宇宙をかける少女 第8話 「暗闇へのいざない」

前回はネルヴァルと一戦やり終えたところに桜さん、高嶺さん、風音さん、エル・スールさんが集まってきたところで終わったのでした。風音さんはレオパルドに会いに行こうとして、ほのかさんは「レオパルドには会わせない」と言い返しますが、風音さんが連れてきた「モリヒメ」の姿を見て、レオパルドに会うのを承認します。前任「宇宙をかける少女」に付き添うナビ人であった「モリヒメ」は、前回のハッキングまがいのことをするためだけではなくて、こうしてレオパルドとほのかさんに対しての身分証のような役割を担っていたんですね。ミスター・クロオビとイモちゃんの運転する電車で一同はレオパルドに会いに行きます。
レオパルドと面会した一同は各々個性的な反応を返します。桜さんは「フハハハハ」とレオパルドのまねをしてみたり、クロオビは「トモダチニナリマショウ」と相変わらず、風音さんはレオパルドが無駄に威張るところをうまくやりこめます。いつきさんだけが他の人とは異なる個人的な目的で来ていたため、自分の話を切り出そうとしてもなかなかうまくいきません。風音さんは「ネルヴァルと戦う戦略拠点を設けにきた」と、確かにずいぶん自分勝手に聞こえることを言い出し、レオパルドも反論しますが、レオパルドは「獅子堂評議会」の名前とモリヒメの姿を見て狼狽します。桜さんはキャラ付け的にはいたずらっ子なのか、はしゃぎ回ってレオパルドの部屋の中を散らかし始めます。桜さんがレオパルドの部屋から発掘した大量のポイントカード、トイレットペーパーの芯、ペットボトルのキャップを風音さんたちは掃除機で吸引して、高嶺さんはレオパルドが大切に繰り返し使っているティーバッグも捨てようとします。ここまで自分の部屋で好き放題やった挙句に「トモダチニナリマショウ」なんて、どの口が言うんだというセリフを言われては、レオパルドでなくともキレて一同を放り出してしまうでしょうね(笑)いつきさんはそれでも自分の聞きたいことを聞こうとしますが、怒りの頂点に達したレオパルドは取り合ってくれません。
一連のシーンの中で、(秋葉さんとほのかさんは空気でしたが)呆然とするいつきさんと順応性の高い風音さん・高嶺さん・桜さん・エルさんがよく対比されていましたね。まあ一人だけアウェーだったというのもありますが、いつきさんはこのあとカチコチになって挨拶するシーンもあって、ある種畏敬の念を持ってレオパルドに面会していたのに対して、風音さんたちは最初から完全にレオパルドをナメてかかっています。秋葉さんと同様に流されやすくてドジないつきさんと対比することで、風音さんたち(特に風音さんとエルさんの)常に余裕を持ち合わせている性質が浮き彫りになっていました。キャラクターの性質は常に他のキャラクターと比較して決定されるものだと思っているので、今回のようなシーンは待ちに待ったという感じですね。


