宇宙をかける少女 第24話 「終末の呼び声」


今回も前回の最後のシーンを使って始まるアバン…というか、このスタイルが野村さんの脚本だと、第24話にしてようやく気付きました。イモちゃんが死んでいないとクサンティッペはいい、続けて、「だいたい考えてみなさいよ。あんなチンケな乗り物で体当たりして防げるミサイルじゃないでしょ。あれは、ネルヴァル様のカテドラル・ベンディスカが撃墜したの」とサラッと言ってしまいます。まあ、言っていることは最もなんですが、どうにも納得がいかないというか。まあここはスルーすることにしましょう。結局、どうやらイモちゃんをネルヴァルの側に送り込むのが目的のようですから。秋葉さんはアレイダの手に抱えられたイモちゃんの映像を見て、「助けに行かなきゃ!」と思い立ちますが、風音さんが立ちふさがって秋葉さんを止めます。その間、レオパルドは本来の力を取り戻して、向かうところ敵なしに見える自分に酔い、調子に乗っていますが、ふと「妙な敗北感」を感じることに気付きます。すると、青い眼をしたもう一人のレオパルドが横に現れて、「お前は敗れたのだ。世の中にな」と告げられ、レオパルドは眼をむきます。


「えにぐま」の一室で目を覚ましたイモちゃんは、自分が死んだと思いこみ、「天国ってずいぶんとレトロな感じなんですねー」というセリフを最初に言います。隣にナミさんが寝ているのを見ると、ナミさんまで死んでしまったのかと思ってしまいますが、部屋に入ってきたネルヴァルが「死んではいない。君もな」と誤解を解きます。ネルヴァルはイモちゃんに「君のおかげでカークウッドへの被害が最小で済んだ」と言うんですけど、これは2割くらい本当で、8割くらい嘘ですね。結局ミサイルを止めたのはネルヴァルであって、イモちゃんの力というのは少しも寄与していないから8割嘘なんですが、ネルヴァルを動かした原動力の一端はイモちゃんの決死の行動だったという点で、間接的にイモちゃんの働きが関与したと言えなくもない。でもそういう意味ではなくて、ネルヴァルのこの言葉は純粋にイモちゃんの勇気に敬意を表した言葉と取るのが素直かもしれません。
イモちゃんを助けに行きたい秋葉さんは、風音さんに監禁されてしまいます。風音さんはエリカとリリーに鍵を渡して監視をまかせ、リリーたちはなすがままに鍵を受け取りながらも、中にいる秋葉さんが不憫で、「いいのかな…?」と思ってしまいます。秋葉さんが扉をドンドンと叩く音が、夜の闇に包まれたレオパルドの中で虚しくこだましています。
青い目のレオパルドはレオパルドに向かって、「俺はお前の中の本当のお前、プリンス・オブ・ダークネス」と名乗ります。本来の力を取り戻して調子づいているレオパルドに向かって、次のように言います。「今ある姿は、本当にお前が望んだものなのか?人のいいなりになり、駒とされていてよいのか?本来のお前は、愚かな人類の頭上高くに君臨する存在のはず。思い出せレオパルド、破壊の帝王よ。かつて世のすべてを圧倒的な力と恐怖の中で支配した恍惚たる時を」。レオパルドが我を忘れてこの言葉に聞き入っている様子が、紅茶を入れようとしてティーカップにそそいでいた水があふれてくるカットで表現されています。福山さんはこの2人のレオパルドを演じ分けようとして、青い目のほうはフォンに近い声になってしまっていますね。まあ、3役も演じ分けるとなるとなかなかしんどいんでしょうが。
