『アスタロッテのおもちゃ!』について ― クローバーと父性


アスタロッテ、3話くらいから急にハマりだしました……。ロッテと明日葉を毎週ニヤニヤと眺めるのがもう至福で至福で。

アスタロッテのおもちゃ!』は相当に奇抜な設定を持っていて、主人公は23歳にして10歳児の父だったり堀江由衣さんのキャラは自分の乳を絞ったりするんだけど、現在のところはごくごく普通の親と子の物語。しかし再びファンタジーな経緯によって、直哉とロッテの間の恋愛要素がある。おそらくここに特徴があって、「親」の役割にあたる人物を「男」として見れるか?というのが『アスタロッテ』の核だと思う。ロッテは「母親」の「女」としての側面を目撃したことをトラウマに抱えているのだが、直哉を男として認められるかという問題は、裏返せばあの日の母親の振る舞いを認められるか、ということでもある。
この前原作を既刊全部読んだのだけど、その点原作は普通のラブコメになっててちょっと物足りない感じだった。というよりも、例えば第4話はアニメオリジナルのEP(完全にオリジナル…とは言い切れないけど)であるように、「親子」というテーマはアニメ版で特に強調されているのではないかと思えてくる。原作で月給50万だったところを明日葉が10万円給料を釣り上げたが、そのぶんの追加の仕事として、直哉はロッテの「親」であることを要求されているような気がする。


『アスタロッテ』ではトランプの柄の意匠が多く見られる。ロッテのしっぽはスペード、腹部にハートの切れ込みがあって、部屋はクローバーの模様で、女王様の住む宮殿はダイヤの模様……といった具合に。もちろんキャラクターデザインにかかわる部分は原作からあるのだけど、部屋や建物の模様などはアニメ版で設定が起こされたものだと思う。R字の建物も原作では見かけなかった。興味深いのは、原作には「クローバー」の模様が全然登場しないこと。世界樹の葉はアニメ版だと三つ葉だけど原作ではそうではないし、その葉を模した明日葉の髪飾りも同様だ。オープニングテーマの曲名にもなっている「クローバー」のモチーフはアニメ版から登場したものということになる。
このことついてひとつの解釈を。「クローバー」の象るものはおそらく「父性」なのだ。より正確には、「父親」「母親」「娘」の3人の関係だ。ロッテの母のメルチェリーダはしっぽがスペードの形で胸元と腹部にそれぞれダイヤとスペードの切れ込みがある服を着ているのだけど、クローバーだけが無い。その欠けたクローバーを求めるかのようにロッテの部屋はクローバーの模様で埋め尽くされている。欠けた「父親」の穴を埋めるのが、そして新たな「3人」の関係をロッテと生み出すことが、直哉に求められる役割なのだ。


明日葉の髪飾りも「3人」の関係を(それを贈った「母親」の存在を)示唆するものと取れる。もうだいぶ原作から外れているので「原作通り進めば…」とかいう前置きは付けられないが、明日葉の出生にまつわるお話があと1,2話で一区切りついて、直哉とロッテの「恋愛」の方に話題がシフトしてくんじゃないかと予想している。アニメ版がその辺りにどう決着をつけるのか、楽しみなところです。