WHITE ALBUM 第2話 「ずっと前から仕組まれてた、そんな出会いって、信じる?」

前回はあまり詳しく触れませんでしたが、この作品に特有な文字による演出について最初に少し触れておこうと思います。
文字による演出といえばシャフトさんの定番ですが、明らかにシャフトさんで用いられている演出とは目的が違いますね。
この作品では冬弥くんが心に秘める心情を詳しく描写する必要がある時に限って、それを文字に書き起こしているようです。
アニメではやはりビジュアルと音声による表現が基本だと私は思うのです。シャフトさんにおける文字による演出はビジュアルによる表現の範疇に入っていたと思いますが、この作品における文字による表現というのは、冬弥くんの心情を表情や声のニュアンスで伝えることを放棄してしまっているように思えるのです。この手法はいわゆる「地の文」をアニメで表現する際の最も愚直な方法であると同時にタブーであると私は考えます。
とはいえ、「ウルサイ」「ケーキ」など必要最小限の単語だけを使っていることからも、地の文をそのまま書くという態度ではなく、あくまでもアニメによる表現を主軸に据えているようですし、アニメとしてどうしても表現しづらい箇所に限ってこの手法を採用しているようにも見えます。それを踏まえるとこの手法はアニメによる表現の幅を広げることにつながるのかもしれず、クラシカルな考え方で全否定するのは良くないかもしれません。
長くなりましたが、つまり私が言いたいのは、使ってもいいかもしれないがこれに頼りすぎないでくれということです。


さて、本編について。前回は冬弥と由綺の距離感が中心に描かれていましたが、今回は冬弥の浮気性な一面が強調されていましたね。


冬弥くんのアパートを訪ねてきたのは由綺…ではなくてはるかさん。冬弥くんは「なんだ…」と悪態をつきますが、「だけど…」とあるとおり満更でもないようです。冬弥くんがはるかさんを締め出しても、はるかさんはそこでずっと待っていました。公園での二人の様子は仲良しそのもの。「そこは、由綺の席だからな」の意味はよく分かりませんが、冬弥くんは一線を引きつつもこの時間を楽しんでいるようです。


一方で由綺さんはスタジオから緒方英二さんのもとへ向かいます。「大事なお話」とはなんだったのか分かりませんが、理奈さんが帰ってきたときに由綺さんは泣いていました。机の上には楽譜が散乱しています。「だって、私、嬉しくて…」と由綺さん。ある程度お話の内容は想像がつきますかね。
理奈さんが帰宅した時の独白は、前回の公衆電話のときと同様、映像から乖離しているような印象を受けます。とはいえ映像は全くの無関係ではなくて、BGMと相まって言葉にテンポを付ける役割を果たしていますね。センスのいい演出だったと思います。しばらくモノローグが進むと言葉に口パクがついて、これは独白ではなく英二さんに語りかけているのだと気付きます。


場面は変わって、冬弥くんがバイトをしている喫茶店に、彰くんがチーズケーキを持ってきます。それは彰くんの手作りで、昔美咲さんのために練習したもの。そこに由綺さんと理奈さんがお忍びで来店し、そのチーズケーキがふるまわれます。由綺さんがチーズケーキを食べる様子は上品でかわいらしい。「本日の女神様」に続く一連の流れは私には意味が分かりませんでした…
由綺さんが去った後、冬弥くんに内密に電話番号を聞く理奈さん。冬弥くんは彰くんの様子をうかがいながら、いそいそと電話番号を書きます。
茶店にやってきた理奈さんマネージャーの人に「どなたもお見えになっていません」と嘘をつく彰くん。彼の真意はなんなのでしょうか。


美咲さんに公衆電話から電話をかける冬弥くん。彰くんのケーキについて喋らなければならないと自覚しながらも、それを話さずにブラウニングの詩集の話をしてしまう。冬弥くんは美咲さんにも興味を示していることがうかがえます。


アパートの前に置いてあった段ボールは実家からの荷物でしょう。前回父親に電話して仕送りを断られた冬弥くん。段ボールは実家まで持って行って返してしまいます。彼の父親との関係も主題のひとつであるのでしょうか。


彼は電話の音を聞きつけて走って帰ります。由綺さんからの電話かと思いきや、意外にも理奈さんからの電話。ところがそのあとの「文字」からは、彼が実は由綺さんからではなく理奈さんからの電話を心待ちにしていたことが分かりますね。


今週も気の利いた演出で(例の文字以外ですけど)楽しめました。浮気を描くのもWHITE ALBUMであるそうですが、このままでは三角関係どころか六角形くらいになってしまいますね。冬弥くんはフラグ立てすぎです。