カークウッドにいるイモちゃんは、先程の人物がネルヴァルであると知って非常に驚き、またネルヴァルが自分を助けてくれたことを不可解に思っています。「君の勇気ある行動が私を動かす理由の、一部になった」とネルヴァルが言っていますが、先程ふれたとおり、これが間接的にせよイモちゃんがカークウッドを救ったという実情。イモちゃんはキョロキョロとあたりを見回して、コルクボードに張り付けてある神楽のメモ書きを見つけます。この表に何が書いてあるのかが非常に気になっているんですが、結局今回もそれは見せてくれません。ネルヴァルはイモちゃんに興味を持っていろいろと質問をしますが、その間に、高嶺さんとの戦闘で意識を失っていたナミさんが起き上って、下の階に下りてきます。


いつきさんは秋葉さんが閉じ込められなければならないのが理不尽に感じて、風音さんに食ってかかりますが、今はどうしても秋葉さんにレオパルドのそばから離れてもらうわけにはいかないと言われて、俯いてしまいます。いつきさんはウルにも相談しますが、「ミス風音の言い分は正しい」と言われてしまいます。いつきさんは秋葉さんをぶったことを気に病んでいるらしく、秋葉さんを早くイモちゃんに会わせてあげたい、と考えています。前回いつきさんが秋葉さんをぶったあとに一瞬見せた気弱な表情が、いつきさんの本心だったわけですね。「レオパルドには秋葉が必要」というほのかさんにも、いつきさんは敵意に満ちた表情を向けますが、ほのかさんは「でも、秋葉にはイモが必要」と理解を示して、いつきさんは笑顔になり、「相応の処罰は覚悟しています」とウルに言い放って、ほのかさんと一緒に秋葉さんを脱走させる作戦に取りかかります。
ネルヴァルはイモちゃんのためにまんまる焼きを焼いてイモちゃんに出します。ネルヴァルは、人間を支配するには人間を知らなくてはならない、自分は君たちのプロフィールやまんまる焼きの製法のようなものは知っているが、本当に知りたいのはそういったデータとはまた別のことだ、だからイモちゃんの話には大変興味がある、という趣旨の話をします。イモちゃんはネルヴァルの作ったまんまる焼きをおいしく食べますが、「まんまる焼きを食べていると、(秋葉)お嬢様を思い出します。お嬢様と食べるまんまる焼きが、おいしいんです…」と漏らします。「お嬢様のうれしいことは私だってうれしいです。お嬢様が悲しい時は私も悲しいです。一緒の気持ちなんです!」と言うイモちゃんを見て、ナミさんはくだらないと一蹴するんじゃなくて、少しは羨ましいと思ったんでしょうか。続くナミさんの「私は他人と接して、うまくいったことなんてなかった。ネルヴァルとかアレイダとかのようなモンスターの側にいるほうが、よっぽどまし。人類なんてクソくらえよ!」というセリフは、その羨ましさを翻したセリフと取るべきでしょうかね。そして「えにぐま」の固定電話のベルが鳴り出します。このえにぐまにおいてある電話というのは、ネルヴァルとレオパルドの「戦争」とは隔絶された「喫茶店」という場所において、唯一外の世界と繋がっているもの、という役割を与えられていますね。


秋葉さんがイモちゃんのことを心配して独り言を言いながら膝を抱えるシーンから、カメラが引いていって扉の前のエリカとリリーの姿に切り替わります。ブーミンが見張りの交代にやってくると、エリカとリリーはジトッとした目でブーミンを睨みます。エリカとリリーはずっと秋葉さんの独り言を扉越しに聞いていて、秋葉さんを閉じ込める風音さんたちに怒りを感じているんでしょうね。しかし今さらだけど、エリカとリリーがこんなにたくさん出てくるとは、初期のころには全く想像していなかったですね。いつきさんとほのかさんはどのように見張りを突破するかを考えていて、ほのかさんが「私のQTを使えばすぐ終わる」と言いますが、いつきさんは「ほのかさんの寿命を縮める訳にはいきません」と止めます。やはり、9話で少し明かされた如く、EX-QTというのは命を削って使うものなのか。いつきさんはいつぞやの首なし鎧をブーミンに差し向けて追い払おうとしますがブーミンはエリカとリリーの悪戯だと考えて、「怪奇課なめんなー!!」