宇宙をかける少女 第21話 「小さな勇気」


今回のアバンは月の行政府から。舞台となる場所を上空(というか宇宙空間から)俯瞰するカットから入るのは、そらかけでは割と定着した手法ですね。今回で名前が初めて出てきた月の管理局司令官・山際くんは、月の総統に向かって、カークウッドに対し侵略行為をはたらいたことについて異議を申し立てています。月はウーレと手を組んでいたんですね。総統が言うには月が攻撃される前に先に手を打ったと。個人的な感想を言えば、悪役面していますがまあ総統の判断は尤もで、責められるべきものではないと思うんですがね。一方で山際くんがここまで食ってかかるのは風音さんへの個人的な思いがあって、風音さんに何かあったら嫌だと思っているからですね。風音さんと接触するまでは大してカークウッドなんかに興味を持っていなかったのですから。山際くんは風音さんとの密談を盗聴されていて、それを理由に逮捕されてしまいます。そして月から何やら発射されるカットになりますが、これが今回の終盤でイモちゃんを殺した「反物質ミサイル」ですね。

今度はステルス状態のレオパルドコロニーの俯瞰から入ります。風音さんたちは「剣」を手に入れるために「インスマス暗礁」に向かっているのでした。エルさんがインスマス暗礁について説明しているけど、何度聞いてもなんて言っているのか聞き取れないなー…サルガッソーって言ってる?とにかくその「宇宙の産業遺産」で剣を捜すわけですけど、長老たちが(元老院の3人)がいなくて手がかりもないので、何とか気合いで探すという程度の方針しか立っていません。レオパルドが秋葉さんが早く見つからないかと気を揉んでいますが、風音さんはそんなレオパルドを怒鳴りつけます。風音さんも秋葉さんの行方が気になっていて、今回はやつあたりをしているように見えますね。
クサンティッペコロニーの俯瞰から入って、秋葉さんとイモちゃんの様子が映されます。「イモちゃん大発見!!」「」ジュースが出た!!」と、秋葉さんはフルカウルの新機能を発見します。さらに欲しいものは何でも出てくると知り、秋葉さんは箱の中の居心地がいいと感じ始めます。クサンティッペは秋葉さんのその様子を見てしたり顔。ところで、秋葉さんがジュースを飲んでいるのを下から覗きこむカットはなんかエロかった。
プロキシマリングを追って太陽までやってきたベンケイとつつじさん。つつじさんに「太陽に突っ込め」と言われてベンケイは「獅子堂総帥にまんまと乗せられ、なす術もなかった」つつじさんに猛抗議しますが、つつじさんは「違うわね」と言ってまた神がどうしたという独自の電波理論を展開。これは13話のときにはカラスの鳴き声からギャグなんだなあと分かったわけですけど、これだけのシチュが整っていれば、今回つつじさんはガチで言っていると考えるしかないな。これはやはり、つつじさんの持つ「哲学」なのか。つつじさんが「どのみちもう引き返せないわ。神を試しに行きましょう、ベンケイ!」と言った時は非常にすがすがしい顔をしています。「私は今、最高に生きている!」と叫びながら両手を広げて太陽のプロミネンスを火の輪くぐりするつつじさん。この数カットは鳥肌が立つくらい良かった。最終的にベンケイは、なんとかプロキシマリングを回収して離脱するものの、コロニーの外壁に空いた穴からつつじさんがどこかへと流されてしまいました。


