宇宙をかける少女 第16話 「わだかまる宇宙」


アバンでは久々に登場したフリオ君とネネコさんの視点で、スール学園内部の状況が説明されます。スール学園ではシャッターが降りて通路が閉鎖され、携帯電話も通じず、フリオさんたちは完全に外の世界から隔離されています。しかし、フリオさんたちは食料に困ることなく、今日もネネコさんが購買部から買ってきた焼きそばパンを食べることができていて、フリオさんはその奇妙さに気付きます。「焼きそばパンと、抹茶ココアオレなのです♪」と言って笑顔になるネネコさんが可愛いですね。フリオさんが窓の外に目を向けると、大量の箱人間が行進している異様な光景が目に入り、そして授業をしにやってきた教師も箱に入っていて、フリオさんたちは目を丸くします。箱人間が日常化しつつあるというのがカークウッドの現状、と分かればいいでしょう。


Aパートでは今度は生徒会メンバーとエミリオさんの視点から、やはり学園島の様子が紹介されます。彼らがいるのは学園島の出入口で、一話で秋葉さんが学生証を忘れて入構に手間取った、そのあとナミさんが追いかけてきてやはり入れずに風音さんに連絡が行った、あの場所です。彼らはコロニー外に脱出しようとしていて、トラックのコンテナに隠れて外に出るという作戦を考えます。ユーリさんがバラをかざすと、おそらくQTの力によってコンテナのロックが外れます。コンテナの中には大量の箱が積んであって、エミリオさんたちは驚きます。そこに警備のロボットか何かがやってきて、エミリオさんと真宮寺さんに逮捕状が出ていると通達されます。昌さんが(2話でほのかさんに向かって投げた)投げナイフのようなものを投げると、ロボットから槍が伸びてきて昌さんの体を貫きます。久々の登場でいきなり殺すとは何事だと思ったら、昌さんは実はナビ人で、貫かれたのも交換可能なメイドロイドだったのでセーフ。結局真宮寺さんたちは、ユーリさんがゲートの施錠を外し、その辺にあった車を奪取して昌さんの運転で宇宙空間へと脱出することができました。この宇宙船は今まで出てきたのと比べてかなりCGっぽいですね。
真宮寺さんたちが宇宙空間に逃げても、ロボットたちは依然として追いかけてきます。そこにICPのQTアームズとリモートアタッカーが援護にやってきて、真宮寺さんたちをブルーバードモールへと誘導し、ロボットたちと応戦します。しかし、ロボットたちが「エクスクルーシヴ・コントロール」の簡易版のような電波を出すと、QTアームズのコントロールが利かなくなり、リモートアタッカーは味方に攻撃を始めて、QTアームズは大破し、首根っこをロボットに掴まれて連れ去られます。真宮寺さんたちは素早くそこから脱出していて、それを遠巻きに眺めるだけで済みました。真宮寺さんたちが去って行った宇宙空間の果てから、クサンティッペのコロニーがワープして来ます。
生徒会メンバーが久々に活躍して、今更ながら設定が紹介されましたね。あんまり考えたくないけど、シリーズ構成が途中で交代したことで宙に浮いたキャラたちだったんでしょうか。学園島から脱出してきたのは生徒会メンバーとエルさん・エミリオさんくらいなので、今後はもうちょっと重要な役割を担うかもしれませんね。


クサンティッペコロニーに乗って、アレイダとナミさんはカークウッドに、ネルヴァルと面会しにやってきました。ナミさんは「ネルワル?」とか言っていて、やはり秋葉さんと同じ血統なのかと思ってしまいました(笑)。カークウッドでは先ほど真宮寺さんたちが見つけたトラックと同種のものが走り回っていて、コロニー内の環境変化に対応するため、生命維持用パーソナルコロニーを無償で提供しています、という旨のアナウンスを流しています。ネルヴァルたちは箱を「生命維持装置」として配って、住民を箱人間に変えていたんですね。首相官邸で「人型」のネルヴァルが部下たちから報告を受けていて、全住民の30%を箱人間へと変えたと報告されています。フェイズ2とか3とかが何なのかは依然としてわかりませんが、ネルヴァルは、イグジステンズを使って強制的に住民を箱に収める(テラ・アブダクションとおなじ)のではなく、住民たちを説得により自ら箱に入ってもらうのが理想的だ、という趣旨の発言をしていて、部下の人たちもそれに同意しています。そこにクサンティッペから連絡が入り、次にナミさんが登場するというところでいったん場面が変わります。
ここで、一度ネルヴァル側の目的を整理してみましょう。ネルヴァルが住民たちを「箱人間化」して自分の統治下に置こうとしているのは、究極のところは「コロニーの本能」、人を住まわせたいという欲求から発しているんでしたね。ネルヴァルはそれだけではなくて、住民たちを統治し、住民たちに平和と安寧をもたらそう、というところまでその欲求を昇華させているのですね。今のところは、ネルヴァルにはそれ以上の悪意は無いように思えるのです。


