バスカッシュ! 第2話 「レジェンド・イズ・デッド」


前回伝統的なBFBのスタイルに革命を起こして、「伝説」扱いされるようになったダン。ですが今回の副題は「レジェンド・イズ・デッド」なんですね。この「伝説」という言葉は、人々のダンへのリスペクトを表現していると同時に、ダンへの皮肉の意味も込められているわけです。それがまず今回の一つの主題ですね。
ダンはガンツに連れられて1年ぶりの街を歩きます。現在は主流となっている「ストリートバスケ」をやっているマシンが何機も見られ、子どもたちの中にはダンがBFBの公式戦に乱入し、ダンクシュートを阻まれて地面に激突したときの様子がプリントされたTシャツを着ている子もいます。子供たちはダンを見つけると、群がってきてサインをねだります。どこからかペンが投げ込まれてきて、ダンは調子に乗って子供たちのバスケットボールやTシャツなどに次々にサインをします。子供たちが去っていくと、ペンを投げ込んだ女性のファンが花束を持ってダンに近づいてきます。この子が「セラ・D・ミランダ」。彼女は「また会いましょう、伝説くん」と言って去っていきます。セラはファンの子供たちとは毛色が違いますが、ここまでが一応「伝説」が「伝説」らしい扱いを受けているシーンですね。
出所したダンはまずはじめに家に戻って、妹のココに会いに行きます。今のところダンは、一応ココを一番大事に思って行動していますね。ダンは照れくさくて妙なテンションの高さで一気にセリフをまくし立てますが、ココは全く表情を変えずに、長いセリフに飽きたのか徐々に扉を閉めていってダンを締め出します。ダンは慌てて「いろいろ心配掛けて悪かった」と扉をドンドンと叩きながらセリフを繋ぎますが、ココは扉を少し開け、手を伸ばしてきて、ダンの元に届いた請求書をつきつけます。ダンがBFB公式戦に乱入して出した損害額の合計、53億ローリン。ココはそれを投げて「私には関係ないから」と言って再び扉を閉めます。「兄ちゃんは伝説になったんだ」とダンが再び扉を叩くと、ココは今度はスパンキーを投げつけてきて、「ダンク外しても伝説なんだ…」と言い、ダンは愕然とします。手痛いセリフですね(笑)。ココにとってダンは伝説でも何でもないんですね。ダンは伝説の妹になったからって照れるなよなどと言って再び扉をたたくけれども、そんな言葉ではココは扉をあけてくれません。スパンキーとも1年ぶりの感動の再会ですが、ダンは話しかけてくるスパンキーを無視して、ココに振られたショックで一人落ち込んでいます。スパンキーは処分されずに済んだんですね。「伝説級」の借金を負ったダンの部屋は差し押さえられていて、ガンツは家を無くしたダンを一人置いて去っていきます。ダンの部屋だけ差し押さえられたってことは、ココとダンはアパートで別々の部屋に住んでいるんですね。
朝から夕方に変わるくらいの時間が経過して、ダンはようやくアパートから出てきます。ダンがセラからもらった花は、ちゃんと活けてココの部屋の前に置いてきました。
ココが事故に遭った時の回想が入ります。ダンとココが、前回ダンがひたすらシュートを繰り返していた広場で、バスケットボールをしています。ダンはココから強引にボールを奪い、ダンクシュートを決めようとしますが、ゴールまで手が届かずに、ダンはバランスを崩して地面に落下します。ココはダンが放り投げたボールを拾おうとして、近くを歩いていたビッグフット(広場の近くで工事をしていたビッグフットでしょうか)に踏みつけられ、第1話でも出てきた、ココが脚を抱えて泣き叫ぶシーンにつながります。どう見てもこれはココを踏みつけたビッグフットの不注意が原因ですが、ダンは「自分がダンクを外さなかったら…」と考えて、今回ビッグフットバスケでダンクを外した時を思い出すと、同時にそのトラウマがよみがえるんでしょうね。しかしこれだけだと、あまりにもビッグフットの運転手が不注意すぎて納得がいきませんね。激しく動き回るスポーツをしている近くに近づいてくるのも不自然だし、ココを踏みつけてしまうのも不自然。後々詳しい状況が明かされるのならまだいいですが、「ビッグフットが街を歩き回るのが自然な世界だから」で片づけてしまうなら、構成がぬるすぎる気がする。ダンはココが搬送された病院で、医師にココの脚を治すのは無理と言われ、医師に当たり散らします。医師は月は地球より医療技術が発達しているから、月に行けば治せるかもしれない、と言います。ずいぶん無責任な言葉を言ったものですね。これもやはりこの言葉だけだとダンが月を目指す理由として弱いと思います。ココの話とか月を目指す理由とかは、ダンの行動原理にかかわる重要なパーツなので、しっかりと設定を作ってあってほしいところです。
