宇宙をかける少女 第9話 「Q速∞」

……いやいやいや、まさか野球とはね(笑)Q速って球速のことでしたか。
公式サイトが素早く更新されていて、今回のエピソードのあらすじなどはそちらで見ることができます。それによると今回は秋葉さんの見た夢の中のお話ということです。秋葉さんといつきさんが正面から激突するとか不穏なことが書いてあったので心配していたんですが、番外編でホッとしました(笑)1話限りのお遊び回ですが、詳しく設定も作り込んであり、わかりやすくまとまった話になっていました。非常に良かったと思います。


舞台はカークウッドではなく地球の日本。QTが野球に使用されるのを否定し、QT能力者を野球界から排除したNLPB(日本女子プロ野球機構)の理事長ネルヴァルと、QTを積極的に肯定して、QT能力者だけのリーグを作ろうとする、理事長の息子にして副理事長の真宮寺さんの対立がバックにあります。秋葉さんといつきさんはともにQT能力者として野球界から追放されており、秋葉さんはその復讐のために真宮寺さん側に、いつきさんは野球界への復帰をかけてネルヴァル側について、野球で決闘することになります。
アバンではまず秋葉さんとダリバール・シャークスの試合の様子が、世界観の紹介も兼ねて映されます。ピッチャーが秋葉さんでキャッチャーがほのかさん、バッターがミンタオで審判がクロオビ、エミリオさんはシャークスの監督を務めています。秋葉さんがQT能力を使って投げる球を、ほのかさんがQT能力を使ってキャッチするそうです。強打者だということになっているミンタオも、秋葉の投げるQTを使った魔球「魔QT」を打ち返すことはできず、バットを粉砕されます。シャークスは秋葉さんたちに敗れ、球団の経営権を真宮寺さんに没収されます。真宮寺さんは秋葉さんたちとともに道場破りを繰り返して現存する球団を破滅させ、QT能力者によるリーグを新たに作ろうと画策しているのです。


Aパート以降は主にいつきさん側の視点から話が展開されることになります。現在は郵便局員をしているいつきさん。街が閑散としているのは秋葉さんたちの道場破りのせい…というわけではないでしょうが、陰鬱な世界観が最初に提示されています。業務を終えて帰宅途中のところに、キャッチボールをしていたエリカとリリー(久しぶりに出てきましたね)のボールが、脇にそれていつきさんのもとに飛んできます。いつきさんはそのボールを、近くに落ちてきた木の枝を使って打ち返します。すぐにでも折れそうな木の枝で打ち返されたボールは、そうとは思えない速度でエリカのグローブの中に収まります。それはいつきさんを野球界から追放したQT能力によるもの。いつきさんは元プロ野球選手で、カークウッド・パイレーツの四番打者であったのです。
いつきさんの出身は教会の孤児院。孤児院の中に出てくる宇宙かけメンバーは桜さんとニーナさんです。自分の貧しい食事と宗教画を見比べて「神様はいつもごちそうを食べてる」と漏らす桜さんに、シスターであるニーナさんが「そりゃ神様だからねえ」と身も蓋もない返事をします。いつきさんがやってくると子どもたちは大喜び。いつきさんは毎月、ニーナさんの経営する孤児院に仕送りをしているようです。いくつも仕事を掛け持ちしているらしいいつきさんは、そのまま次の職場へと向かいます。
いつきさんの次の職場は夜のバーといったところでしょうか。いつきさんが働いている脇で、フリオさんたちが女の子をナンパしています。いつきさんは月を天高く上がるボールに見立てて、野球をしていたころの自分を回想します。場面はパイレーツ対シャークス。九回裏の6対6でいつきさんがサヨナラホームランを打ちあげたところ。公式サイトのキャラ紹介によると、いつきさんは野球においてQTを使用しておらず、QT能力者と言うだけで理不尽に野球界を追放されてしまったとのことです。
いつきさんの元に馬場つつじさんの放ったボールが飛んできます。つつじさんはNLPB理事長の代理としていつきさんの元にやってきました。QT能力者の球を打てるのはQT能力者のバッターだけ。いつきさんに、秋葉さんを倒すことを条件に球界への復帰を認めるという話を持ちかけにきたのです。パイレーツが秋葉さんに敗れればパイレーツはなくなるため、これはいつきさんが球界に復帰できる唯一無二のチャンスであると、そう言い残してつつじさんは去っていきます。
翌日、秋葉さんとパイレーツの試合。パイレーツの打者は次々に破れ、残るは二軍にいるネネコさんだけとなってしまいました。そこに秋葉さんと戦う決心をしたいつきさんが、観客席のフェンスを飛び越えて颯爽と現れます。秋葉さんの投げた第一球を、いつきさんは自力でなんとかバットに当ててファウルします。ですが秋葉さんの本気の籠った第二球は、いつきさんは受けることができずに弾き飛ばされます。ですが秋葉さんも肩を痛めてしまったようで、三球目を投げることができずに勝負は引き分けとなりました。ですがQTを用いないいつきさんとの力の差は歴然。次回秋葉さんたちが来る時には、パイレーツは対抗できずに敗れ去ることでしょう。
QTによって秋葉さんを倒すことを期待されていたいつきさんは、QTを使わなかったことに対して「QTを使えば、あのピッチャーと同じになってしまう」と甘いことを言い、つつじさんは失望します。つつじさんはそのことを、力とチャンスを与えられながら、あなたはそれを投げ捨てた、と厳しい言葉で指摘し、その言葉を受けていつきさんはQTを使って秋葉さんに対抗することを決心します。つつじさんは「野球の鬼」なる人物を紹介し、「あの球を打つ方法が見つかるかもしれませんね」と言って去っていきます。去り際のつつじさんの笑みは、いつきさんの反応などがすべてつつじさんの計算通りだったということを物語っていますね。
今回の挿話は、いままで本編でほとんど登場することのなかった「馬場つつじ」なる人物の紹介も目的としているのでしょう。今回人心を掌握することに長けた人物として描かれていたつつじさんは、本編ではどんな活躍をしてくれるのでしょうね。


