化物語 「まよいマイマイ編」における真宵以外のキャラクターの「動き」の無さ


化物語の第5話にして真宵編の解決編が放送されました。真宵の正体が実は暦にしかみえていない幽霊だとか、なかなかホラーな展開で、改めて第3話を見返してみると、微妙に違和感を感じていたひたぎのセリフの意味が分かって面白いですね。「戦場ヶ原蕩れ」で締めくくられる一連の「告白シーン」も、ひたぎ編の主題歌のピアノソロ版がしっとりと響いて、格好いいシーンになっていると思います。


今回は、最近の「化物語」において感じていた違和感の正体が分かったので、それについて書きます。
第4話ではバスカッシュ!の元監督・板垣伸が「オープニングディレクター」として参加したオープニング映像が放送されたわけですが、これがまた「別のアニメを見ているみたいだった」という意見が非常に多かった。私はその時もそういった違和感は感じていたのですが、真宵の「元気溌剌な」性格を考えればこのようなアプローチが妥当なんじゃないかと思って、むしろバスカッシュ!との共通点の方に興味があったので、前回ようなエントリを書いたわけです。しかし、「別のアニメみたい」と言っている意見に向き合ってみると、確かにこのオープニング映像は本編から大きく乖離しているようです。それは、第4話のOP映像では真宵は画面の中をせわしなく「動きまわっている」のに対して、「まよいマイマイ」に入ってからの「化物語」では、キャラクターが驚くほど「動いて」いない、ということに起因していると思われます。


真宵が一番「動きまわった」と思われる第3話を見てみましょう。暦が後ろから真宵の頭を殴ったことに端を発する「取っ組み合い」のシーンでは、まず、真宵の背後で構えを取る暦の姿が映されて、真宵の顔のアップが入って、突然赤色に読み方もわからない漢字が記されたカットが入り、次のカットでは真宵の顔面が激突しています。真宵が暦の腹にキックを入れたところから始まる「取っ組み合い」のシーンでは、真宵の鋭いキックは躍動感溢れる画になっているものの、キックを食らった暦が悲鳴を上げるカットは顔がデフォルメされたなんだかよく分からないカットになってしまい、続けて暦が真宵の脚をひっつかむところでは、再び赤字に謎の漢字のカットが邪魔をして、真宵が暦のアホ毛を掴んで肘鉄を食らわせるところは素敵に描かれているものの、そこからの暦の反撃は、まるで二昔前のマンガみたいな「煙」が邪魔をして、いつのまにか暦が真宵をのしている。「化物語」において、特に意味も感じられない「文字のカット」は、キャラクターの動きを代弁するためにしばしば用いられています。


このシーンと、第4話で真宵が暦に「噛みつく」シーン、第5話で暦が「噛みつかれる寸前」で真宵を抑えたりするシーンを併せてみれば、どうも真宵の暦に対する攻撃は丁寧に描かれていて、暦の真宵に対する攻撃は邪魔が入る、という法則に気がつきます。第4話では、真宵が暦に噛みつく痛々しいカットが描かれているのに対し、暦の攻撃はすべて「殴」に似たなんだかよくわからない漢字のカットが入っています。(ちなみに、第4話において真宵が噛みついた「直後」の赤字に漢字のカットは、暦のリアクションを「代弁」しているものである、と考えられます。)これは暦の動きに限った話ではなくて、たとえば第5話でひたぎが暦に「I LOVE YOU」と言うときには、頭上高くを指差した腕を、暦の高さにまで振り下ろすカットが、「I LVOE YOU」という白地に赤のテロップで代弁されている。ほかにも、割とコロコロと姿勢を変えるひたぎの「動き」はほとんど描かれることはなくて、例えば第5話の告白のシーンでは、暦のカットとか、二人の姿を遠くから眺めるカットとか、ひたぎの顔以外のカットが入るたびに、ひたぎの顔が姿勢を変えています。このように、「活発」という印象を真宵から受けるのは、実は真宵が「活発に動いている」からではなく、真宵以外のキャラクターの「動き」が抑制されることによって、「相対的に」、真宵が活発に動いているからなのです。すると、第4話の「真宵しかいないオープニング」では、動きを抑制する要素が何もないために、キャラクターが自由自在に画面を動き回るオープニングと成り得る訳ですね。そうして、「読めない漢字のカット」が物語る「動き」を無意識に補いながら見ざるを得ない本編とは、大きく乖離するわけです。


ところで、シャフトにおいて今回の「読めない漢字」のような、一見意味を感じられないカットの挿入はしばしばあったわけですが、今回は特に、「キャラクターの動きの代弁」に充てられている、というところにも注目すべきのようです。これは「化物語」における「会話劇」という側面を強調するために、わざと「動き」を削っている、とも見ることができそうです。さらに、どうやらキャラクターごとに「色」が使い分けられているようで、さらに第4話で突然挿入された目が痛くなるほどの「紫色のカット」も併せてなにやら面白いことがありそうなんですが、そのあたりは良くわからないので、今日はこの辺で。「するがモンキー」編も期待しております。