と二人で鎧に蹴りを入れて、鎧を追い払います。ブーミンの目元を陰で隠して、「フンッ!」と鼻で笑うカットが、なんとも笑える(笑)。いつきさんは今度は正直に話して分かってもらおうと、どういうわけか懐中電灯を取り出して、そいつで下から自分の顔を照らして、ブーミンに話しかけます。QTの証である目の下のクマとかが光の加減でいい感じにいつきさんの顔をゾンビっぽくライトアップして、ブーミンはこれには驚いて悲鳴を上げながら走って逃げていき、ついでに都合良く部屋の鍵を落としていきます。いつきさんの顔は、首なし鎧より怖いのか(笑)。茫然としているつきさんに、ほのかさんが鍵を拾って「グッジョブ」と短く言います。いつきさんたちは閉じ込められた秋葉さんを連れ出すことに成功しました。
ネルヴァルはお馴染みの部下3人とアレイダで会議を開いています。結局さっきの電話と言うのは、おそらくアレイダたちに呼び出されたものだったのでしょう。ネルヴァルはレオパルドとの決戦に備えるためにベンケイを呼び戻そうと、ベンケイに通信を入れます。ベンケイはネルヴァルにヘコヘコとしてその要請に応えようとしますが、横からつつじさんが「お断りします」と口を挟みます。つつじさんの一族は代々ネルヴァリストだったそうですが、つつじさんはその代表として「今のあなたは、私どもをかなりがっかりさせているようです。」とはじめ、「今のあなたは、昔話に出てくる人間になりたいブリキ男そのもの」「人類に媚びへつらっているようにしか見えない」と容赦のないことを言って、最後に「私たち人間はあなたが思っているよりずっと狡猾で悪意に満ちた存在。そんなものに担ぎあげられて今のあなたがいることをお忘れなく。三日天下にならぬよう気をつけることです。五十年前のように」と辛らつな言葉で締めくくって通信を切ります。部下の3人は最後の言葉に慌てふためいて、「私たちのマスターに対する忠誠は絶対に変わりません」と言い始めるものですから、この3人も腹に一物抱えている、ということですね。つつじさんの言葉はネルヴァルにも大きな衝撃を与えたようで、ネルヴァルはしばらく一人で考えたいと言います。この一連のつつじさんのセリフも非常にスカッとするセリフですね。つつじさんはやっぱり見ていて気分のいいキャラです。
ベンケイはつつじさんがネルヴァルに向けた傍若無人な言葉に我慢が出来なくなって、ネルヴァルのもとに帰還しようと進路を引き返しますが、つつじさんが隠し持っていたドリルのトリガーを引くと、ベンケイののこぎりが動き出してベンケイ自身に攻撃を始めます。つつじさんは「勝手な行動は許しません。自分ののこぎりに八つ裂きにされたくなかったら言うことを聞くのね」とベンケイを脅し、ベンケイが「お前は一体何がしたいんだ!いや、私に何をさせるつもりだ!」と訊かれると、「あなたを神にしてあげる」と大それたことを言います。つまりつつじさんは、自分と一緒に帝国を作ろう、とベンケイに進言していて、ベンケイはその言葉に魅力を感じ、納得してしまいます。ベンケイは、「最後に一つだけ、けじめをつけたいことがある」と言って、レオパルドのミラーも付いている尻尾が映されます。レオパルドから奪い取ったミラーを返したいと。
つつじさんの言葉を「えにぐま」で考えていたネルヴァルは「なるほど、ようやく理解した。私には結局、人間など理解できないということを」と、一番身も蓋もない結論を出してしまいます。それは一見、人類への決別のようなセリフにも聞こえますが、ナミさんに「こんな世界、何もかもぶっ壊してよ」と言われると、「いや、私とナミの考えもまた違ってしまっているようだ」「私の計画は世界の破滅のためにあるのではない。コロニーと人間との合理的な関係を極めるためにあるのだ」と言って、ナミさんに「君はもう十分働いた」とナミさんに決別を告げてえにぐまから去っていきます。結局ネルヴァルはこの前後で、考えを変えたのかそうでないのか、分かりませんね。ネルヴァルの目指す「コロニーと人間との合理的な関係」というのは、今まで通りノーマライズされた人間(フルカウル)とコロニーという関係のことなのか、そうでないのか。