次はカークウッドに秋葉さんの捜索に向かっている生徒会メンバーといつきさんです。時雨さんはいつきさんに「潜入のスペシャリストと一緒なんて、頼もしい限りだ」と皮肉を向けますね。いつきさんの変装はバレバレでしたから。するとウルが怒って銃を向けてきて、時雨さんはおとなしく座ります。いつきさんが「アースオーフェン教育機関には、あなたみたいな馴れ馴れしい人はいません」と時雨さんに言うと、時雨さんは「アースオーフェン」という言葉に反応し、自分も地球孤児だったということを明かします。時雨さんは地球孤児なのはあらすじで知ってたけど、それ以上話が発展しないのは残念だなあ。
箱の中の居心地の良さが分かった秋葉さんは、「どうしてみんな箱の中から出ないのか、分かった気がする。ここに入れば好きなものだけ見ていればいい。聞きたくない言葉は聞かなくていい…」とイモちゃんに伝え、それでも引き留めるイモちゃんに向かって、「うるさい」と言い、チャットに専念しだします。
さて、このシーンとその前の秋葉さんのシーンでは箱の中から出たがらなくなる理由付けを行っているわけですね。もし最終的に秋葉さんを脱走させるなら、別に秋葉さんにも居心地がいいと感じさせる必要はないけれど、ネルヴァルのある種の正義を理解してもらうためには、主人公の秋葉さんに実際に箱に入ってもらって、「ああ、本当に居心地がいいんだ」と一瞬でも感じでもらうことが効果的だったわけです。


前回肩を刺されたナミさんは、包帯を巻かれた状態で、見知らぬ場所で目を覚まします。ナミさんの服とかが丁寧に畳んで置かれていて、ナミさんが服を着て階段を降りると、(我々にとっては)見慣れた「えにぐま」の風景が。そこではネルヴァルがナポリタンを作っていて、その様子にナミさんは戸惑います。出来上がったナポリタンをナミさんが食べて「なにこれ、超まずい」と。でもネルヴァルにとっては普通の味のよう。ナポリタンと言えば思い出すのが、秋葉さんたちが17話で「えにぐま」の話題になった時に、ほのかさんが「ナポリタンはまずかった」と言っていたことですね。その時のナポリタンの味というのは、こうしてみると実はネルヴァルの作った味だったのかな…と思ったら、ネルヴァルは「レシピ通り作っただけ」だから違うか。アレイダが店の中に入ってきて、「この姿はエニグマには似合わないようですね」と言って装甲服を外し、いつも秋葉さんの夢の中に出てくる格好になります。神楽は今でも秋葉さんと同じリストバンドをしていますね。この店のナポリタンに慣れ親しんだ神楽は「ちょっとしたコツがあるの」と言ってナミさんとネルヴァルのナポリタンにタバスコや粉チーズとかを煙の立つほど振りかけます。変身後のナポリタンは見た目はひどいですが、実際に食べてみるとおいしくて、ナミさんだけでなくネルヴァルも納得。
Bパートに入って、ナミさんたちはナポリタンを食べ終えて、コーヒーを飲んでいるんでしょうかね。冒頭でさりげなく映ったけど、神楽が「リクエストボード」に張ったメモはいまだに貼ってあるまま。神楽がこれをはぎ取らずに残してあるということは、さてどういうことでしょうかね。ナミさんはコーヒーに砂糖を山盛りに入れる癖も相変わらずです。ナミさんはネルヴァルと向かい合って食事することを「緊張する」と言っていました。獅子堂家ではみんな壁に向かって別々のものを食べると。そうだった覚えはないけど、ナミさんは確かに獅子堂家のリビングでカウンターに座っている印象が強いですね。ナミさんはもう一人の「宇宙をかける少女」秋葉さんを連れてくるといわれて、反発してえにぐまを飛び出していきます。ナミさんが外に出るとハッとして、「何なの…ここ」というセリフが入りますが、結局えにぐまの外装だけ映されてえにぐまがどこにあるのかという重要な問題の答えはすぐには出ません。しかし、すぐ後にナミさんがプリマ・ヴェーラに乗って飛び出して行った際に映る氷漬けの風景から、ネルヴァルの新しく作ったボディ「カテドラル・ベンディスカ」に置かれているということが明かされますね。


