ヨスガノソラ 第2話「アキラハズカシ」

ヨスガノソラ』の2話が相変わらず面白かった。


前回の引きの「イかせて…」というのが「学校に行きたい」だったのには(どうせそうだろうなと思っていたものの)少し苦笑い。けど、その動機、独りで家にいるのが寂しくて退屈だった、というのが上手く出ていた。Aパートでは、悠の通う学校の風景と穹の生活のクロスカッティングが、同じ時間を過ごす二人の差を浮き彫りにする。特に登校風景、「全員集合」のあと、蝶がひらひらと飛ぶ青空が穹の部屋の窓枠にすっぽりと収まってしまう。これはなかなか強烈。Aパートの登校風景の特徴的なカメラワーク(真ん中の一人を挟んで両側の二人の間をカメラが行き来する)はBパート、穹の登校時でも反復されて、カメラの動きとキャラの視線の対応が面白い。


見どころは無数にあるのだけど、ここでは、3つの「駆け寄り」のショットに注目したい。穹が蚊と格闘するシーン、リレーの最中に瑛が転ぶシーン、プール掃除で一葉が水を被ってしまうシーン、の3つにある穹・一葉・瑛の「駆け寄り」のショット。この3つは、キャラの性格に応じて走り方が描き分けられているのが素晴らしい。

第2話では一葉と瑛の関係に焦点が当たっている。Aパートでは一葉が瑛を世話する様子が描かれて、Bパートでは(瑛の撒いた火種なんだけど)瑛が一葉に助け舟を出す。二人はAパートにあるような日常を送っているのだろうけど、いざという時は瑛が真っ先に駆けつける。(瑛の「走り」は同じく一葉に駆け寄ってくる悠の走りと対比されている。)二人は、どちらかがどちらかに依存しているのではなく、互いに支え合っている。それに対して、悠と穹の関係は非対称だ。悠が穹のことを意識していないわけがないものの、2人の日常は、穹が遥かに一方的に「甘える」。知らない女の子を見れば嫉妬するし、知らない男の子を見れば悠の後ろに隠れる。
一葉と瑛の「互いに支え合う」関係に触れることで、悠と穹の関係の非対称性が浮かび上がってくるようになっている。その基点になっているのが、3つの「駆け寄り」ショット。瑛と一葉の相補的な関係を示唆する後ろの2つの「駆け寄り」だけでなく、それと対置するような穹の「駆け寄り」が最初に用意されている。


第2話でも、第1話にあった「歩くこと」という主題を踏襲していて、この3つの「駆け寄り」もその変奏、と見ることができる。その点、瑛と悠、一葉と悠、という組み合わせは一緒に「歩かない」。悠が神社の長い階段を昇り降りする描写は俯瞰とPANだけで省略されるし、一葉は車で悠を「連行していく」。悠と一緒に歩くのは、奈緒か穹(あと亮平)と決まっている。一葉や瑛が悠に寄せる好意というのは恋愛とは少し違っていて、一葉が時たま照れたりするのもやはり瑛のことを思って、なんだろうなと思う。
一葉の車内のシーケンスは、「詮索はなさらないで」の後、微妙にカメラが距離をおく、というのが良い。親密な空気を出していた車内から一転、二人の間にまだ残っている溝が顕になる。それでも、気まずい空気になるわけでもなく、少しだけ距離をおいた空気、というのが非常に良いバランス。この空気感が、穹が一葉に嫉妬を向けるシーンでも持続する。第1話のような冷たさではなく、「かわいい嫉妬」。この一連のシーケンスの空気感は第2話の中でも際立って良かった。


第1話のような軽快なカット割りが第2話のBパートでも見られて、その辺りは高橋監督の色が出ていたのかな…と思う。その辺りを除くと、長回し(というほどでもないけど)のシーンが印象に残った。Aパートの「全員集合」のあたり、穹が亮平から逃げるあたり、プール掃除の時の悠・亮平・瑛のあたり。真上からの俯瞰が目立つ。あとヴォイス・オーバーが多め。
穹がかわいいので今日も生きてゆけます。