風音さんたちはレオパルドが納得しようがしまいが拠点の設置を始めるようです。拠点の候補に聖地「エニグマ」というのが挙がりますが、ほのかさんが「あそこに入ることは許さない」と言います。また聞いたことある固有名詞が出てきたなあ…と思って調べてみたら、第二次大戦中のナチスの暗号機ですね。こういうのはただ名前を使ってるだけであまり深い意味はないと考えていいのかな。ほのかさんは入手した「ゴールデンオーブウォーマー」を取り付けに行って、一同はそれに同行します。
ほのかさんたちが向かった「制御室前」には温泉が湧いていました。あのゴールデンオーブが収納される場所はこんな風になってたんですね。縁起物だというその温泉に「ネルヴァルの第一手を退けたことだし、入っていきましょうか」と風音さんたちは気軽な感じで入っていきます。ほのかさんとウルさんがパーツを取り付けるほんの数カットの間に秋葉さんはすっかりのぼせてしまいました。いつきさんも周りに流されて一緒に入っています。いつきさんは未だにあの変装がばれていないと思っていたんですね。自分からかつらを脱ぎ捨てたりしているくせに(笑)
風音さんの話を要約すると、今から50年前に「ブレインコロニー」たちが建造され、ネルヴァルはその第一号機だったが、ネルヴァルは反乱をおこして、その時に「獅子堂評議会」とレオパルドがネルヴァルと戦って、コロニー内の人々は助け出されたが、ネルヴァルは逃走してしまった。そして、ブレインコロニーの建造を主導した獅子堂財団には、再来するネルヴァルと戦う使命がある、と。モノローグの間に映されていた背景の壁画が、その戦いの様子を表していますね。前任「宇宙をかける少女」とレオパルド、そしてたくさんのクロオビと同系のロボットが描いてあるところとかは、なんかナウシカを思い出してしまった。そして秋葉さんが「どうして私がレオパルドと…宇宙をかける少女って…」と核心部分を聞こうとしたところで、「驚異の大自然」が飛び出てきてゴールデンオーブの冷却装置を壊して、口にくわえてどこかに行ってしまいます。どうして秋葉さんが選ばれたかとか、秋葉さんの担う役割とかはまだ引っ張るんですね。
今回出てきた怪獣はレオパルド内部に生息している生き物だそうです。そらかけにこういうファンタジー的な側面が出てきて驚きですね。怪獣が壊した冷却装置は無いと大変なことになるようで、秋葉たちは怪獣から冷却装置を取り返しに行こうとしますが、怪獣が生息している場所は、レオパルドが過去に地図を無くしたためにわかりません。「人生とは、地図のない旅だからさ」は盛大に吹きました(笑)想像の斜め上を行く切り返しでした。秋葉さんたちはまず地図を求めにレオパルド図書館に行くことになります。
図書館内には昔レオパルドが書いた小説とかもあって、秋葉さんは軽く引いています。「お化けが出そう…」などと言うけども、仮にもSFの世界なんだからそういうのは出てこないでしょ…とCMの間にあの首なしの甲冑はクロオビの同類か何かだと勝手に推測をつけていたんですが、まさか「お化け」が普通にいるSFの世界だったとは。またしてもそらかけの世界観が広がりました。


Bパートでは久々にナミさんが登場してきましたね。今のところ本筋から大きく離れた位置にいるナミさんですが、他の姉妹に仲間外れにされたのを気にしていて、「どうせ私のことなんか誰も…」と考えながら、コーヒーに山盛りに砂糖を入れてしまいます。彼女はずいぶん精神を病んでいるようですね。
図書館で現れた甲冑は、「怪奇課」のいつきさんによって本物の悪霊と認定されました。怪奇課というのは「オカルト的事件」ではなくて本物のオカルトを扱う課だったんですね。いつきさんは手慣れた様子で甲冑をピラミッド型の結界に閉じ込めて、ダメージを与えたのち、意思の疎通を図ろうとします。この文字に出てくる悪霊の意思がなかなかコミカルで、「クビ、ヨコセ」「チズ、ホシイノカ?」、指をチョンチョンとやって「ツイテコイ」と、この甲冑も数カットのうちにギャグキャラに成り果てました。「(首を)ミツケタラ、チズ、ヤル」と秋葉さんたちに自分の首を探させる間、自分は腕をぶつけて火をおこし、パイプで一服します。秋葉さんといつきさんは手探りで首を探しますが、ほのかさんはQTを使ってポンポンと探しています。
ここで秋葉さんは、自分と同い年のいつきさんがもう手に職をつけていることに興味を示して、「どうして怪奇課に入ったの?」と尋ねます。いつきさんが怪奇課に入るきっかけとなったのは、両親が巻き込まれた「テラ・アブダクション」なる「オカルト的事件(あるいはオカルト)」を立証しようと思ったから。子供のころから自分で自分の道を決めて進んできたいつきさんを見て、秋葉さんは感心し、同時に自分に劣等感を抱きます。どうにも忘れがちですけど、自分の周りにいる「すごい人たち」に対して秋葉さんが抱いているコンプレックスも、このアニメの重要な主題の一つでした。第5話のところでは唐突な感じもしたものの、いつきさんも秋葉さんから見ればその「すごい人たち」の中に入っているということですね。「すごいなぁ、いつきちゃんは。それに比べて私は何も、何もない」と秋葉さんの独白に被せて、いつきさんが「ありました!」と首(の候補)を発見したことを伝えます。
秋葉さんたちが見つけた首は、どれもこの全身甲冑の頭部とはどう見ても違いますが、甲冑はほのかさんの拾ってきたツタンカーメンのマスクを装着して満足します。秋葉さんたちは地図を手に入れて、怪獣たちの住む場所へ。


