WHITE ALBUM 第7話 「イメージはどんどん構築しなきゃ。ただでさえ、端から崩れてくものなんだから」
やっと観月マナさんにきちんとした(冬弥くんの生徒としての)出番が訪れます。観月マナさんが帰宅すると、台所に残されていたのは父の(かどうか分かりませんが)吸いがら、寿司、インスタントのお吸い物、そして母の書き置き。たった1人前のためにこれだけ大量の寿司を用意しているのですから、観月さんの家は大層お金持ちで、それゆえ多忙で家を留守にすることが多いのだろうと推察できます。それは後に「父は豪華客船の船長、母は世界をまたにかけるファッションデザイナー」とマナさんが明かします。書き置きには普通に視聴していても単語くらいしか読み取れないので、あまり重要なことは書いてありませんが、「今日の先生は来週からは来ないので安心なさい」というところの、特に「今日の先生」という言い回しからから、マナさんには冬弥くんだけではなくたくさんの家庭教師が付いていることが分かります。それも後にマナさんが明かしますがね。マナさんはそのお寿司をすべてゴミ箱に捨てて、自分で買ってきたハンバーガーを食べます。このアバンでマナさんはたったの一言も喋らない。BGMも無いものですから、マナさんが鞄を放り投げる音ととか、お寿司の容器を洗う水の音など、効果音が異様なくらい目立ちますね。その静けさの中に突然由綺の曲が割り込んできます。マナさんは普段ラジオをつけているそうですから、ラジオから聞こえる音に被せたのかなとも思いましたが、よく考えるとまだレコーディングも終わってない未発表の曲なので、ラジオから聞こえてくるわけはありません。そんなわけでここに音が割り込んできた理由はあまりはっきりと分かりませんが、その音をきっかけに画面が由綺のレコーディング風景に切り替わります。
レコーディング終了直後の異様な静けさの中で、緒方英二さんの淡々とした拍手が静寂を破ります。理奈さんがVサインを出して、由綺は思わず涙を流します。この構図はどうにも先週の美咲さんと演劇部を思い出してしまいますね。英二さんの強かな姿勢は、田丸とはベクトルは違えど由綺を「道具」と見なしている可能性がありますから、演劇部と同じ構図と言えなくもないかな。まあ、言ってしまえば企業の利潤追求ですから当たり前なんですけども。
さて、由綺が「人が変わったように」歌が上手くなって、レコーディングが無事に終わった背後には理奈さんが居たわけですね。(由綺の急激に上手くなった歌は我々は聴けないことになっていますね。)帰途につく由綺と弥生さんの車、理奈さんと英二さんの車の中でその理由が明かされます。由綺は「今度おいしいチーズケーキのお店に連れて行ってあげるからって」と言いますが、「おいしいチーズケーキの店」とは、間違いなく冬弥くんのいる「エコーズ」でしょうね。由綺とっては冬弥くんと会えるっていう意味しか持ちませんが、どうやら理奈さんサイドではそうではないようで、英二さんは「読めたぞ」と、それ以上の意味を悟って「宣戦布告になるかもしれないのに?」と言い放ちます。まだこの段階では何を言っているかよく分かりませんが、今回の挿話の終盤でエコーズと英二さんの関係が少しだけ明かされます。
それと些細なことですけども、弥生さんの車が左ハンドルで英二さんの車が右ハンドルなのはちょっと引っかかりましたね。アニメ文法的にはどう見ても左ハンドルの方が金持ちの象徴で、それはプロダクションオーナーの英二さんとその部下の弥生さんという構図には矛盾しますが、なにか意味があるんでしょうか。
ここでようやく前回の冬弥くんと美咲さんの話の続きが展開されます。前回とのつながりがあまり明確にされていませんが、前回のラストは、美咲さんたちは「デザイン同好会」に舞台衣装の製作協力を頼みに行って、それが弾かれて冬弥くんの「ヒーロー登場?」でした。冬弥くんは制作に使うスタジオスタジオとして実家の部屋を貸し、実家にあるミシンを貸したって言う感じですか。冬弥くんと父親の絡みがあると必ずと言っていいほどコメディになりますね。美咲さんに対して格好をつけたセリフを吐いた父親でしたが、そこに冬弥くんが現れて、恥ずかしくなったのか咳ばらい、「いい年して色気づくなよ」と言った冬弥くんに箱ティッシュを投げつけますが、冬弥くんはヒラリとかわします。冬弥くんはさすが親子なのか父親と同じセリフを美咲さんに言って、父親はまた恥ずかしくなったのか咳ばらい、「いいボケ防止になる」と言った冬弥くんに週刊誌を投げつけて、冬弥くんがまたかわします。やりとりの一番最後に「罰あたりが」と冬弥くんに言った父親は何を意図していたんでしょうか。そして冬弥くんのアパートで鳴り響く電話は誰からのものだったんでしょうね。