また挿入歌の「moon passport」が流れて、この曲のPVばりの美麗な映像が展開されます。ココがパソコンを打っている横で、ココとダンたち4人が優勝トロフィーを抱えている写真と、ダンが見上げている看板(地球から月に航行する絵が載っている看板ですね)がポイントですかね。ココがキーを叩くと同時に曲がブツッと止まってしまいます。
行くあてのないダンはミユキのところにやってきます。「そのマシンで、月に行けるのか?」というのは、さっき見ていた看板のことではなくてビッグフットのことでしょうから、ビッグフットに乗って月に行くことが可能なんでしょうか。ミユキのほうも「行けるか行けないかは君次第だよ」と良く分からないセリフを言っています。


次の日ダンク・マスクが釈放されたこと、莫大な借金を背負ったことは街じゅうの話題になっています。新聞で大々的に取り上げられ、街の人のセリフをつないでいって新聞記事の内容が読み上げられます。セラは「へえ〜、大変そう」とあんまり興味を示していないようで、今回の冒頭で会った段階からすでにダンのことを「終わった伝説」として興味が薄れてきていることが窺えますね。セラの横をアイスマンが通って行くと、セラはむしろそっちの方に注意を向けます。ダンも新聞記事の内容をたどたどしく読みあげて、ビッグフットストリートバスケのことを「伝説の俺にいわせりゃまだまだだな」と調子に乗った発言をして、スパンキーに「何様だおめえ」と突っ込まれています。大量の盗品を荷台に積んだ泥棒が横を通過していいき、鈍重なビッグフットに乗った警察が、街中を車を持ちあげて脇にどかし、罵声を浴びながらのろのろと追いかけます。「おめえみてえに壁を走れってか」とスパンキーが言うと、ミユキが何を思い立ったか「それだっ!」と叫びます。
ミユキが思い立ったこととは、ダンにビッグフットによる宅配便をさせるということ。ミユキはガンツとベルも借り出してビッグフットの整備をさせていて、ガンツとベルは昔馴染みのミユキに再会できた懐かしさで喜んで協力しています。ダンは「俺はやる気無いぜ」と反発してみるものの、ミユキに説得されてやる気を出します。
ダンは軽快に動くビッグフットに気分を良くして、最初のお客さんの元に飛び跳ねて向かいますが、老朽化した建物に着地すると、ビッグフットの重さに耐えきれず天井を踏み抜いてしまいます。借金を返すつもりだったはずが、ダンはその弁償代としてさらに借金を背負うことに。そのことでダンとミユキが喧嘩しますが、ベルが建物の強度を考えて走行ルートを立てれば問題ないとアドバイスします。「俺はもう嫌だからな」とすねるダンですが、ミユキに「ココちゃんの脚を治したくないの?」と言われると顔をしかめます。そこにガンツの車が大量の荷物を積んでやってきて、宅配を依頼してきます。ガンツが持ってきた荷物はゴムタイヤを再利用して作ったサンダルで、それを見てミユキとダンは声をそろえて「これだっ!」と叫びます。
ミユキたちが思いついたのは、ビッグフットにゴムサンダルをはかせてクッション代わりに使うということ。ダンガン号の宅配便は大盛況になり、予約でいっぱいにもかかわらず、何日先になっても依頼したいという客であふれかえっています。ベルが走行ルートを案内して、ダンがそれに沿って荷物を宅配します。サンダルを履いて屋根を走るダンは街じゅうの人から注目を浴びます。
ソーイチは車のタイヤの部分に光る何かを見つけて不審に思います。それはソーイチの車の構造を調べ、盗撮をしていた人間で、ソーイチはその人が月から降りてきた人間だと見抜きます。ソーイチはその人をとがめることなく、車の撮影を許容して、「テクノロジーは共有されてこと栄える。しかし、テクニックは個人のものだ。おいそれとは盗めんぞ」とソーイチの思想を簡潔にまとめたセリフを言っています。ソーイチは高いテクノロジーを持ちながらも、それを独占しようとはしない。またミユキたちも月から地球に降りてきた(それゆえに高い技術を持っている)家系だと明かします。ミユキの父が爆発に巻き込まれている様子が出ていましたが、気になりますね。ちなみにここでミユキとガンツが抱えているビッグフット用のサンダルは、セラのために用意したものでしょう。