目的地へ着いた秋葉さんたち。怪獣が海に冷却装置を落とそうとしているところを、秋葉さんたちは慌てて止めに入りますが、ほのかさんがQTを使って難なく拾い上げます。しかしこの怪獣たちは愛嬌がありますね。こんなまた出てくるか分からないような怪獣のキャラデですら、十分整っているのは素晴らしい。秋葉さんが怪獣に語りかけるところとか、ここだけ切り取ると何か別のファンタジーアニメに見えます。そんないい雰囲気ですら、怪獣が秋葉さんにいきなり噛みついてぶち壊しにしてしまうのはさすがです(笑)どんな雰囲気のいいキャラも一瞬でギャグに落としてしまいたいんですかね(笑)秋葉さんがその怪獣を放り投げたところを、その親に見つかってピンチになり、ところがその親は突然海から現れた別の怪獣に襲われてしまいます。
秋葉さんたちは無事に冷却装置を取り戻したことをレオパルドに報告しに行きます。新しく出てきた怪獣はレオパルドも知らないようで、このあとほのかさんは図書館で甲冑から動物図鑑を借りて調べます。いつきさんはなんとかレオパルドと話す機会を持とうと畏まって挨拶をしますが、部屋を秋葉さんたちが汚したことに憤慨して3人を部屋から放り出します。いつきさんはレオパルドと「なんでも語り合える仲」になるために、秋葉さんに下山むつみとして近づいた時の反省を生かして、そしてどうやらまた何か重大な勘違いをして温泉から飛び出していきました。


そして前回もいつきさんたちを取り逃がしたブーゲンビリアとミンタオが出てきました。2人はお粗末な報告書に対する皮肉を皮肉とも取れず、とうとう上層部の3人からも愛想を尽かされてしまいます。「命がフー」なんでしたね。二人はやけになって道行く酔っ払いに当たり散らします。そこに唐突に巨大なチェーンソーが上空に現れて、コロニーを破壊し始めて、次回に続きます。


思ったより風音さんによる解説が短くて、いつもの「そらかけ」でしたね。それだけじゃなくて、ファンタジー生物やら悪霊退治ものやらを盛り込んできてさらに「そらかけ」の世界が膨れ上がってしまいました。そういうのが見れたのでまあ良かったんですが、秋葉さんたちが冷却装置を取り戻しに行っている間、風音さんたちはどこで何をしていたんでしょうね。風音さんたちが、秋葉さんたちが手こずるトラブルをあっさりと解決してしまうところとかもちょっと見てみたかったな。次回はあらすじを読むと秋葉さんといつきさんが違う道を行って激突することになるらしいんですが、たった1話で2人の関係がそこまで激変するのが想像できませんね。次週も楽しみです。


・あらかじめ言っておきますが、Keyのメモフェスがある関係で今週末のレビューはちょっとお休みします。WHITE ALBUMの感想も若干遅れるかもしれません。