いつきさんたちに連れ出された秋葉さんはQTアームズを置いてある場所まで走ってきました。いつきさんは秋葉さんをぶったことを気にして、「秋葉さん、私をぶってください」と言います。呼び方が「獅子堂さん」から「秋葉さん」に変わってますけど、これはたぶんここが初めてですよね。秋葉さんはそのことでむしろいつきさんに感謝していて、今日の件と一緒にいつきさんにお礼を言います。ほのかさんが赤面しながら「当然のことをしただけ。だって私たちは…ともだち…」と言って、秋葉さんが笑っているところに、風音さんたちの足が追いついて、風音さんは「友情ごっこはまた今度にして」と残酷なことを言います。秋葉さんは「そんな言い方ってない…ひどすぎるよ風音お姉ちゃん!!」と抗議しますが、これ以上の喧嘩にならないうちに風音さんにエルさんから連絡が入って、ベンケイがジャンプアウトしてきたといわれます。ベンケイはレオパルドが弱っているときに奪い取ったミラーを返しに来ていて、つつじさんはあきれ顔です。青い目になり、完全に「プリンス・オブ・ダークネス」に支配されたレオパルドは、「誰が、オレの名前を気安く呼んでいいといった?」とベンケイに言い、突然「剣」でもってベンケイに切りかかります。レオパルドの一人称も「ボク」から「オレ」に変わっていますね。レオパルドに切られたベンケイは炎上し、つつじさんは意識を失い、レオパルドは黒い羽根をまきちらしながらどこかへとジャンプしていきます。これがナミさんの言っていた「黒い神様」ってことなんですね。ナミさんが最初にこの言葉を発した時は、レオパルドの本来の姿を直感で知った、と考えればよさそうですね。風音さんたちは突然動き出したレオパルドに戸惑い、住民に避難命令を出して、動かなくなった電車の代わりに高嶺さんが車を飛ばしてきて、風音さんたちはその車でレオパルド前に向かいます。レオパルドのジャンプ先はカークウッド、とエルさんに知らされ、風音さんは電話でレオパルドに抗議しますが、レオパルドは「それが宇宙の頂に立つ者に対する口ききか?」と高慢に風音さんに言って、風音さんたちの車の進路を妨害してきて、高嶺さんが華麗にハンドルを捌いて障害物をよけます。レオパルドはクサンティッペが遺して行ったドローンまで使いだし、住民を恐怖で支配しようとします。レオパルドの人格変化は「剣」を突貫工事で装着したのが原因らしく、フォンはそのことで元老院の3人に抗議の声を上げます。フォンと元老院の連携が取れていなかったのも原因の一つのよう。
レオパルドはカークウッドに到着し、秋葉さんたちはレオパルド前に到着します。レオパルドの玉座を閉ざす扉を、ほのかさんがQTで開けようとしますが、扉は開かずにほのかさんは倒れます。秋葉さんはそんなレオパルドの対応に「いい加減にしなさいよ、バカパルド!」と怒声を上げますが、レオパルドは「相変わらず威勢がいいな。だが俺にはもうお前は必要ない」と秋葉さんに告げます。秋葉さんはレオパルドに必要ないといわれてショックを受けているよう。そして同じ場所にネルヴァルのカテドラル・ベンディスカもジャンプしてきて、レオパルドに挑発の言葉をむけます。レオパルドのことを「息子」と呼んでいたのは、まあ18話で張ってあった伏線があるのであまり驚きませんが、結局ネルヴァルとレオパルドがどういう関係だったのか、気になるところです。


そらかけも残り2回ですね。次週も期待。