宇宙をかける少女 第22話 「冥い旅路」


前回の復習から始まるアバンは、そらかけにおいてはとても珍しい。イモちゃんが特攻した後、秋葉さんをおさめたフルカウルをいつきさんが発見して、回収します。攻撃を受けたカークウッドでは、ネルヴァル頭脳体やクサンティッペと通信して幹部会議が開かれて、月への報復攻撃が決定されます。ナミさんはイグジステンズ立ちによって救出されたものの、依然昏倒したまま。近くにいたはずの高嶺さんはどういうわけか「捜索中」となっていました。もしかしたら、ネルヴァルの刻印を頼りに捜索していたのかもしれません。
秋葉さんを回収したいつきさんは、フルカウルをチェーンソーか何かで切断して中の秋葉さんを助け出します。秋葉さんは開口一番にイモちゃんの行方を尋ねますが、いつきさんはその質問に答えづらくて顔を背けます。話をそらすのに都合よく、クサンティッペの追撃が来て、一同はカークウッドに逃げ込みます。どういう経緯かは分かりませんが、一同は最後に末尾の脱出ポッドで不時着したのでしょうか、本体と末尾の部分は分離していて、両方ともネルヴァルのドロイドに取り押さえられています。ドロイドを振り切るために潜伏できる部屋を探して一同は逃げていきますが、秋葉さんは話を逸らされたことに我慢ならず、イモちゃんはどうしたのかともう一度尋ねます。そしていつきさんから、イモちゃんがミサイルに特攻して死んだと聞かされます。
イモちゃんを殺した張本人の月では、カークウッドを壊滅させたというネルヴァルが偽装した情報を真に受けて、次のステップとしてカークウッドを占領下に置く準備をしていますね。このウーレの人は中国語なのか何なのかよく分からない言葉をしゃべったあとに、手元の機械でそれを翻訳しているんですね。その辺でリアリティにこだわる必要はないといつも思っているんですが、このウーレ人の場合は何を考えているか分からないような感じが出ていて良いですね。ここにネルヴァルの報復攻撃の手が伸びてきます。カテドラル・ベンディスカがジャンプしてきて、一瞬で月面全体を氷漬けにしてカテドラル・ベンディスカはジャンプアウトします。何ともあっけなく月はやられてしまった。これで終わりなら、ウーレとかはただイモちゃんを殺すための要素でしかなかったことになってしまいます。
イモちゃんの死を知った秋葉さんは、しばらくの間「ウソでしょ?ウソでしょ?」っていう感じでしたが、いつきさんと生徒会メンバーの暗い顔をから、もう事実と受け入れるしかなくなって、叫びだしてしまいます。これ以降秋葉さんは無気力になってしまい、しばらく何もセリフをしゃべらなくなります。
ウィガールの頭部に乗って地球へと不時着したほのかさん。地球の獅子堂島付近の海に落下したところを、フォンのQTローズが岸辺に拾い上げます。フォンがコクピットを開けてみると、ほのかさんが操縦席にうつぶせになって気絶していました。


