ノベル版 宇宙をかける少女 上巻

宇宙(そら)をかける少女〈上巻〉 (一迅社文庫)

宇宙(そら)をかける少女〈上巻〉 (一迅社文庫)

瀬尾つかさ氏による「宇宙をかける少女」のノベライズ。外伝とかというよりは、そらかけのストーリーを一から再構成しています。ナミさんの存在が消されて、獅子堂の姉妹が4人になっていたのは衝撃的でしたが、ナミさんは後ろのほうで神楽の妹という立場で登場しました。ノベルで展開されているストーリーは、夏休み中にレオパルドに拉致された秋葉さんが、最初にアレイダたちと戦った後に、10日余りのうちにほのかさんと一緒にパーツの回収作業をして、ネルヴァルと戦うという、おおざっぱにいえばそんな感じ。骨子はアニメと同じと言えなくもないでしょうが、10日の間秋葉さんが一度もカークウッドの実家に帰っていないのが決定的で、レオパルドと秋葉さんの関係がカークウッドやスール学園をすべて巻き込んでしまうアニメと異なり、ノベル版はカークウッドから切り離された場所で行われる秋葉さんのひと夏の冒険、とだいぶスケールが縮小されてしまっているのが、アニメのファンとしてはなんとも寂しい。まあそんな原作房のつぶやきはともかく、上下巻で充分に消化できそうな展開で、秋葉さんの心情描写がしっかりしているので、ノベルとしては上出来だと思います。逆にしっかりしすぎていて、レオパルドはちょっとツンデレなだけで気の効く良い人になっていて、秋葉さんも主体的に行動し知恵の回る賢い子になってしまっています。秋葉さんはなんとなくほのかさんに押されて流されていくところも好きだったんですけど、こうして見るとアニメでも、きっと秋葉さんは「わくわく感」を抱きながらほのかさんと行動していたんだろうなあ、と気付かされました。そんなわけで得るものも大きかったので、下巻も期待しております。
本音を言えば、本当は涼風涼さんに長編を書いてほしかったです。