CANAAN 第1話 「洪色魔都」


今期一番の注目作であるところの「CANAAN」…だと思っていたんだけど、はてなキーワードを見ても意外と反響が薄いですね。true tearsの時はどうだったんだろう。出来上がったものを見てもこれで反響が無いほうがおかしいくらいの出来だと思うんですが。


雑誌などを読む限り、「猥雑な街・上海」における「色の氾濫」というのがCANAAN全体を通じた主題になっているようです。とりわけ第1話は「洪色魔都」とサブタイが付いていて、その主題に沿って世界観を提示するのが、第1話の目標、といったところでしょうか。そしてその「色の氾濫」の様相はAパート冒頭に美しくまとまっています。ビル群の中を浮遊する色とりどりの風船たちは、上海の街の「猥雑さ=多様な色」を表現していて、そしてその中で狙った風船を撃ち落とすカナンは、まさに今回の後半で行われる祭りの中の銃撃戦を記号的に表現していますね。ほかにもAパートの冒頭では、CIAに拘束されるアルファルド、「ウーア・ウィルス」に感染して命を落とす人、射的の売り子をやっているユンユン、などが矢継ぎ早に映されます。そしてカナンの鼻歌は、そのまま今回のラストのアルファルドの鼻歌につながって、二人の間に繋がりがあることを意識させる。
ユンユンがぬいぐるみに空いた穴を不思議そうに眺めてますが、これはカナンが狙撃銃で撃ったからで、このシーンの最後の、カナンの「後でもらいにいこ」っていうセリフはユンユンのぬいぐるみのことを言っているわけです。んで、マリアと行動しているときにユンユンので店によって、「これ、私が取った」といって懐の銃をちらっと見せます。カナンとしては「私が取ったんだよ」っていう意味なんですけど、ユンユンにとっては脅迫で、二人の意図がすれ違いながらも物事は意図どおりに進んでいくのが、面白いですね。


上海へ向かう御法川とマリアが出てくるところで、マリアの「演説」…「私、この世界には、誰もが見えていないものが、いっぱいあると思うんです。見ようと思えば、本当は見えないものなんてないのに、わざと、目を閉ざしている。この目でそれを見てしまうのは、痛すぎるし、辛すぎるから。だから、閉ざしている。」…ここで、ウーア・ウィルスに感染した人が悶え苦しむさまを、芸か何かだと思って騒ぎ立てる上海市民の様子が描かれています。この光景がこの「演説」の内容の典型例になっていて、後のカナンの銃撃戦も上海市民たちは何かの出し物だと思ってしまい、御法川はその光景を見て、一旦は馬鹿にしたこの言葉をかみしめることになります。


サンタナとハッコーも今回顔見せ程度に登場してきます。サンタナが造花をみて「ウーア」と呟きます。「ウーア」はスワヒリ語で「花」の意で、また同時に「死」も意味する…と何かの雑誌に書いてありました。後にサンタナとハッコーが着ぐるみの男たちと合流していたので、この2人はウーア・ウィルスと繋がりがある、ということをここで示唆しているんでしょうか。リャン・チーも今回は顔見せ程度ですが、彼女が「姉さま」と呼んでいるのがアルファルド。この社長のことはゴミか何かだと思っているんでしょう。


Bパートに入ると、いきなり電波ソングが流れだしてびっくりしました。これはまあ実は、次回も流れるんですよね。Bパートの冒頭は上海での祭りの様子がマリアの視点で表現されていて、この祭りのシーンは迫力があって圧倒されてしまいますね。市民たちが一様に雨合羽を着ているのをマリアが不審がっていると、マリアもその辺にいた爺さんからコートを投げられて、その直後に、マリアは出し物の竜の口から噴出された「赤い水」を浴びます。このお祭りは「赤い水」を掛け合う、という不思議なお祭りで、その中に本物の赤い血が混じっていて、でも市民たちはそれに気が付かない…ということらしい。子供たちは実際の「赤い血」を見ても出し物の一環だと思ってしまいますが、マリアは異変に気付き、地面に転がっているのが変死体だということに気付きます。
マリアが仮面の男たちに襲われそうになるところで、カナンがマリアの腕を掴んでマリアを逃がします。カナンが橋から飛び降りるのと、カナンの咥えていたシュガースティックが地面に落ちるイメージが重なったカットが、躍動感があって素晴らしい。カナンはマリアを襲おうとしてきた相手を「愚かな人たち」と呼んでいます。カナンがマリアの腕を掴んで雑踏の中を走り抜けていくシーンは非常にスピード感がありますが、カナンはこの忙しいときにわざわざユンユンの店によってぬいぐるみを回収していきます。そしてまた走り抜けていって、マリアと一緒に物陰に潜みます。そしてカナンは、カナンとマリアが仲良くなるきっかけになった「あやとりの糸」でマリアを縛って、再び走り出してゆく。「疾走」と「停止」をせわしなく繰り返して、カナンのアクションシーンは進んでゆきます。


カナンは祭りの中で銃撃戦を繰り広げますけど、その最中に発現させた能力が「共感覚」…あんまり具体的にはどんな能力かわからないけれど、それを発現させてからのカナンの活躍は目覚ましくて、直接見えない場所にいる敵も次々と倒していきます。たぶん敵の位置が完全にわかっていて、向こうの撃ってくる弾道とかも全部分かっているのでしょうね。


今回はそんなところでしょうか。OPは上松さんだけど、EDはmyuさんなのか。myuさんのことはkukui以外での活動の様子をほとんど知らないんですけど。いちおう、原作のゲームは「原案」くらいのポジションで、岡田麿里さんのオリジナルストーリーになっているはずだけど、奈須さんの作品の匂いがぷんぷんしました。期待を裏切らない出来でした。次週…はすでに見ているんですけど、期待。