Bパート冒頭では秋葉さんについての話が展開されています。かつてはプロ野球選手であり、大勢の侍女を抱えてお金持ちだった秋葉さんですが、姉の風音さんと高嶺さんが謎の死を遂げ、自分も球界から追放されて、何もかも失ってしまったといいます。今では侍女はイモちゃん一人だけで、病気を抱えている妹のナミさんと3人で暮らしています。「苦しむだけの日々が続くなら、いっそこの手で…」とナミさんの首に手をかけようとしますが、ナミさんの言葉を聞いて思いとどまります。ナミさんには「私はもう、野球はやめたの」と嘘をついて、優しい顔をしています。そこに医師のエル・スールさんが現れて、秋葉さんは前回の試合で壊した肩を診てもらいます。秋葉さんはエルさんに「あと三球が限界」と宣告されます。
「野球の鬼」を紹介してもらったいつきさんは、修験者たちもいる山を登って、「野球の鬼」ことレオパルドが安置されている地に向かいます。レオパルドが投げつけてくる石つぶてを、いつきさんはすべて打ち返し、レオパルドに認められます。いつきさんはレオパルドの「金棒」(これも下ネタか…)を握ってみろと言われますが、自分の中の「力」に負けて弾き飛ばされます。「自らが鬼にならねば魔QTは打てん。貴様に人を捨てる覚悟があるか」とレオパルドに問われ、いつきさんは「上等です」と堂々と答えます。いつきさんは修行をすることを認められますが、その代りに修行が終わった時に、レオパルドの望みを叶えることを約束させられます。レオパルドによる修行は厳しいものでしたが、いつきさんは強い執念で粘ります。
秋葉さんは雨天の中、ほのかさんと共にパイレーツとの再試合に出向きます。秋葉さんの魔QTもレオパルドとの契約によるもので、秋葉さんも自分の命と引き換えに魔QTを得た、ということが明かされます。秋葉さんとほのかさんが一緒に出て行くところは、ナミさんに見られてしまいました。
いつきさんはすべての修行をやり終えて、レオパルドの金棒を引き抜こうとします。いつきさんの目の下に青色の紋様が浮かんで、いつきさんが金棒を振ると、雨雲さえも吹き飛ばしてしまうほどの風圧が起こります。いつきが金棒を振り回すカットはなんとも美麗です。この紋様は本編ではどうやらICPのマークではなくて、QT能力者がQTを使うときに現れるもののようで、特に今回の挿話ではレオパルド秘伝の技にQTを使う時に限って現れるようにになっています。いつきさんはレオパルドの望みを叶えるように約束していましたが、自分の望みはお前を喰らうことだと告げると、「それはできません。私はもはや人間ではなく、野球の鬼ですから」といつきさんは格好良く切り返します。そしてネルヴァルとつつじさんが現れて、いつきさんはレオパルドから逃げ出すことに成功します。レオパルドがイモちゃんが苦手という設定はこの世界でも保存されていたのね(笑)


パイレーツの正規メンバーはQTを使うまでもなく秋葉さんによって全員三振させられ、いつきさんと秋葉さんの対決になります。いつきさんの元には孤児院のみんなが応援に駆けつけて、秋葉さんの元にはナミさんとイモちゃんが応援に来ています。秋葉さんは仮面を取り去り、目の下のピンク色の紋様を露わにします。秋葉さんの分裂する魔球を、いつきさんは分裂するバットで打ち返すことができました。が、ボールを打ち返す音は銃声にかき消されて、いつきさんは倒れます。秋葉さんを退けて用が済んだいつきさんを、つつじさんが銃で撃ったのです。再び降り出した雨の中でいつきさんは息絶えて、今度は秋葉さんに銃口が向けられます。姉たちを殺したのもネルヴァルだったと知り、秋葉さんは全力をボールに込めて、画面が白く染まっていっておしまいです。EDの誰もいない球場は、秋葉さんが全員を吹き飛ばした後の風景でしょう。ちなみに今回のED曲はOPのシングルのカップリングに収録されています。


本編のノリノリの雰囲気とは全く対照的な陰鬱な空気で話が進んでいき、さらに最後は壮絶なバッドエンドで終わります。番外編としてはある種宇宙かけに相応しいようなものであったと言えなくもありません。キャラクターの人間関係などはあまり保存されていませんが、性格などは保存されていて、今後活躍してくるつつじさんや真宮寺さんなどの性格が予め良く分かるようになっています。ずいぶんとさまざまな設定を作ったようですが、また野球をすることがあったりするんですかね。でもみんな死んじゃったしもうできないか。暗い話であったものの、本編を無視して唐突に野球だったのでどこか笑えてしまいますね。次週からはまた本編に戻ると思います。次週も期待。


アニメイトのポイント交換特典にそらかけのQUOカードが登場するようです。今までで初めてアニメイトの景品交換ポイントがあって良かったと思ったかも。絵柄はNewtype1月号のやつか。描き下ろしが良かったなぁ。(追記3/3 18:30 アニメイトの公式サイトには特に告知はありませんが、既にポイント交換は開始されているようです。私も池袋店でもらってきました。)


3/4 追記 18:36
今回のエピソードが今後の展開を示唆しているというのは、人間関係が保存されていないので否定的に考えていましたが、id:moonphaseさんの考えにおおむね賛成します。