今度は月の管理局に焦点が当てられます。カークウッド以外にもたくさんコロニー群はあるんですけど、表だって出てきているのはこの月の管理局くらいなものですね。月の管理局が映される時は、「カークウッドの外部」の代表として出てきているんだと思ってかまわないでしょう。この管理局長っぽい人は、機密文章となっているネルヴァルの声明を盗み見て、謎の事件が次々と起こっているカークウッドの状況を把握しようとしています。「アブソリュート・ブレイクスルー・コントロール」を持ちながら、反政府組織にコロニーを乗っ取られて新政府を樹立されてしまったことに疑問を抱いていますね。また、12話で姿を消して以来消息不明だった風音さんの生存がここで確認できます。月の管理局での会話を、カップラーメンをすすりながら盗聴していて、そのシュールな光景に笑いがこみあげてきますね(笑)。
ブルーバードモールでは、昏睡状態にあったエルさんが意識を取り戻します。目を覚ますとニーナさんがたばこをくわえていて、二人は旧知の仲らしく、エルさんはニーナを認識すると驚いて飛び起き、傷を痛めてニーナに寝かされます。エミリオさんと生徒会メンバーも無事にブルーバードモールに到着し、メイドロイドを破壊された昌さんは、どこからか闇市に流通したイモちゃんのメイドロイドに渋々と乗ります。エミリオさんも姉のエルさんと再会を果たし、同時にこちらもあまりよくない知り合いらしいニーナと再会して気まずい顔をします。
ナミさんとネルヴァルが面会するシーンに戻ります。人型のネルヴァルと対面したナミさんは、「ネルヴァルって、クサンティッペみたいにデカい機械じゃないの?」とアレイダに聞き、「人と接するときには、人と同じ姿をとる」と説明を受けます。するとナミさんは「な〜んか気に入らない」と調子に乗り始めて、「人類を支配しようとしているくせに、人間に妥協してんだ?」と何様な発言をします(笑)。ナミさんも大概ただ流されてここにいるだけのクセにすごいセリフを言いますね。ネルヴァルの背後に高嶺さんが降りてきて、ナミさんは驚きます。ネルヴァルによると、高嶺さんはネルヴァルのボディーガードとして働くために「その機械(=高嶺さんのQTアームズ)と一体となった」と。「人類なんてクソくらえよ」というナミさんと先ほどまとめたネルヴァルの目的は相反するように思えるのですが、ネルヴァルは「ナミ、君が思うままに行動してればいい。それが新しい世界のためになる」と言っていますね。最後にナミさんは、ネルヴァルに操られるだけの機械と成り下がった高嶺さんを見て「ざまあないわね」と嘲笑っています。