ミユキとセラの電話のシーン。声で二人のものだと判別がつきますが、電話の終わりの方になって二人の姿が映されて、実は二人は知り合いだったということが明かされますね。再び街で噂を聞くようになったダンに、セラは再び興味を持ち始めたようです。
ダンたちと同じように宅配便を始めた業者が他にも出てきて、ダンはそのことに苛立っているようです。しかしダンは、屋根の上を自在に駆け回る操縦は自分にしかできないから、他の業者は自分たち以下だ、と傲慢に考えているようで、スパンキーに「やるバカがお前だけなんだよ」と突っ込まれています。ダンは眼下にバスケットボールをドリブルしながら荷物を運ぶビッグフットを見つけます。そのビッグフットは挑発的にダンガン号の方にボールを投げてきて、ビッグフットはダンガン号の上をジャンプして投げたボールを反対側で受取り、ダンと同じように屋根の上を走り抜けていきます。ダンは挑発に乗って宅配を中断し、ビッグフットの後を追いかけます。ダンがそのビッグフットに対して腹を立てたのは、そのビッグフットがガンツ製のサンダルをはいていたから。ダンはビッグフットからボールを奪おうとしますが、軽くあしらわれて再び逃げられます。ビッグフット同士が激突した時に、ダンは操縦席に冒頭で花束を渡した女の子を確認し、ここで初めてセラの名前が紹介されますね。「プラチナの疾風」と呼ばれ、ビッグフットバスケではすでに名を知られる存在になっているようです。ダンはストリートバスケをしていたビッグフットからボールを受け取って、代わりに荷物を押し付け、もらったボールをドリブルしながらセラを追いかけます。セラは荷物を届けた後、車の間を縫って華麗に進んでいくのに対し、ダンはドリブルをするたびに周囲の車が横転してしまうような拙さで、二人の実力差がドリブルの様子を見るだけでも分かりますね。ダンはセラに受けた屈辱に罵声を吐きながら、セラを追いかけます。
ダンは廃墟にたどり着き、追いかけていたはずのセラを見失います。セラは地面に開いている穴から這い上がってきてダンのボールを奪い、それを地面の穴に放り込んで、ダンの前を挑発的に横切り、ドリブルをして走っていきます。向かう先には感情になった部分のある電柱があって、それをゴールに見立ててダンとセラの試合が始まります。セラはゴールの前まで走ってきて、ダンはシュートを阻もうとしますが手が届かずに、セラにダンクシュートを決めさせてしまいます。ダンガン号は地面に激突して転がり、逆さまの状態で壁にぶつかって静止します。セラは操縦席から降りてサングラスを取り、ダンに名乗った後、「あなた、ちょっとだけいい線いってたけど、だめね」「伝説っていうのはね、終わった物語」とか言いたい放題を言ってビッグフットの中に戻り、去って行こうとします。ダンはしばらく理解できずに呆然としていましたが、去っていくセラを慌てて引き留めようとします。そこにものすごい勢いで何かが飛来してきて、ダンたちは物陰に隠れます。弾丸が破裂した時にゴムの破片が舞い散っていたことから、投げつけられたのはボールだったと判別がつきます。ダンの隠れていた壁は粉砕されて、ダンは怒りにまかせてボールを投げつけてきたビッグフットに猪突猛進していって、次回に続きます。


ダンたちの始めた宅配便を題材にして、セラというキャラクターの紹介がされていましたね。セラのダンに対する思いを追うと、最初は「終わった伝説」くらいに思っていたダンでしたが、再び街で話題になったことで少し興味が戻り、接近してみたものの、やっぱり「終わった伝説」だった、と。セラとダンが争うシーンはすごく良くできていて、こういうのを主に描きたいなら、上で批判したダンとココに関する「細部」はどうでもいいかなとも思ってしまいます。OPが今週からついたけど、なんとなくマクロスFっぽい曲だった気がしました。OPと挿入歌は好きです。