箱の中の秋葉さんは、イモちゃんの声を無視してチャットに専念しています。お腹のすいた秋葉さんは、何か食べるものを注文しようとして、手が止まります。その時外から「お願いですお嬢様、一緒に、まんまる焼き、食べましょう…」というイモちゃんの声が届いて、秋葉さんは「まんまる焼き」と打ってみます。でもまんまる焼きは出てこなくて、他の箱たちからはバカにされ、秋葉さんはそこでふと、箱の外のイモちゃんの存在を思い出します。「まんまる焼食べたい。イモちゃんと一緒に」と秋葉さんが打って、秋葉さんとイモちゃんは箱の内側と外側からディスプレイ越しに頬を寄せ合います。その様子を他の箱からは「なんだこいつキモい」「変なやつ」「理解不能」と言われ、もはや他の箱の言っていることが間違っていると気づいた秋葉さんは、箱から出る決心をして箱を強く叩くと、何やら異変が起きて「復旧コマンド入力」と8文字のキーワードを打つ画面が表示されます。秋葉さんは試行錯誤の末、「宇宙をかける少女」と打つと、箱が操縦できるようになります。それに反応して警備用のドロイドが反応してきて、秋葉さんはその追跡を振り切るようにイモちゃんの指示で箱を操縦していきます。秋葉さんたちはドロイドの追跡を振り切り、以前ナミさんとアレイダがクサンティッペコロニーにやってくるときに使ったカプセルを見つけて、クサンティッペから脱出することができました。
うーん…さすがにこれだと、秋葉さん何がしたいの?って言われても仕方ないかもしれない。秋葉さんが箱に入って、気持ち良くなって、でも復活するっていうアウトラインは良いんですけどね。うーん…野村さんは18話の時は神だと思ったけど、一歩間違えるとこうなるのか。テンポを良くするために心情描写を削るっていうのはそらかけのスタンスでしたが、ここは心情描写を中心に据えたシーンだったはずです。まあ、細部と言えば細部だし、良いですけど。
地球に向かっていたほのかさんは高嶺さんに発見されて、「このシャトルだけでも地球に送る!」と言ってQTアームズに乗ってシャトルを飛び出します。フォンが宇宙に来るためのシャトルを送り届ければよいっていうことでしょうかね。ほのかさんと高嶺さんが派手に火花を散らして戦っているのを遠目に見ながら、シャトルが地球にまっしぐらに進んでいきます。ほのかさんはなんとか高嶺さんに一撃を見舞い、とどめを刺そうとしたところで、横からナミさんの攻撃を受けます。ナミさんはプリマ・ヴェーラだけでQTアームズ相手に戦えるのか、強え(笑)。ほのかさんは仕方なくQTアームズを棄て、頭部だけ離脱して地球へと向かいます。ほのかさんを撃破して調子に乗ったナミさんは、今度は高嶺さんに喧嘩を売りますが、左肩の傷が痛んで、その隙に高嶺さんの攻撃を鳩尾に食らいます。気を失ったナミさんから緑色の光が広がって、それに飲み込まれた高嶺さんの、首筋にあるネルヴァルの刻印が消えていきました。これは何が起こったか全く分からないけど、きっと正気に戻った高嶺さんが次回説明してくれるでしょう。
クサンティッペから脱出した秋葉さんとイモさんが最初に見たものは、カークウッドが無数のミサイルによって攻撃される姿。これはウーレと結託した月からの攻撃で、クサンティッペはミサイルを退けるために、ネルヴァルの指示でエクスクルーシヴ・コントロールを発動します。ミサイルの軌道は乱雑に逸れていきましたが、その影響を受けなかった反物質ミサイルの脅威が続いて襲ってきます。クサンティッペはこれに対処することができず、代わってイモちゃんが、秋葉さんを外に出したあと、ミサイルに向かって特攻していきます。
なんて死に方だ…と思わなくもない。ちょっと今回の最後についてはコメントを控えます。


さて、つつじさんは次回予告でいたけど、あらすじを読む限りイモちゃんはしばらく死んだ扱い。まあ、柴さんが公式に上げた文章を読む限り、たぶん最終話あたりで復活するんでしょうけど。次週も期待。


・昨日ブルーレイの2巻が発売しました。まだ届いてないけど、今日中に届くはず、です。あとドラマCDが今日発売しました。両方ともレビューを上げる予定です。今日中に両方は上がらないでしょうが。