さて、ここまでがカークウッド周辺のお話で、ここから先はずっと秋葉さんたちのお話です。今まで自由奔放に場面が切り替わって視聴者を混乱させ続けてきたそらかけですが(笑)、今週は珍しく前半と後半で内容を二つに分割し、それぞれでまとまった内容をやるというスタイルを採っています。おかげで今回は分かりやすかったけど、そんな今までのそらかけも好きです。失神していた秋葉さんは、イモちゃんに頬を引っ張られて目を覚まします。目を覚ました直後のこのポーズは萌えますね。秋葉さんはイモちゃんとひとしきり無事を喜んだあと、「いつもごめんね。あたしが変なことに巻き込んじゃうせいで」と謝ります。いつも言っているような気もするセリフですけど、やはりちょっと声色が違う気がするのは気のせいではないと、しばらく見ていくと気付きます。「早く帰りましょうね。カークウッドへ。」とひとしきり話がまとまってから、「って、どこだろ、ここ?」と秋葉さんが言うと、「普通そっちの問題が先では…」とイモちゃんが突っ込みを入れます。おおお、珍しくそらかけで突っ込みが入った(笑)。いつきさんから連絡が入り、ほのかさん・いつきさん・桜さんもみんな近くにいることを確認します。そして秋葉さんはようやく、自分たちが木星まで流されてきたことに気づき、「なんだ木星かー…って、ええぇー!」と一瞬遅れて驚きます。
そらかけの世界では地球から木星まで一瞬なのかー、とCMの間思っていたら、「ここからカークウッドまで、少なくとも5年はかかるぞ」とウルがCM明けの最初に言っていました。いつきさんはピンセットで宙に浮かぶ不思議な物体を採取していて、それはフォン博士から託されて、今では枯れてしまったQTローズの破片で、テラ・アブダクションをめぐる手がかりの一つとして集めています。「鑑識に渡るのも5年後だがな」とウルが水を差して、いつきさんは気分を害しています。「すごいなあ、いつきちゃんは。いつでも仕事のこと忘れてないんだもん」と秋葉さんは言っていますが、仕事のことというのはちょっと違いますね。いつきさんはこのあたりから少し様子がおかしい。またレオパルドは前回神楽に「嫌い」と言われたのがトラウマになったようで、神楽の顔を思い出してはビクビクしています。
秋葉さんたちは船に積んである大量のピザを食べ始めます。またピザハットかよ(苦笑)。桜さんが宙に浮いているピザにかぶりつくところが可愛い。よく見るとみんな哺乳瓶みたいな容器で飲み物を飲んでいますが、桜さんだけ妙に似合っていますね(笑)。いつきさんは「テラ・アブダクションの情報を一刻も早く本部に伝えなければいけない」と焦り始め、桜さんにスピードを上げられないか尋ねますが、「無理、ぱたぱた、ずっぽ〜ん」と言われます。ほのかさんから、クサンティッペのジャンプの影響で木星まで飛ばされてしまった、言い換えればクサンティッペコロニーに近づかなければ木星まで来ることはなかった、と言われ、秋葉さんは自分のせいだと思ってしまい落ち込みます。秋葉さんがネガティブになるところは注意しよう、と前に自分で書いたのでちょっと考えてみます。一番直近の伏線は、ほのかさんに秋葉さんの「心の闇」を指摘されたことがありましたが、そのときに言っていたのは、秋葉さんにはどうしようもないことでも「自分のせい」みたいに考えてしまう悪い癖がある、ということなのでしょうかね。いつきさんにナミをアレイダの仲間と言われて、秋葉さんはとっさに否定しますが、やはり思い返すに認めざるを得なくて、「神楽さんが、ナミや箱ちゃんを…」と言うと、今度はほのかさんが、「あれは神楽じゃない」と否定し始めます。こうして否定の連鎖が続いていって、ほのかさんといつきさんは喧嘩になります。ほのかさんがアレイダを神楽じゃないと思った理由は(認めたくないだけじゃなく)さらにあって、神楽さんはすでに死んでいて、レオパルドコロニーの中に墓標があるからですね。秋葉さんが「喧嘩しないで!」と二人の間に割って入ると、いつきさんは今度は秋葉さんにかみつき始めて、秋葉さんの行動はいつも思いつきで、計画性がない。秋葉さんがあのコロニーを追いかけたことで、こんなことになってしまった、と言い出します。秋葉さんもさすがに怒って、「いつきちゃんって、自分のことしか考えてない」「妹を連れていかれちゃったんだよ。いつきちゃんなら分かるよね。両親をさらわれてるんだから!」。二人がにらみ合って緊張も極限に達したところで、つつじさんが空気を読まずに割って入ってきて「この船は私たちがいただきます」と、船を奪ってもどうしようもないのにそう宣言します。ところが桜さんが「んー?」と振り向いただけで秋葉さんたち3人はつつじさんを空気か何かだと思ってガン無視、そこでつつじさんは今更ながら木星付近にボアシップがいることに気づいて、「木星ですって!ふざけないでよ!」と捨て台詞を残して去っていきます。回を追うごとにどんどんひどいキャラになっていきますね(笑)。


