WHITE ALBUM 第13話 「器が傾いてるのに、気づかなかった?水はもう一滴も残ってなかったからね」


最終話にしてアバンで新キャラが出てきましたね。たぶんクレジットを見る限り「松山めのう」なる人物だと思います。冬弥くんにわざと(…かどうかわかりませんが)ぶつかって、荷物をひったくって、「ごめんなさい」と言って返す、冬弥くんの前に新たに現れた「女神」です。こういうときは荷物がすり替えられていたりするのが定番ですけどそういうこともなかったし、この人はどういう意図を持って冬弥くんに接触したのかな。それを半年待つのかー。


桜団と理奈さん、そして由綺のコンサートが始まります。理奈さんのステージはカルマとスタジアムともに満員で、理奈さんがステージに現れるとともに大歓声が上がっています。それに対して、桜団の観客席は空席がまばらにあり、桜団の登場にもそれほど大きな歓声は上がりません。アバンで出てきた(と思われる)めのうさんは今回桜団のステージにゲストとして出演することになっていたようですが、現れる様子が無いようです。由綺のステージはまずサクソフォンのパートの人のシルエットが映され、次にドラム、ギター、キーボードのパートのシルエットが次々に照らし出されて、由綺は英二さんに「何もかも忘れて歌っておいで」と励まされて、無表情でうなずいてステージの上に駆けていきます。
由綺の歌の一番が流れている間、私たちは由綺の体の動きをつぶさに見ることができます。ここの作画がすごく力が入っていて、由綺がかなり可愛く見える。「アイドル」として由綺が歌うのはここで初めてですが、それは後に出てくる、「『歌の神様』がライバル」という比喩を受けてと考えています。「ヒロイン」たちの顔が見えないのはいわゆる「萌えアニメ」ではあり得ないのと同じで、由綺にとっての「歌」を表現しないわけにはいかないのでしょう。由綺は非常に楽しそうに、魅力的に歌っています。今回ちょっとBパート以降作画が残念になっていますが、ここに重きを置いたのは大正解だと思う。
由綺の歌が二番になると、桜団のステージや理奈さんのステージの様子なども映されます。その間ずっと由綺の歌が流れているとなると、由綺の存在感で桜団や理奈さんが塗りつぶされてしまったかのような印象も受けますね。弥生さんもステージを見ながら笑みを浮かべていて、英二さんはテレビ越しに見ています。はるかさんはいつものように自転車でどこかの公園に来ていて、彰さんと美咲さんはガソリンがほとんど空の車でドライブをしていて、途中で車がストップしてしまいました。マナさんはケーキを買って冬弥くんの家に向かうようです。冬弥くんもいつの間にか観客と同化して笑顔で手に持ったライトを振っています。
理奈さんはステージを一通り終えると大急ぎでスタジアムに向かいます。全力疾走で車に飛び乗り、行き止まりで別の車に乗り換え、スタジアムについてからも駆け足で移動します。「WHITE ALBUM」では珍しいスピード感のあるシーンでした。曲が始まると、理奈さんが歌いだす直前で、終演後の由綺のコンサート会場に切り替わります。


冬弥くんは花束とマナさんから預かったプレゼントを由綺に渡しに行きます。「ありがとう、来てくれて」「約束だから…な」と二人の口が動かずに、代わりに文字が出てきます。「すごかったじゃん」と由綺のコンサートを褒めたのかと思えば、「すごい人だった」と冬弥くんが付け加えるので、由綺が少しがっかりします。冬弥くんが由綺から特大のクリスマスプレゼントを貰うと、英二さんが顔を出して、一同は慌ただしく控室を後にします。さらに由綺の影武者を車に乗せて会場から出させ、冬弥くんはそれを呆然と見送っています。冬弥くんは由綺に「好き」と言われてもただただ呆然としています。冬弥くんが呆然としていたのは、たくさんの「浮気相手」を見せつけてきたにもかかわらず、自分に「好き」と言ってきたからでしょうか。「今から 始まるんだ」というのはこの直後の英二さんの「これからが大変だ」につながる言葉ですかね。
冬弥くんは由綺を見送った後、残った英二さんから、前に理奈さんと話をした屋上で話を聞くことになります。英二さんの第一声は「…勝った」。緒方プロダクションが桜団に勝利したのはAパートのコンサートの様子を見ていれば分かりますね。英二さんの話は謎かけのようですが、冬弥くんのライバルは「由綺のファンたち」そして「歌の神様」だと言っています。相手が神様でも怖くない、と弱気な表情で強気な発言をしている冬弥くんに、「相手が俺なら、ちょっと怖いんじゃないか?」と、そのまま受け取ればライバル宣言となるセリフを英二さんが言って、弥生さんの車の迎えが来ます。


