WHITE ALBUM 第3話 「手と手、肩と肩、背中と背中、それから、服の上からだっていいんだ」

前回理奈さんから電話を受けた冬弥くん。理奈さんが「今日の女神様」だったのは由綺を連れてきたからだったと。はるかさんが訪ねてきて冬弥くんはいったん電話を中断しますが、はるかさんと会話している間もあからさまに電話を気にしていました。冬弥くんのなかでは[理奈さん>はるかさん]ってことなのかな。
冬弥くんは理奈さんに、マネージャーのヘルプとしてバイトをしないかと誘いを受けます。由綺といっしょの現場と知って冬弥くんはガッツポーズ。そのあとに由綺からの電話が。


由綺との電話は嘘の応酬ですね。由綺は冬弥くんが理奈さんと話している間ずっと電話をかけていましたが、「今はじめて電話したところ」と嘘をつきます。冬弥くんのほうも上ずった声で「彰から電話がかかってきて」と嘘をつきますね。電話中も理奈さんのことが気になっている冬弥くん。バイトの誘いの話への興奮以上のものがあるとみていいんでしょうか。
由綺に土曜がフリーになったといわれて、大学の用事をはるかさんに押し付けて予定を空ける冬弥くん。でもはるかさんと会っていたことはとりあえず隠すんですね。「ごめん、本番だから」と言って電話を切る由綺。「用件は言えた…秘密は秘密だから言わなくていい…」秘密とは前回の英二さんとなにかあったときのことでしょう。「電話は5分まで」とあるとおり本番というのも嘘だったわけです。
由綺の嘘はあらかじめ用意しておいたセリフなのか、特に声色も変えずに喋っています。一方で冬弥くんは興奮して、嘘をつくときに言葉がつっかえる。由綺の嘘は冬弥くんに気を使ってのものでしょうが、冬弥くんのほうは心の声からわかるとおり隠しごとのための嘘。対照的な二人です…というか由綺と比較されている分、冬弥くんが最低な人間に見えます。


日付が変わって1986/11/6(木)。家庭教師のバイトを蹴った冬弥くんの初出勤。理奈さんに聞かされていたことと異なり、冬弥くんはヘルプではなくて正式なマネージャーとして、前任者を首にして登用したということが知らされます。冬弥くんは困惑のようすが心の声「切ってほしい」にも表れていますが、まさか本当に一日で首を切られるとは思わなかったでしょう(笑)冬弥くんは由綺と逢うという本来の目的も果たせて、「一応三日間だけ頑張ってみるか」と前向きな気持ちになったようです。


さくら劇団を抱えるプロダクションの社長と英二さんの対立も描かれています。劇団員にいじめられる由綺という構図を踏まえて、「(由綺の)保護者です」は皮肉の発言なんですね。社長さんも「保護者よ」とそのまま皮肉を返します。彼女の言う「いじめっ子」は理奈さんのことですね。
弥生さんの「お任せいただけますか?」は冬弥くんの由綺からの隔離へとつながるんでしょう。


理奈さんの派手な演技で冬弥くんと由綺は二人で会う時間を得ることができました。前回謎だった「冬弥くんの背中が由綺の席」というのにも説明が入ります。昨日の電話が嘘だらけだっただけに、「うそ?」「嘘じゃない」というやり取り自体が嘘くさく感じられます。「何度も会う作戦だな?」というのは次に会う時に半分、その次に会う時に残りの半分…ということ。
二人の姿を目撃して密告した人物がいる模様です。たぶん弥生さんでしょうね。弥生さんは会話の内容を盗み聞きしたのか土曜日にピンポイントで妨害工作をしてきました。


おそらく弥生さんの妨害工作の一環で、三日間のバイトのところをたった一日で首になった冬弥くん。実家の父に土下座をしてまで金策を立てようとしますが、前回送り返した補給物資を投げ返されてジ・エンド。父親の厳しい一言に何も言い返せない冬弥くんでしたが、父親の足音だけを聞かせて、カメラは冬弥くんの顔だけを映し続けるという演出はこれまたなかなか良い。このアニメは例の心の声のせいで演出に批判がいろいろ入ってますが、このアニメの演出はかなり上等だと思うんですけど…


父親を頼ることに失敗した冬弥くんでしすが、偶然にもまだ家庭教師のバイトが生きていて、しかも給料を倍にするという幸運をつかみました。
「本日の…(女神様、あなたに)…決定です」
ところが生徒の観月マナさんのお宅を訪ねたところ、居留守を使われてしまいます。めんどくさそうな生徒ですね。この生徒が高校の後輩であるということに関連して、土曜日に由綺とデートに行くはずだった目的地は出身高校であると回想が入ります。それが理奈さんが冬弥くんを殴るシーンに変わり、回想が実は冬弥くんの見ている夢だったということが告げられて、冬弥くんといっしょに我々も目を覚まします。
冬弥くんの傍らには缶コーヒーが置かれていて、「今日は帰って」という紙飛行機が飛んできて、冬弥くんはトボトボと喫茶店「エコーズ」に向かいました。
バイトを切られてからのこの一連の流れでは、冬弥くんはとてもコミカルに描かれていて、前半の嘘電話の悪いイメージを払拭していますね。


「この缶コーヒー一本から、事の顛末を推理してみたまえ」と無茶ぶりを振られた彰くんですが、即答でなんともリアルな回答をいただきました。残念ながら大外れですが、そんなはるかルートも見てみたいかも。
突然店に駆け込んできた理奈さんと英二さん。冬弥くんが首になったことに理奈さんが絡んでいなさそうで、代わりに英二さんが背景にいる、ということがわかります(もちろん我々は、それが英二さんと弥生さんの仕業だと知っていますが)。
「緒方理奈は、幸運と、不幸と、謎をつれ―」とあるとおり、最後のシーンは我々にとっても不可解ですね。そんなわけできれいに次回への引きを残して第3話はおしまいです。


由綺と理奈さんが「いい人」であるだけに、冬弥くんが際立って「悪い人」に見えてしまって、由綺と理奈さんにそこまで良くしてもらう資格なんてないんじゃないかと考えてしまいますが、後半の金策を弄するシーンが秀逸で、そんな印象をきれいに取っ払っていますね。
一話を見た時はこんな重苦しい雰囲気で大丈夫なのかと内心不安に思っていましたが、意外にもそんな印象をあまり持つことなく楽しく視聴できています。次週以降も期待が高まります。