原作とアニメ


「原作至上主義」と「アニメ至上主義」という、しょっちゅう話題になるような話題が、最近各所のブログで論じられているようで。私がここでとりとめもなく書くことは、商業的に成功するアニメ化とかではなくて、単に私個人が満足のいく「アニメ化」はどんなものか、ということです。個人的な感想以外は何もないので、悪しからず。


そもそも「アニメ化」とは何なのか。一口にアニメ化と言っても「かんなぎ」と「ゼノグラシア」では全然違う。だいたい、次の3つのパターンのどれかに分けられるんでないかな…と思うんですけど、どうですかね。


1.(基本的に)原作に忠実に作る
「原作に忠実」とはそもそも何なのか、と考えてみるととても難しいです。当然アニメと原作で媒体が違う以上、「完全に同じ」には成りえない。しかし、たとえば「咲-Saki-」とか「かんなぎ」とかは、原作に忠実なアニメ、と言えば同意してもらえると思います。原作をもとに起こした脚本、とでもいいんでしょうか。「原作に忠実」とは何か、という問題は手に負えないので立ち入らないことにします。「けいおん!」のように、基本は「原作に忠実に」作りつつ、アニメの脚本家による創作エピソードを添加したタイプも、それ自体は一種のファンサービスと考えられるので、仲間に入れておきましょう。
これが一番「アニメ化」らしいアニメ化というか、むしろ普段アニメを見ない人は、これ以外のアニメ化なんてあり得るのか、と思うかもしれない。でも実際のところ、こういう風に作って、どうしたらアニメが面白くなるのか、皆目見当がつかない。だって、原作を読んでいる側からすれば、「同じストーリー」のものを見ても退屈なだけ。今期だと「狼と香辛料」とかは、私は原作は好きだけども、アニメはあまり好きじゃない。良くできているとは思うけれど、退屈で仕方がない。「Air」も「ハルヒ」も「かんなぎ」も、アニメを見始めたころは面白いと思っていたけど、原作に手を出したとたん、急激に熱が冷めた。今は3つともアニメとしても面白いとは思うけど、DVDを買おうとまでは思えない。かといって、このタイプを否定することは、さすがにできない。どうしたらいいんだろう。


2.原作とは別の方向にストーリーを膨らませる
いい加減な言い方だけど、まあ「紅」とか「喰霊-零-」みたいなものを想定しています。昨今は会話劇と言えば化物語のようですが、1年前は会話劇と言えば紅でしたよね。でも、紅の原作は別に会話劇ではなくて、普通のバトル物。それを真九郎と紫の触れ合いを重視して膨らませたのが、アニメ版「紅」。こうなるともう、オリジナルアニメと大して変わらない気がするけれど、たとえば喰霊の最終話のラストとかで原作ファンが大いに喜んだように、原作ファンにとっても有意義なアニメ化になり得て、良いものができればアニメファンも喜ぶので、実は一番理想的なのかもしれない。


3.原作とは全く関係のない別のアニメを作る
アイドルマスター XENOGLOSSIA」とか「true tears」とかですか。ここまで来るともう、「アニメ化」と呼べるのかどうか、怪しい。オリジナルアニメとほとんど変わらない。でも、ゼノグラもttもアニメとしては秀逸だった。このタイプでわざわざやる必要があるのか、といえば無い気がするけど、私としてはもっとオリジナルアニメが増えればいいのになあ、と思っているので、プロデューサーから「○○のアニメ化」を持ちかけられたときに、監督はttを例に持ち出して、オリジナルアニメを作るという選択肢があるのは、嬉しいことです。


結局、どうしたらいいのか。私としては2.3.のように作った方が面白くなる可能性が高いのでそうしてほしいけど、どう考えても「喰霊」や「true tears」はレアケースで、普通は「原作と違う」とバッシングされてしまう。有無を言わさぬ傑作を作ればいいのか、と言うと、ゼノグラですら絶大な批判を浴びたのだから、およそ何を作っても批判を浴びる気しかしない。私としては、別に原作ファンから批判浴びてもいいから、面白いアニメ作ってくれって感じなんですけどね。こんな考え方する時点でだいぶ「アニメ至上主義」寄りなんだなあ。


ところで、余談ですが、「原作よりアニメが面白い」という場合には、原作は(原作それ自体の媒体として、例えばマンガの中では)ちっとも面白くないが、アニメは(アニメとして)面白い、という意味でしか使われない気がする。反対に「アニメより原作が面白い」っていう言葉は実に様々な意味でつかわれますね。アニメとして駄作だ、という意味で使われることもあれば、原作を切り離してアニメとして見るなら、決して悪くない出来にもかかわらず、「アニメはダメで原作は面白い」と言うこともある。上で酷評した「狼と香辛料」はまさに後者のケースだと、自分でも思っている。
さらに、アニメも原作も肯定したうえで、「アニメより原作が面白い」という使われ方もすることがある。この場合は一番意味が分からなくて、それはもう媒体の違う2つの作品を比較するなんて、カレーライスと緑色、どっちが好き?って聞いているようなもんで、ナンセンスだから、無視してもいいケースではあるけれども。とにかく、大抵の場合、「アニメ(原作)より原作(アニメ)の方が面白い」と言うときは、実は2つの作品を比較しているんではなくて、それぞれ独自に評価をつけたうえで、そのあと敢えて別々につけた評価をごちゃまぜにした言い方をしている、と思います。