長い道のりを鈍行で進んできて、インスマス暗礁の付近までやってきた風音さんたち。長く暇な旅の間に風音さんはレオパルドとチェスをやっていたらしく、結果は風音さんの120連勝。盤面を見るとレオパルドのキングは裸で風音さんは駒を一個もとられてませんね。あんまり詰んでいるように見えないけど、チェスはルールからすでに良く分からないので深く突っ込まないでおこう。風音さんはレオパルドのあまりの弱さにキレて、「こんなんじゃクサンティッペにすら勝てないわね!」と。レオパルドはそのこじつけに反論しますが、「勝負という勝負にはすべて勝ちなさい!」と押し込められます。確かに関係はないかもしれないけど、レオパルドのあまりに情けない負けっぷりに心配になる気持ちも分からんでもないですね。風音さんとレオパルドの良く分からない問答が続きます。風音さんは、最初にレオパルドと会った時はレオパルドの言動を鼻で笑っていましたが、最近になって再会した時からは、レオパルドの情けなさに何度も怒っていますね。
生徒会メンバーと秋葉さん、いつきさんが逃げ込んだ部屋は、大量の箱人間が安置されている倉庫。19,20話あたりでネルヴァルとナミさんたちが来ていた部屋ですね。時雨さんはその光景を見ていてもたってもいられず、「どうやって助ければいいんだ」と無気力状態の秋葉さんを問い詰め、いつきさんにたしなめられます。「あなたも地球孤児ならわかるでしょう、家族を奪われた辛さが」といつきさんに鋭く言われて、時雨さんはそれ以上何も言い返せません。ネルヴァルのドロイドがしつこく追いかけてきて、時雨さんたちが身を隠すと、今まで生死不明だった獅子堂元老院の一人・賀統が声をかけてきて、奥まった場所に時雨さんたちを誘導します。
ほのかさんはフォンの根城のベッドで目を覚まします。「そろそろ寿命が尽きるころだと思っていたんだがな、まだ生きていたか」とフォンは言い、ほのかさんを作ったフォン自身も寿命のことを知っているよう。フォンは気を失っているほのかさんを保護したんですが、ツンデレにもそうとは言わず、「QTローズが反応しただけだ、ぼくには関係ない」と。ほのかさんが「迎えにきた」と言うと、「い・や・だ!」と拒否して、「いまのいままで行く気だったんだけどな。急かされてその気が失せた」とレオパルドっぽい子供じみたことを言います。ほのかさんは相手をするのがめんどくさくなったのか、その辺になぜかあったボーリングのピンを手にとって硬さを確かめ、「ぼくにはぼくのタイミングがあるんだ…」と話を続けるフォンを後ろからピンで殴ります(笑)。そのあとにほのかさんがピンを放り投げる仕草も笑えた。森田さんはこうしてギャグシーンをやらせると輝くよな…。ほのかさんはシャトルを呼びだして、意識が朦朧としているフォンをシャトルまで引きずっていきます。