桜さんは3人の気まずい空気とも無縁で、「ああー!わくわくぼんぼん、みーっけ!」と、超人的な視力で木星付近をレオパルドコロニーが漂流しているのを発見します。この、指をさしている桜さんも可愛い。レオパルドコロニーがこんなところに合った理由は、非常用帰還システムで「故郷」へとワープしたから。「木星は、私とレオパルドが眠っていた場所」とほのかさんが言います。へぇー。秋葉さんとイモちゃんは、レオパルドコロニーが地球に墜落していなかったことにホッとして、レオパルドコロニーの玉座にレオパルドを戻します。レオパルドは挙動不審で、「そうか、もう見つかっちゃったのか」ときょろきょろしながら言っています。アレイダたちのQT思考干渉の成果が如実に出ていますね。一同はQTアームズに乗ってレオパルドコロニーの内部に向かいますが、ほのかさんだけが途中で向きを変えて別の場所に向かいます。レオパルド本体も玉座に設置して、秋葉さんは腰をおろして「なんだか疲れちゃった…」とため息をついています。
いつきさんはいつぞやの図書館の前に座って、秋葉さんにやつあたりをしてしまったことを悔やみ、落ち込んでいます。いつもならウルが励ましてあげるところかもしれませんが、図書館の奥からガシャン、ガシャンと鈍い音が聞こえてきて、いつぞやの首なし甲冑の亡霊がいつきさんの隣に現れ、そこに腰をおろします。甲冑はいつきさんの頭をなで、肩をポンポンとたたき、自分の胸元に抱き寄せます。いつきさんは堪え切れず鎧の胸元で涙を流します。ここのいつきさんはそれはもう可愛くで、普通の恋愛モノならば名場面になりうるんでしょうが、所詮相手は鎧のお化け。「化け物に励まされてどうする」とウルが的確に突っ込みを入れます(笑)。普段突っ込みなんかほとんどいれないのに、ここでウルに突っ込みを入れさせたのは本当にあざとい。感心しました。ここまでいつきさんに(相手が鎧であることは忘れて)共感できていたというのに、カメラを引いてウルの突っ込みを聞いてしまったからには、思わず笑わずにはいられないギャグシーンになり下がってしまいました。さすが、そらかけの脚本。この手のシーンは一瞬たりとも存在しえずすべてギャグシーンへと崩壊させるんですね。
ほのかさんはどこに行ったのかというと、一話で秋葉さんが墜落した近くの墓標の元に行って泣いています。そうか、これは神楽の墓だったんですね。
一方で、秋葉さんとレオパルドも喧嘩になります。秋葉さんが「もう何も考えたくないよ…」というと、レオパルドが「本当に傷ついているのは、ボクだ!」と言い出し、神楽への恨み事を一通り言ったあと、秋葉さんに対して、お前もどうせ後で裏切るつもりだろう、と言います。秋葉さんは「なによ!神楽神楽って。あんたと神楽さんのことなんか、知らないよ!」と。秋葉さんもここで気づいたんでしょうか。レオパルドが秋葉さんを通して神楽を見ていたことに。二人がにらみ合っていると外で轟音が鳴り響いて、秋葉さんは様子を見に行きます。外では雷鳴が鳴り響き、新しくなったエンディングテーマが鳴り出して終局です。
新EDはCeuiさんですね。MUNTOのEDも歌ってた気がしますけど、私にとってはCeuiさんの歌を聴くのは「sola」のED以来です。すでに長くなっていますけど、せっかくなのでEDの映像も点検しましょう。最初に移される3つの炎(=「魂」)は秋葉さん・いつきさん・ほのかさんの象徴ですね。秋葉さんたちはたがいに背を向けて氷の上に座っています。秋葉さんのもとには1つ、いつきさんのもとには2つ、ほのかさんのもとには9つの炎がありますね。いつきさんの炎の片方はウルで、ほのかさんの炎の8つは、8人のイグジステンズたちでしょうか。日が昇り始めて、誰かの手の中で炎が一つ消えます。金色のスロープを無数の炎が昇っていて、イモちゃんの影が空間を漂っていますね。この炎たちは箱人間の象徴であるのでしょう。イモちゃんが天まで昇っていくと、今までの神秘的なカットからうってかわって秋葉さんたち3人がゲームで遊んでいる様子に変わります。うーーん、どういう意味でしょう。最終話まで見てから考えますか。いい曲だと思います。「Espacio」はスペイン語で「Space」の意です。


最後に一応、秋葉さんたちが喧嘩してしまった理由を整理してみましょう。ほのかさんは神楽=アレイダだと知ってしまったショックと混乱、いつきさんはテラ・アブダクションに関する重要な手掛かりを得たにもかかわらずICP本部に戻れないもどかしさ・焦りが原因です。秋葉さんはただ喧嘩を吹っ掛けられて買っただけに見えますけども、秋葉さんにも「自分のせいではないか」というネガティブさが裏にあるわけですね。
次回は桜さんの帽子がしゃべり始めるそうです(笑)。それだけですでに面白そうだ。桜さん可愛いですね。次週も楽しみです。


・新OPはもちろん買いましたよ。菊田さんは相変らずいい曲を書きますね。「Love Jump」「Paradise Lost」「Sympathizer」「Miracle Fly」と、最近けっこう続けて菊田さんのシングルを買っている気がします。