「ストライクウィッチーズ2」第10話について

佐伯さんが直球なのに対して、浦畑達彦さんは9話・10話と変化球を投げてきている印象。


第10話では公式同人誌のほうで主役を張っているハンナ・マルセイユがゲストキャラとして登場し、やりたい放題に振舞う。バルクホルンを馬鹿にし、バルクホルンを餌にエーリカを挑発する。


私が気に入っているのは、「エーリカが代理で戦う」という点と「引き分けで終わる」という点。

こうして傲慢な新キャラが出てきたところで、普通はバルクホルンが活躍を見せてマルセイユが態度を改める…みたいな展開を想定すると思うのだけど、それはマルセイユ実力主義的な考え方がベースに設定されていることになる。それは「501らしくない」。バルクホルンが実際にマルセイユより強くなくたって構わない。マルセイユは最初からエーリカとの勝負にしか興味がないけど、エーリカはバルクホルンのために戦う。王道な展開を捨てて「501らしさ」(漠然としたものではあるのだけれど)からブレなかったのが、素晴らしいなと思った。

そして、バルクホルンの雪辱を果たすことなく「引き分けで終わる」。マルセイユの考え方は「501らしく」ないけれど、ロマーニャとは全然違う環境のアフリカで、その考え方でずっと戦ってきた。同人版では、変則的な戦い方をするマルセイユの列機として飛ぶのに相当な技量を必要とする、という設定がある。マルセイユは「バルクホルン、あんたじゃ私のパートナーは務まらない」と言い放ったけど、それは単なる挑発でなくて偽らざる本心が潜んでいる。マルセイユの考え方は所変われば正しい理屈になる。否定することはできない。というわけで、引き分け。


エーリカはあまり饒舌ではないので、ちょっと分かりにくいかな…というストーリーではあるのだけれど、それでもエーリカの気配り具合が上手く出ていたと思う。バルクホルンと以心伝心なのは当然としても、パートナーとしてバルクホルンを拒絶するマルセイユの気持ちまで斟酌してあげている、というのが良い。
マルセイユの口から身の上が語られる唯一の場面が、エーリカとお風呂で喋っている辺り。「アフリカでは、水の一滴が血の一滴だ」という印象的なセリフと、「アフリカの星」という二つ名を象徴するかのような満天の星空・ふと流れる流れ星から、マルセイユの境遇が叙情的に語られる。具体的ではないけれど、マルセイユの苦労やアフリカの部隊への愛が窺えるシーン。これを挟んでいるから、マルセイユを立てるシナリオが成立する、とも言えるのかも。


第10話は非常に面白かった。