてくる。人と人との交差、新吾と愛理の間に見える”赤い糸”といった、Aパートでみせた主題は埋没する。象徴的な所で言うと、T字路でのカメラ位置が変わる。AパートではT字路で横の構図が用いられていたのに対して、BパートはT字路ではほぼ必ず縦の構図、奥行きを意識した構図が用いられる。縦の構図の多用は、OPでは草原を奥へ奥へとヒロインたちが駆け抜けていく場面に重なる。新吾と愛理、二人の関係というテーマが少しの間なりを潜めるとともに、他のヒロインたちの”色”が見えてくる。この切り替えの仕方は巧い。


第2話以降と今後の菅沼栄治監督に期待。