彰さんと美咲さんは冬弥くんの実家を訪ねに来ますが、冬弥くんの父親は呼び出しても出ない。第10話で、階段を昇るときに冬弥くんの父親がめまいを起こして母の写真を落とすシーンがありましたので、ここの時点で家の中で一人倒れているのだろうと分かりますね。冬弥くんの父親も「傾いていた器」の一つですね。「冬弥には、そんな他人行儀な言い方していなかったでしょ」「冬弥は名前で呼んでいたんだっけ?」と彰さんは冬弥くんによほどコンプレックスを抱いているんですね。
冬弥くんは弥生さんのキスを今度は拒みます。「冷た過ぎるよ」というのは、外に雪が降っている寒さを受けてというのと、由綺の熱のこもった「好き」の後だからというのがあるでしょう。
冬弥くんが帰宅すると、部屋のドアの前にマナさんが寝ていました。マナさんはケーキを持って冬弥くんの家にやってきた理由をツンデレらしくもごもごと説明します。このあたりの作画が一番ひどいことになってるな。マナさんはプレゼントを渡して帰ろうとしたところを、冬弥くんが呼び止めて部屋に招きます。「こんなに冷たい手の子を、こんなに冷たいほっぺの子を家に帰すわけにはいきません」と冬弥くんが優しい言葉をかけるとマナさんは泣きだしてしまいます。「水が一滴も残っていない」っていうサブタイに反する描写な気がするんですけど、まああまり深く考えないようにします。
マナさんを家にあげると、弥生さんが冬弥くんの忘れもの(由綺からの巨大なプレゼント)を持ってやってきました。「ああ、すみません」という冬弥くんのセリフが棒読みになったのは、この日の別れ際の気まずさからでしょう。外に長い時間居て高熱を出したマナさんを、弥生さんが世話を焼いて車で送っていきます。マナさんは神埼社長の娘でしたから、弥生さんは打算的な考えはなくて単に彼女の性格から世話を焼いただけだと思います。マナさんは今度は弥生さんを由綺だと勘違いするんですね。マナさんの勘違いが今期中に解けることはついにありませんでした。
今度ははるかさんが冬弥くんの家に訪ねに来ます。冬弥くんはいつものようにぞんざいな態度をとってはるかさんを追い払いますが、冬弥くんははるかさんが雪道の中自転車で来たことに気づいて追いかけます。はるかさんも明確に「傾いていた器」の一つですね。冬弥くんがはるかさんに追い付くと、マナさんが家に居たことについて問い詰められますが、そこに彰さんと美咲さんが父親が倒れたという報せを持ってやってきます。
最後に、「連絡解禁」になった由綺は冬弥くんの家に電話をかけますが、今回も他の「女神」を追いかけていた冬弥くんにはつながりません。「始まりは 終わった」というのは、この13話をかけた長いプロローグが終わったというのが直接の意味で、「今から始まるんだ」というセリフを考えると、はじまりかけた由綺との恋が終わったという意味もあるかもしれません。


全然すっきりとしない形でありますが「WHITE ALBUM」の前半が終わりました。今回ちょっと作画がヤバい感じだったのでここで1クール開けないと持たないのかもしれない。全体的に抽象的なセリフが多くて難解なアニメでした。放送前の期待度よりは面白かったです。2クール目も期待します。


・「喰霊-零-」のライブチケットは無事入手しました。DVDの4巻も購入しました。次の巻でいよいよ「悲劇裏」の回が収録されるのか。あの回のコメンタリーが特に聴いてみたいです。