WHITE ALBUM 第4話 「想像を超えてわかり合えてるって、感じる時がある。逆の時も多いけどね」

今回も電話が鳴らす電子音から始まるアバン。電話の主は由綺ではなく理奈さんだということも前回と同じですね。電話線をなぞるうねうねとしたカメラは1話のときと同様。電話の内容はデートの待ち合わせ時間の変更についてですが、この内容がかなり不可解なので、ちょっとまとめておきましょう。

・まず、土曜のデートはレッスンが入って無くなったはずです。
・待ち合わせ時間については「何時がいい?」と逆に問いかける理奈さんの真意はなんでしょうか。
・待ち合わせ場所は、なぜか暗黙の了解で「夕凪」になってましたね。

2番については、デートの前に冬弥くんと会ってみたいと理奈さんは考えたのであろうと推測がつきます。しかし、理奈さんの考えはもう一歩先を行っていたことがのちに明かされますね。
これだけの疑問点が集まるともはや疑問というよりは漠然とした違和感でしかなくなるのですが、OPそしてCMを挟むことでその違和感を誤魔化す構成はある意味緻密であると言えるでしょう。我々は無意識のうちにこれらの疑問点を胸にしまいながら、それぞれの疑問を解消する形で今回のエピソードを見ていくことになります。今回は「電話」にくわえて「時計」がキーアイテムになっているので特に注意を払ってください。


9時45分にはすでに家を出ていた冬弥くん。彼の心の声から、時間が10時に変更になったことは覚えていたようです。その直後の回想から、由綺のレッスンは理奈さんの機転で無くなり(前回のラストの「埋め合わせ」とはこのことだということも明かされました)、場所はもともと夕凪駅だったところを昨晩の電話で蛍ヶ崎高校に変更したことが分かります。それと同時に、理奈さんが待ち合わせ場所を「夕凪」と言っていたのは昨晩の電話のことを知らなかったからで、つまり「伝言を預かっている」と言った理奈さんの言葉は嘘ということになります。冬弥くんは理奈さんの電話の内容はある程度正確に記憶していたものの、寝ぼけていたせいで理奈さんが待ち合わせ場所を「夕凪」と言ったことに違和感を覚えずに、本来の待ち合わせ場所にそのまま行った、ということです。
…こうしてみるとやはり緻密に作ってありますね。この内容は初見で気づくものではないしょうから、この内容はあとで見返した時にニヤリとするためのものですかね。


電車の中でボーっとしている冬弥くん。「理奈ちゃんはどうして…?」から「女神たち」に想像をふくらませて、はるかさんや美咲さんのことを思い出しています。「女神たちへの恩返し」ってのが何かは分かりませんね。一通り想像をめぐらせて現実に帰ってきてみると、もう電車は蛍ヶ崎に到着してしまっています。イマジナリーラインを越えるカメラワークで、電車から降りた冬弥くんがどうなったのかよく分からなくなりますね。「ここ…どこだ」という冬弥くんは蛍ヶ崎高校に通っていたはずなので、若干違和感を覚えますね。
冬弥くんは駅で由綺を探しているときに、制服を着た女の子とぶつかって転ばせます。この子がたぶん観月マナさんでしょうね。マナさんは冬弥くんを痴漢呼ばわりしますが、口を押さえて捕まえてるところは本当に痴漢にしか見えない(笑)


一方で理奈さんは、今朝電話で話した通り、夕凪駅に10時に向かいます。「デートの前に、少し借りたっていいよね」というセリフからアバンでの推測が当たっているとわかります。10時を過ぎてもやってこない冬弥くんに。「遅。由綺の言うとおり」と漏らす理奈さん。この直後に同じように駅で待つ冬弥くんにカメラが切り替わって対比する形になってますね。


冬弥くんはどういう経緯で特に知り合いでもないマナさんと一緒にいるのか、果たして痴漢行為をだれにも咎められずにすんだのか、いろいろ違和感があります。アイドルの森川由綺が彼女だと自慢げに話す冬弥くんは痛い。もちろん信じてもらえず、「バッカじゃないの!」と連呼するマナさん。ううむ、ツンデレなんて言葉もなかった時に発売されたゲームですからね。
由綺は10時20分ごろに、おそらく弥生さんに連絡を入れてから家を出ました。それとオーバーラップする形で、由綺に電話をかけようとするも、電話番号が分からずに思いとどまる冬弥くんが映ります。マナさんは渋々冬弥くんに協力して由綺を探したようです。「由綺が遅れるわけない」という冬弥くんの言葉と、理奈さんの伝言が嘘だったことから、本来の待ち合わせ時間の11時にやってくる由綺と入れ違いになることが予想できますね。冬弥くんはかなりキモい感じでマナさんに迫って、勝手に今日の女神認定。冬弥くんはマナさんと一緒に、10時35分ごろに駅を出て蛍ヶ崎高校に向かいます。冬弥くんをずっと待っていた理奈さんもとうとう諦めて、由綺を冬弥くんに会わせるために無理やり入れたレッスンに向かいました。


