WHITE ALBUM 第11話 「胸につかえていることを、時は解決してくれない。忘却のラベルを貼るだけで」


前回神埼社長や英二さんが書きとめていた数字の意味が、英二さんからずいぶん丁寧に説明されます。ええと、動員値は動員数を会場規模に合わせていじった値で、前回の46701人は目標動員数だったと、まあそれくらい分かればいいでしょうか。前回理奈さんは英二さんと神埼社長の対決を「お遊び」と言いましたが、今回は「詐欺」と評しています。この会議の場に冬弥くんを呼ばなかったのは、弥生さんに手紙の件を問い詰めるため。理奈さんはトイレから出てきた弥生さんを鋭い目つきで睨んで、由綺から冬弥くんに渡るはずだった手紙がゴミ箱に捨ててあったことを問い詰めます。実際弥生さんはストーカーからの手紙と間違えて捨ててしまったわけですが、「イブのコンサートの障害を取り除いた」と理奈さんに説明します。「3人の聞き間違いでしょうか」と言った「3人」というのは、理奈さんは冬弥くんと由綺と理奈さんだと受け取っているけど、弥生さんはその可能性と、冬弥くんと由綺と弥生さんの3人の意味で言った可能性がありますね。弥生さんはびりびりに破った手紙を冬弥くんに「見せても見せなくても」面白いと思うそうですが、理奈さんはどっちみちあの手紙を冬弥くんに見せるわけにはいきません。それは弥生さんがマネージャーとして由綺に不可欠だから。一連のやり取りは抽象的で何を言っているのか分かりづらいですが、理奈さんのほうは弥生さんへの怒りと、しかしその原因の一端を担っていることへの罪悪感があり、弥生さんの方は自分が手紙を破ってしまったことを、自分の中で正当化しようとしているってことでいいんですかね。


理奈さんの専属スタッフになって大忙しになった冬弥くんは、美咲さんからずっと借りていたブラウニングの詩集をエコーズのマスターに預けます。マスターは今さらながら口ではなくジェスチャーで喋るキャラのようで、冬弥くんを指さして「自分で渡せ」と暗に言います。冬弥くんはこれから忙しくなって時間が取れなくなるので、とマスターに頭を下げているところを理奈さんが迎えにきて、冬弥くんは詩集をマスターに無理やり預けて去っていき、マスターはため息をつきます。理奈さんと冬弥くんが向かった先は「スタジアム」だと思います。冬弥くんは観客席に座っていて、理奈さんはマウンドに近づいていき、理奈さんは冬弥くんに向かって手を振ります。冬弥くんも手を振り返しますが、それが自分に向けたものでなくて、ここを埋め尽くすほど集まるはずの「観客」たちに向けたものだと気づいて苦笑します。冬弥くんは途中から理奈さんの姿に、初のコンサートで踊りまわるであろう由綺の姿を重ねてしまいます。この間「アイドル」としての理奈さん(と由綺)は一言も言葉を喋らずに、未来の観客の大歓声と、未来の理奈さんの歌声だけが浮き上がって聞こえてきます。
理奈さんの歌は今回初めて聞かされますが、これもまた完成テイクではなくて、スタジオで練習する理奈さんが何度も何度も繰り返し練習する場面から切り取ったものです。「理奈ちゃんは鬼にも悪魔にもならなかった」とありますが、「鬼や悪魔」になったのは英二さんですかね。理奈さんはなかなか満足のいく歌が歌えないのか、「もう一度、もう一度、もう一度!」と何度も何度もやり直しをします。結局「私のモードじゃない」(これは夕食のときのセリフですが)ままその日は解散になり、冬弥くんは理奈さんとの夕食につきあうことになります。
冬弥くんが夕食の間に投げてくる疑問は、物語のペースからは一歩遅れたものですが、説明としてちょうどいい場面ですかね。コンサートのことを教えてもらえなかったことを気にして、「由綺、怒っているんだろうか…」と言う冬弥くんに、理奈さんは由綺からの手紙を見せるわけにもいかないので、「コンサートモードに入ったの」と、一応嘘はついていない答えで返します。「由綺のコンサートのことを知っていたら、お仕事受けてくれなかった?」と尋ねる理奈さんに、冬弥くんは「仕事って、俺まだ何の仕事も…」と答えになってないような誤魔化し方をします。どうにも冬弥くんは肝心の質問をこうしてはぐらかしてしまうことが多いような。「言ったでしょ?これが仕事」というのは、「何もしなくていい、傍にいてくれるだけでいい」と言った前回のセリフを受けて。