冬弥くんは美咲さんと作業をしながらいつの間にか眠ってしまったのか、朝目覚めると布団が掛けられていて、美咲さんの姿はすでにありません。この日は家庭教師のバイトの日だったのか、慌ててマナさんの家に出かけます。冬弥くんの額が緑なのは、緑のペイントをしているときにうつろうつろしていた描写から察せられますね。
ここで初めて冬弥くんは、自分の生徒としてマナさんに出会います。マナさんが冬弥くんを「ケチなイソップ」と呼んでいる理由は第4話を参照。「金の斧がもらえないからって、鉄の斧ばっか集めているケチなイソップの言うことなんか、聴きたくない!」っていうやつでしたね。冬弥くんはどうにもこの生意気な子が生徒のマナさんだと認めたくないようで、「お姉さんは?」などと聞いてきます。蛍ヶ崎高校に一緒に向かった経緯から、この子は中学生ではなくて高校生だと分かっていたはずですから、ここはマナさんが年齢の割に幼く見えることにつけ入って、あまり生徒として接したくないマナさんを実際の生徒の妹だと思いこもうとしている、と読むのが妥当でしょう。
私服に着替えたマナさんも可愛い…けど、なんかCLANNADの芽衣ちゃんに見えてきてしまった。
「受験なんかしない、大学なんか行かない」と反抗するマナさんに対して、冬弥くんは「来たな」と用意していた正論をぶつけます。「来たな」が無ければ明らかに不自然な独白ですから、マナさんにも冬弥くんがさぞウザく映ったことでしょう。冬弥くんがあまりにもウザいので渋々と冬弥くんの出したマナさん。マナさんに言われて冬弥くんは初めて額の緑に気付きますが、残念ながら洗っても落ちませんでした。
Bパートではマナさんが冬弥くんの彼女である「由綺」について問い詰めます。マナさんは森川由綺が冬弥くんの彼女であるとは信じておらず、前回美咲さんと冬弥くんが一緒にいるところを目撃したことなどを理由に問い詰めますが、それでもなお言い逃れようとする(冬弥くんは真実しか言っていませんが、マナさんにはそう見える)冬弥くんを「浮気もん!」と叱責します。ここで頬を赤くして「浮気もん!」というマナさんが可愛い。マナさんは桜団を「アイドルの器じゃない」と言い切りますが、冬弥くんは何も知らずに桜団を「かわいい」と評します。桜団の由綺に対する仕打ちの数々を知っている我々にしてみれば、やはり冬弥くんのほうが「由綺の彼氏の器じゃない」と見えてしまいますね。一連の会話劇はマナさんが可愛くてなかなか楽しめましたが、マナさんが冬弥くんの出した課題を解き終えたと同時に終わりを迎えます。マナさんは全問正解で、「あ〜あ、供給過多〜」と、家庭教師なんかいらねーよと呟きます。果たして来週からも冬弥くんに仕事はあるんでしょうか。
エコーズに流れるジャズが響き渡る中、家庭教師の仕事の帰りの冬弥くんは、美咲さんと待ち合わせてエコーズで食事をします。そこに理奈さんが現れ、理奈さんは呆然、理奈さんはその場を無言で去っていきます。美咲さんは冬弥くんが理奈さんと「ちゃん付け」で呼ぶほど仲がいいのが気に食わず、彰さんに言わせると相当怒った様子でエコーズから出ていきます。このあと冬弥くんが英二さんの車の中からかけた電話にも美咲さんは出ません。詳しく状況も知らないままこの対応とは、影のある人だ。軽くヤンデレってやつですか。
理奈さんを慌てて追いかけた冬弥くんですが、そこで驚くべき光景を目にします。なんと掃除用具入れのところが隠し扉になっていて、その先にある階段を降りたところには英二さんが待ち構えていました。ちょっと前からこの掃除用具入れに秘密があることが暗示されていましたが、なんと英二さんの隠し部屋だったとはね。
英二さんは美咲さんのこと、由綺のことをネタに冬弥くんをからかいます。二人は美咲さんと冬弥くんが本当に付き合っているとは思ってはいないでしょうが、軽くからかって遊んでいるのでしょう。理奈さんの右手は頻繁に映ってきますね。二人は冬弥くんをスタジオに連れて行って理奈さんの「桁が違う」歌を聞かせます。これが英二さんの言う「宣戦布告」でしょうか。上手く次回に引きを残していますね。
桜団の子たちは久々に出てきましたが、今度は弥生さんの前で堂々と由綺にいやがらせを行い、弥生さんはプロダクションの社長に抗議をします。このあと、この件が英二さんに伝わって、神崎社長との対立が表に出てくるのでしょうか。
そして長らく冬弥くんに相手にされなかったはるかさんが、冬弥くんのアパートの前で泣き崩れてしまいます。弥生さん→美咲さん→マナさんと来て、次回ははるかさんの当番回でしょうか。
英二さんの言う「宣戦布告」がキーワードになってストーリーが急展開を迎えました。何のために英二さんはエコーズの地下に隠し部屋を持っているのか、「宣戦布告」とはどういうことか、が気になりますね。次週も期待。