時間どおりに駅にやってきた由綺と、蛍ヶ崎高校に向かう冬弥くんとマナさん。
「金の斧がもらえないからって、鉄の斧ばっか集めているケチなイソップの言うことなんか、聴きたくない!」
金の斧は由綺で、鉄の斧はマナさんをはじめとする「女神たち」ですね。かなりマイペースに話す冬弥くんに対して、マナさんはひたすら「バッカじゃないの!」しか言いません。最近の作品なら「記号的にツンデレやっても萌えないよね〜」とかいうこともできますけど、WHITE ALBUMのような古典作品では素直に萌えるしかないんでしょうね。
駅でずっと冬弥くんを待ち続ける由綺。腕時計は11時20分を指示します。冬弥くんのほうでもバス停の標識が「蛍ヶ崎高校前」を指示します。何度か出てきましたが、カメラが切り替わるたびにオーバーラップさせる演出が美しい。というわけで高校に到着した冬弥くんたちですが、マナさんはそのまま授業に出ずにバスに乗って帰ります。最後に「会えるといいね」と言葉を投げかけたマナさんは、なんだかんだで冬弥くんのことをそれほど悪く思っていないんでしょうね。
駅で待つ由綺と、高校で待つ冬弥くんを映した後に、前回の高校時代のエピソードの続き。「由綺は女神になり損ねた」ってどういうことでしょう。今までのパターンから次回説明してくれるんでしょうけど。
いろいろ想像をめぐらせた後に、制服姿の理奈さんを妄想して、「夕凪でいいよね…」
「やっちまった!」
慌てて走り出す冬弥くんですが、すれ違いを回避するためにはここで良く考えてみるべきだったのでしょう。


Bパートは再び電話の音から始まります。「固定電話」「公衆電話」はこの作品では距離感を演出する小道具として頻繁に使われていますね。由綺が電話をかけているすぐそばを冬弥くんは走り抜けていきます。由綺が電話を切るのとオーバーラップして電話を手に取る冬弥くん。「会社に電話してどうするんだ…」。最初は電話を手に取る前に思いとどまっていましたから、徐々に冷静さを欠いていくのが分かりますね。
遅ればせながら高校に到着して、冬弥くんと同じポジションで待つ由綺。夕凪駅でも由綺を発見できずに、再び事務所に電話して今度は家電の番号を聞き出そうとまでする冬弥くん。このあたりからカメラの切り替えが頻繁になって、テンポを加速させています。何度もすれ違っていつまでも会えない二人、という構図がよく演出されています。
一方で久々にカメラに映った理奈さんは、あれ以来ずーっと英二さんのもとでレッスンをしていたようです。かれこれ4ステージ分。日も暮れて弥生さんが由綺からの電話を取りに行って、「これでやっと…解放かな」という英二さんのセリフ。理奈さんの真意を察していたことがわかります。


そして「伊吹町駅」でついに冬弥くんは由綺と逢うことができました。前回と違い、冬弥くんが頑張っていたので気持のいいシーンですね。由綺はデビューシングルを発表することができたと、冬弥くんに伝えます。これが前回言ってた「秘密の半分」。人の流れから、彼らが長いこと抱き合っていたことが伝わります。伊吹町駅の場所を路線図で見てみると、夕凪や蛍ヶ崎からは結構離れた場所。冬弥くんや由綺の家がこの近くだということから、諦めて家に帰ってきた二人が偶然駅で会ったということでしょう。「何も知らない由綺」「何も知らない俺達」…このあたりのシーンは明らかに回想を入れすぎ。説明描写を回想で置き換えても結局説明くささは減りませんよ。最後の回想のシーンはちょっと良く分かりませんでしたね。由綺の実家が蛍ヶ崎の近くだったってことでいいのかな?


冬弥くんが由綺を家まで送り届けているところで、とうとう今回の事の顛末のネタばらしです。理奈さんが待ち合わせの時間を早めたことと、「何時がいい?」と逆に問いかけたのは、冬弥くんの遅刻を防ぐため…というのは冬弥くんの認識で、理奈さんはさらに早めた時間を利用して冬弥くんに会おうとしていた、と分かります。「夢で聞いたのかも、オレも」というのはまさにそのとおり。「緒方さん…来るの?」と言った冬弥くんは英二さんに言い知れぬ不安を感じたんでしょう。
「なぜ急ぐ?急がなかったら、この先何が…」
印象的なセリフではありますが、冬弥くんは由綺とベッドインする機会は今後そんなにたくさんはないだろう…と直感していたんでしょうか。


今日も冬弥くんの家を訪ねたはるかさんは、印鑑とチョコレートを入れてから帰ります。弥生さんからの電話の音と、由綺の浴びるシャワーの音をバックにして、冬弥くんの緊張した面持ちを見ながら今回の挿話はおしまいです。


WHITE ALBUMが10年以上前の古典であることを差し引いてもなおありきたりな内容ですが、二人(三人)の擦れ違いがカメラの切り替えの際のオーバーラップする演出で上手く描かれていました。回想シーンがうざかったことと、数か所不自然なシーンがあったりして若干不満は残るものの、安定して面白いです。次週は予告にマナさんがいたので、とうとうマナさんに焦点があてられるのかな?
(どうでもいいんですけど、観月といえばあんみですよね、当然)


追記(1/25 23:15更新)
そらかけのブログパーツを設置しました。

はてなダイアリーに(対応外の)ブログパーツを貼る
上記のエントリを参考にして設置しましたので、この場を借りてお礼を申し上げます。