ヨスガノソラ 第1話 「ハルカナキオク」


ヨスガノソラ』の一話がとんでもなく面白かった。兄と妹の恋愛、というのを真っ向から描いていて、果てしなくエロい。しかも、穹の脚の艶めかしさが「歩くこと」という主題と不可分に結びついているのが凄い。


診察室で穹が自慰をするシーン、足の指の艶かしい動きから、回想で穹が軽快に走る所作を見せ、悠とのキス、回想明けで椅子に乗ってクルクルと廻っている穹(回想明けでは足元を影で隠す!)、という一連のシークエンスが素晴らしい。Aパートの穹の「歩きたくない」というセリフ・所作と、回想中の軽快な足音の対比が、穹の過去と現在を雄弁に語っている。
Aパートでは二人の関係を客観視点からフラットに見せていたのに対して、Bパートでは艶かしいショットと突き放したようなロングショットの温度差が凄まじい。兄妹がペットボトルコーヒーを飲みながら、悠が学校での出来事を語るシーケンス、穹の裸足を最初にアップで見せてから、悠の「他の女の話題」にイライラして、立ち去ってゆくシーン。そして次の日の、意を決して家の外に(悠を探しに)「歩いていった」先で、悠と奈緒の「二人乗り」を見てしまう。ここのロング。
「歩くこと」というテーマは、「過去から未来へ進むこと」と読み換えて二人の関係を象っている、と見ることができる。診察室での兄と妹のキス、妹の穹はあの「過去」に拘って、そこから未来に進みたがらない。兄との関係を求めてしまう。アバンで穹のポッキーをかじる仕草がやたらエロいのも、あのキスを思い出しているから。それに対して兄の悠は、あのキスを心の中では引き摺りながらも(Bパートの悠の「妄想シーン」)、穹に「子供じゃないだろ」という言葉をかけて、穹との性的な関係を絶ち切って未来に進もうとする。


「携帯電話」も面白い小道具。ちょっとしか離れていないところからメールを送る穹。Aパートの終りでは穹からの呼出しで急いで家に帰った悠だが、Bパートでは携帯を家に忘れて穹の呼出に答えられない。病的にメールを送る穹。二人のコミュニケーションはこの「歩かなくてもいい道具」に規定されてしまう。
二人の非対称な思い・距離感が繊細に描かれていた第一話だった。


あと、見た目の印象の話をつらつらと。Aパートではリズムよくカットを割っているのが非常に気持ち良い。全体的に劇伴がややしつこいかな…っていう印象もないわけではないけど、Aパートで夕暮れ時に学校と神社に行く辺りはカット割りのリズムと相まって非常に良かった。SEの使い方も印象的。回想の中のパタパタという足音と、現在の重たい足音の差が穹の過去と現在の対比に絡んでいたり。日焼け止めクリームを出すところの「デデン!」というのも面白い。
他のヒロインのことは一話ではあんまり分からないけど、梢にだけ『君に届け』みたいな主観ショットが使われていたのが気になった。この子はなにかあるのかな。