次は由綺が車内で眠っている間に見ている夢のシーンです。前にもこうして印象的なカットでつないだ夢のシーンがありましたね。今回は大勢の観客の前でおびえる由綺が、それでも懸命に笑顔で歌おうとするところを、「どうしてここがフラットになっちゃうかなあ?」という英二さんのセリフが邪魔します。由綺が手に持っていたマイクはいつのまにか電話線の切れている(つまり、電話の向こうの冬弥くんに声が届かないことを象徴している)電話に代わり、以前電話で言ったセリフがよみがえってきて、由綺が赤い涙をこぼして、そこで目覚めます。大まかに言うと、24日に控えたコンサートへの不安と、もう久しくまともに口を聞いていない冬弥くんへの不安を象徴した夢というところですか。
車に積んである電話が鳴って、弥生さんが急ブレーキを踏みます。英二さんから最後の曲目が録音されたカセットテープを受け取りに、二人の乗った車はUターンします。冬弥くんに手紙を渡したか、由綺から尋ねられると、「ご安心ください」と、これも一応嘘はついていない返事を返します。


今度は冬弥くんがマナさんの家庭教師をしているシーンです。マナさんは冬弥くんが来る金曜日に苦い顔をしたマークを書いていますね。カレンダーからきょうが12月5日であることがわかります。マナさんは突然「今日、早退するから」と、自分の家なのに意味不明なことを言い出しますが、それははるかさんと自転車でツーリングの約束をしていたということ。マナさんは相変わらずはるかさんが冬弥くんの彼女だと勘違いしているらしく、しかもはるかさんも明確に否定しないので勘違いが継続したままです。暇になってしまった冬弥くんは大学で時間をつぶしに行き、美咲さんと彰さんと鉢合わせます。美咲さんと彰さんはそれほどうまくいっているとは言い難いようですね。彰さんは美咲さんを心配するのを理由にしてしつこく付きまとって、美咲さんは少し迷惑そうにしています。
マナさんとはるかさんが自転車で向かった先は、どこかの公園か、あるいは夕凪大でしょうか。マナさんは息を切らせて倒れ込んでいるのに対して、はるかさんはこともなげに柔軟体操をしています。マナさんは柔軟体操をしようと思ってもつま先まで手が届かず、体の柔らかさ・運動神経の良し悪しが対照的に描かれています。はるかさんが冬弥くんを「お兄ちゃん」と呼んでいた先ほどの場面を受けて、マナさんは「うそつき」と言い、さらに「『彼』だって分かっちゃうのが、こわいんじゃないの?」とずいぶん生意気なことを言いますが、はるかさんはうそつきなのはお互い様だと言い返します。マナさんは冬弥くんが理奈さんの専属スタッフになったことも全く信じていないようですが、今回最後にはるかさんが自己紹介をしているので、はるかさんが冬弥くんの彼女だという誤解もそろそろ解けたでしょうか。


さっきまでは12月5日でしたが、マスターの読んでいる新聞から、日付が一気に飛んで12月10日になったことがわかります。「WHITE ALBUM」で何の前触れもなく間の日付を飛ばすのはかなり珍しいですね。ええと、水曜日はエコーズのバイトの日でしたっけ。冬弥くんから弥生さんにこの5日間の仕事の様子が話されます。冬弥くんが理奈さんにさせられている仕事は、待機・見学・客の代わりと、ほとんど何もしていないも同然。理奈さんとともにコンサートを行うバンドのメンバーも、その理奈さんの様子を訝しんでいるようで、弥生さんも不審に思います。二人は前々回くらいからずいぶん仲良気なってきたようです。続けてはるかさんとマナさん、美咲さんと彰さんの話を立て続けにしますが、弥生さんから「由綺さんの話はしないのですか?」と振られると、冬弥くんは「由綺の気持ちが分からない…」と泣きだし、弥生さんに慰めてもらって、気がつくと朝になってしまいました。
次はまたしても日付がいきなり飛んで、12月16日になります。「理奈ちゃんが、トチった」。理奈さんはリハーサルの最中に歌詞をど忘れしてしまったとのこと。理奈さんは気分転換に由綺に電話をかけます。由綺が英二さんから渡された最後の曲目というのは、理奈さんの曲のカバーだということが明かされます。由綺は自分の書いた手紙について冬弥くんが何か言っていなかったか尋ねますが、その手紙が実際に渡っていないことを知っている理奈さんは何も答えることができません。
理奈さんが帰り際に「エコーズのバイトの後、ご飯にしない?」と尋ねると、冬弥くんは「弥生さんと約束がある」と思いもよらぬ返事を返します。最近は弥生さんのキスを全く拒もうとしていなかった冬弥くんは、弥生さんのデートの誘いを受け入れてしまったんですね。


今期中の「WHITE ALBUM」もあと2回になりました。次回は弥生さんの件について理奈さんに詰問され、次々回はクリスマスライブ当日になるようです。ある程度区切りのいいところまで進めてほしいですけど、弥生さんの件も次回で決着するんでしょうか。次回も期待しています。


・余談ですが、先週の「とらドラ!」で出てきた春田の彼女の声が、あまりに聞きなれた美咲さんの声だったので驚きました。