いつきさんたちは賀統に部屋の奥へと案内されます。そこにあったのは箱人間たちの「葬儀場」。死亡したフルカウルの中身の人間を、赤い箱へと作り変える場所です。赤い箱は箱人間の脳と神経細胞でできていて、かぶった人間とQT反応を引き起こす機能がある。これがたぶんほのかさんが4話で涙を流していた理由でしょうかね。この赤い箱にはまだいくつか考えるべき項目が残されていて、たとえば第1話でほのかさんが箱の中に入っていた理由とか、月でこれと同じ箱を作っていたのはどういうことかとか。何も語られなかったら最終話まで見終わった後に考えます。いつきさんは「私の両親も、もしかして…」と不安になり、同じ境遇の時雨さんも顔をしかめます。さて、賀統たちはこの死者たちに紛れて、生きている箱人間を脱出させていたのです。ハコちゃんは賀統たちがネルヴァルの中に潜伏させた同志たちの一人だということも明かされますが、賀統が懐から取り出した赤い箱の破片は、ほかの「同志たち」のもので、ハコちゃんのものというわけではないでしょうね。ハコちゃんはクサンティッペの方に収納されていたわけですから。「ここで一人でも多くの人間を助ける。それがこの者たちの遺志を継いだ、わしらのの使命なのだ」と賀統は箱の破片を見つめながら語ります。
いつきさんたちは次に箱から助け出された人間が集められている場所に案内されて、l無気力状態の秋葉さんはそこで休まされます。そこにはフリオさんとネネコさんもいて、いつさんが話しかけると、「箱はどこですか?箱に戻してほしいです」「箱、箱、外は怖い」と、二人とも切実な目で箱を求めます。周りにいるスール学園の生徒も同様に淀んだ眼をしていて、さらに秋葉さんの姿が周りの「箱を失って無気力になった人間たち」と同化してしまっているのが印象的ですね。いつきさんたちは続いて「骸(むくろ)」についての説明をされます。本来ならば箱の中にいれば健康に過ごせるはずなのに、原因不明の死者が後を絶たない。そういった死者を骸と呼び、骸が今回助け出した人間の中にもあった、と。「それはあなたたちが知ることじゃないわ」とクサンティッペの声がして、換気扇が破られてネルヴァルのドロイドが顔を出します。クサンティッペは一応、今日のアバンでネルヴァルの指示を受け、秋葉さんの捜索をしていたんでしたね。賀統たちや生徒会メンバーが誘導して生徒たちを貨物船の中へと入れていきます。生徒会メンバーはしきりにせかしますが、箱の中に長くいた人たちは誰一人急ごうとはせず、無気力にのろのろと歩いていきます。そうしている間にもネルヴァルのドロイドが追いかけてきて、いつきさんは無謀にもそれに立ち向かおうと飛び出していきますが、時雨さんが突発的な行動に出たいつきさんを無理やり抱えて貨物船の中に押し込め、なんとか全員を詰め込み終えて貨物船は飛び立ちます。当然ゲートが開いているわけはないけど、賀統は爆弾を投げてコロニーの外壁を破壊し、宇宙空間へと出ていきます。外ではクサンティッペが待ち構えていましたが、そこにタイミングよくベンケイがジャンプしてきて、いつきさんはベンケイに回収してもらうように要請すると、ベンケイは、「え?ああ、わかった」と、あまり状況を呑み込めてないながらも適当に返事をしてハッチを開けます。しかしそこにクサンティッペがいることに気づき、「しばらく見ないうちに、反乱軍に寝返ってた〜なんてことはないわよね?」と言われてしまっては、ベンケイは「いや、そんなことはない…」と適当に返事をして、開けかけたハッチを再び閉め始めます。すると、つつじさんの虎柄のブーツがレバーを押し上げるカットが入って、ベンケイは急にチェーンソーを回しだし、クサンティッペに襲いかかります。つつじさんはベンケイの目の前に現れて「ベンケイ、この鬱陶しいブレインコロニーを排除しなさい」と、かつて仲間だったはずのクサンティッペを攻撃しろとベンケイに指示すると、ベンケイはしばらく迷った挙句につつじさんのほうを選んで、絶叫しながらクサンティッペに攻撃をします。続いてつつじさんはハッチをあけることをためらっているベンケイに対して、「受け入れると言った舌の根も乾かぬうちに全面を翻す。私の帝国に泥を塗るつもり?恥を知りなさい!」と叱責します。ここでつつじさんがベンケイを睨みつけるカットはすごく魅力的だ。つつじさんはここ数話ですごく清々しいキャラに成長しましたね。クサンティッペは激怒して尻尾でベンケイに攻撃してきて、つつじさんは無謀にもベンケイに受け止めろ、と言いますが、最終的に高嶺さんが尻尾を一刀両断して、ベンケイ達は助かりました。高嶺さんの乗るラーヴァナと賀統たちの貨物船を回収したベンケイは、つつじさんの指示でインスマス暗礁へとジャンプしてゆきます。インスマス暗礁にはレオパルドが姿があり、賀統たちが無事に合流できたことが分かります。最後にいつきさんが秋葉さんに「帰ってきましたよ」と話しかけると、秋葉さんが一言だけ「イモちゃん…」とつぶやいて、今週はおしまいです。


今週はまあ久々に評議会側の作戦がうまくいったので、見ていて気分がよかった。まあ、ベンケイがたまたまジャンプしてくるところとか、ご都合主義と言われればそうかもしれませんけどね。賀統たちがカークウッドを出てからベンケイに回収されるまでの一連のシーンは良くできていたと思います。次回は久々に樋口先生の脚本。次週も期待。


・前回の宇宙をかける少女 第21話について、補足
秋葉さんが箱に入っているシーンが全部で3回あって、2回目と3回目で「お腹がすいたけどどうしたらいい?」っていう同じことを扱っていますね。どうして同じことを繰り返すんだろう、前のシーンの続きということを強調するためかな?と最初は思っていたんですが、これは、2回目のときには「秋葉さんが箱の中の快適さを実感する」ということが主題になっていて、3回目のときには「秋葉さんが好きな食べ物をオーダーする」ということが主題になっているからなんですね。「好きなものを書けば出てくる」という他の箱からの返事が2回目と3回目で同じように出てくるけれど、秋葉さんの反応は微妙に違って、2回目は、「なんでも好きな物が手に入る。そっか、みんな困ってないんだ」とつながったのに対し、3回目は「私の好きな物…(はなんだろう)」とつながっていることから、それが分かります。


true tearsがBD化されるんじゃないかとちょっと前に話題になっていたみたいです。BDにしてほしいなあ。